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子供の農山漁村宿泊体験、民泊の9割以上が少額収入、受入れ意向が高まるのは「年間100万円以上」 ―農林水産政策研究所

農林水産政策研究所は、農村活性化プロジェクト研究の一環として「子供の農山漁村宿泊体験」に関する実態調査の結果を発表した。2008年より開始された「子ども農山漁村交流プロジェクト」に伴って子供の宿泊体験プログラムを受け入れた全国の地域を対象に、その経済効果や現状、今後の課題などを分析したもの。

それによると、実際に実施された農山漁村体験プログラムは、「野菜・畑作業」(68%)が最も多く、「料理」(34%)、「海・川遊び」(32%)、「自然・雪」(27%)はいずれも約3割で実施された。そのなかで、受け入れ側が子供たちに人気があるとみるプログラムは「海・川遊び」(8%)、「野菜・畑作業」(7%)の順となっている。特に「海・川遊び」や「釣り」では、理想と現実でのかい離が大きい結果が判明した。

農山漁村体験プログラムの実施状況は以下のとおり。

農林水産政策研究所:発表資料より

宿泊体験を受け入れた施設の年間収入額をみると、全体平均で最も多いのは「20万円未満」(68.0%)、次いで「20~50万円」(16.3%)、「50~100万円」(8.3%)となった。

ただし営業許可区分別の内訳をみると傾向は異なる。旅館営業施設(202軒)では「100万円以上」が29.7%となったが、それ以外の施設では「20万円未満」が多く、一般簡易宿泊所営業(33㎡以上、167軒)では41.9%、小規模簡易宿泊所営業(33㎡以下、233軒)では57.5%、民泊(599軒)では9割以上が少額収入にとどまる状況となっている。

各施設区分ごとの収入額は以下のとおり。

農林水産政策研究所:発表資料より

また、受け入れ側の今後の意向は収入規模によって決定されている様子がみられた。たとえば「年間収入100万円以上」の施設では92.7%、「100~300万円」では75.0%がプログラムの受け入れ拡大意向をもつ反面、「20万円未満」の施設では拡大意向は37.8%、現状維持の意向が41.9%を占める結果となっている。

なお、収入以外の経済効果では、実施した体験プログラムの数に応じて傾向が異なることも分かった。

たとえばプログラムを7個以上実施した場合は「体験した子供グループが再訪」(33.7%)の頻度が突出して多く、「家族旅行で再訪」(22.1%)の機会を招く効果も確認できている。

農林水産政策研究所:発表資料より

レポートでは、収入の違いは、宿泊数や同宿人数に左右されることも分析。旅館営業施設では望ましいとされる同宿人数「10人以上」が64.1%、一般簡易宿所営業では「5人~10人以上」が58.0%となった一方、小規模簡易宿泊営業や民泊では「4人」が約半数を占める結果となっている点に言及。

今後の課題として、「分宿」による宿泊体験の需要が増えていくことも想定。たとえば旅館・ホテルでの集団宿泊と農林漁家での少人数宿泊体制を整えるといった検討も必要とする。また、直接的な経済効果のみならず、社会的効果や活性化効果を広範に踏まえた対応が望まれるとしている。

この調査は、2008年より総務省、文部科学省、農林水産省連携にて開始された「子ども農山漁村交流プロジェクト」を受け、2011年1月に同研究所と農林水産省・農村振興局都市農村交流課が共同で実施した「教育交流における宿泊体験の取組に関する意向調査」に基づいたもの。

調査対象は全国の農林漁家・宿泊業者1873件。対象施設区分は「ホテル」「旅館営業」「一般簡易宿所営業(33㎡以上)」「小規模簡易宿所営業(33㎡以下)」「民泊(営業許可取得予定・許可取得予定なし)」で分類されている。