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マイクロソフトなどが観光分野で3社協業、高度AI(人工知能)活用で訪日客にリアルタイム自動翻訳を提供へ

日本マイクロソフトとブロードバンドタワー、豊橋技術科学大学は、AI(人工知能)を活用した高性能の多言語コミュニケーションの実用化で協働する。まずは観光分野に焦点を当て、現地の観光情報から災害情報、SNS発信など、訪日客のタビマエから滞在中のタビナカ、タビアトに関わる情報やコミュニケーションで、リアルタイムの自動翻訳を提供。東京オリンピックが開催される2020年までの実用化を目指し、2019年には事業者への提供を開始する予定だ。

利用対象は、宿泊施設や旅行会社など観光関連の事業者や自治体。各ウェブサイトやSNSなど、オンライン上の即時翻訳から、街中に設置するキオスクなどでのリアルタイムコミュニケーションの提供なども想定する。スポーツイベントでは観戦中に、日本語の解説をリアルタイムで他言語に音声翻訳することも可能だ。50か国語の対応が可能で、すでに宮崎県や福岡県などと連携し、旅行業者や観光団体などを含め、実用化に向けた検討が進められている。

豊橋技術科学大学によると、機械翻訳は欧米言語間では既に実用レベルに達し、グローバル企業での内部利用が進んでいるが、日本語の機械翻訳はその構造的な性質が障壁となり、性能が低い。これを現状の汎用システムではなく専門化し、高度AIの機械学習を用いて実用レベルまで性能を高めるのが3者協働で目指すところだ。

その基盤となるのが、大量の「用語」や「経験値」の収集。観光分野では、情報の信頼性を重視し、用語の収集先は連携先の旅行業者や観光関連団体などのサイトに絞る。経験値については、例えば大型の国際会議を大規模なサンプリングが可能な場とし、参加者向けサイトやテストコールセンターを提供して、実際の経験値を蓄積していく。こうしたデータベースの構築と、リアルタイムで話題になっているトレンド分析等も踏まえた機械学習を重ね、最適化した自動翻訳サービスとしていく。

商用提供については、「レベニューシェア」を検討。同サービスによって創出された収益から、事前に取り決めた配分を収受する形態で、その利益算定もAIで行なう考え。事前の固定価格ではないため、小規模事業者も導入しやすいメリットがあるという。

なお、3社連携では観光分野を皮切りに、社会インフラ全体における幅広い活用を目指している。

左から)豊橋技術科学大学教授の井佐原氏と副学長の原氏、日本マイクロソフト執行役 CTOの榊氏、ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長の藤原氏、エーアイスクエア代表取締役の石田氏、日本マイクロソフト技術統括室業務執行役員NTOの田丸氏