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京都市が訪日外国人誘致に見せる本気、世界に勝つインバウンド戦略を聞く

京都市が外国人旅行者の取込みを強化する。その方針を形にしたのが、先日発表された訪日外国人向けサイトの刷新だ。京都市は、「京都Wi-Fi」やモバイル・アプリ、市内業者向けに免税店支援サイトなど多面的な活動をしてきた。そして、今回新たに開設されたサイトは、世界の潮流に肩を並べるものに。自治体サイトとしては、今後、様々な自治体から参考にされるリーダー的な役割となると考えられる。

こうしたサイトを構築した千年の都・京都のインバウンド戦略とはーー?今回は、京都文化交流コンベンションビューロー 国際観光コンベンション部部長の赤星周平氏にサイト刷新の狙いと背景を聞いた。そこで感じられたのは、観光を産業として捉えて地域活性化に取り組む“本気”だ。

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IMG_7188今回の外国人向けウェブサイトの刷新について、赤星氏は「(ドメイン以外)すべて変えた」と明かす。そのコンセプトの根底にあるのは、「量(観光客来訪数)よりもが質(観光消費額)」が大事であるとの考えだ。

観光客の再訪意欲や満足度が高く、宿泊施設の稼働率が高い京都市が、さらなる高みを目指して「欧米をはじめとした目利き層の旅行者を取っていく(赤星氏)」。

観光を産業として捉えたときに京都市に根付く伝統産業・工芸を活性化するため。京都市内には世界に誇る伝統ある商品が多々あるが、観光を地域活性化のドライブと考えたときに、こうした商品を外国人に購入してもらうのは重要なことだという。赤星氏は、「これは京都ならではのこと」としながら、“メイドイン京都”の高額商品になりがちな市内の物産・工芸品を購入できる富裕層の外国人を呼び込むことに照準を合わせ、積極的な展開を図る。

こうした考えのもと、サイト刷新で重要視したのが市内の観光関連事業者との連携だ。集客力のある京都市のオフィシャルサイトをPRの場として活用してもらい、事業者側のサイトで旅行者がスムーズに予約ができる動線に工夫を凝らした。現在は、宿泊、体験、食事、ショッピングなどの情報を掲載している第一段階。こうした連携を進化させていくことで、サイトを京都観光の中核的存在にしていく。

赤星氏は、連携するコンテンツとして特に外国人が重視する“体験”を強化したい考えで、「(京都市内の)ありとあらゆる体験とサービスを紹介できるようにしたい」と語る。さらに、将来的には予約まで「サイト上で完結できる仕組みを作りたい」という思いも。事業者側の在庫管理やシステム上の問題で現状は難しいものの、究極的な目標としてはサイトへの広告費や手数料等を観光プロモーションの原資に循環させていくことも視野に入れている。


▼重要な外国人目線と客観的な評価を導入

クチコミサイトとの連携で旅行者の利便性向上へ

IMG_7184サイト刷新にあたり、重要視したポイントのひとつが外国人目線だという。クチコミサイト「トリップアドバイザー」と連携することで、同社の経験から外国人目線でサイト構築をする際のアドバイスを反映。旅行前の計画段階から旅行後の感想共有まで大きな影響を与えているクチコミを、サイト閲覧者が気軽に触れられる動線もつくり、旅行者の利便性を高めることを狙った。

この点について赤星氏は「世界の観光地との戦いで存在感を高め、勝ち続けていくためには旅行者を誘引する豊富な第3者の意見が重要」と指摘する。京都として、一方的に情報を伝えるだけでなく、旅行者からの意見も聞き入れる「双方向評価が避けて通れない時代」になっているとの考えだ。

京都は外国人によるクチコミがポジティブなものが多くなる傾向だという。これは、各種調査でも再訪意向や満足度が非常に高い観光地であるとの評価を受けていることからも当然の結果なのであろう。一方、「いろいろな角度で情報を出してもらうことが重要」として、評価する立場にない公的機関である京都市やコンベンションビューローに変わって、様々な外部の評価を盛り込むことが旅行者の利便性向上につながるとの考えだ。

今回のサイトでは、旅行者がデバイスを選ばず同じ情報にアクセスできるマルチデバイス化や13言語への多言語化など技術的な刷新も図った。画像もクオリティが高く、上質感が伝わる。今後進める進化では、ヴァインなどの動画やインスタグラム、ピンタレストなどでのユーザーの画像投稿や旅行中(タビナカ)の旅行者とのスマホ連動やコミュニケーションに期待したい。

京都市は、2020年までに外国人宿泊客数を現在の年間113万人から300万人へ、観光消費額を年間7002億円から1兆円へ拡大することを目標としている。実現によってもたらされるのは、観光による経済効果を市民生活に還元すること、日本の観光立国を「京都の観光」がリードする役割になること。今回のサイト刷新は、そのスタートラインといえ、京都市が訪日外国人の取込みに本気を見せる第一歩といえるだろう。

(トラベルボイス編集部:山岡薫)