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じゃらん、宿泊施設向けに3つの新施策、当日キャンセルの補償からシステム利用料の「税込み」改定まで責任者に聞いてきた

リクルートライフスタイルは2019年度から、運営する旅行サイト「じゃらん」で宿泊施設向けの新しい施策を展開する。少子高齢化で国内旅行市場の停滞が危惧されるなか、宿泊施設との連携を強めて需要創出を図りたい考えだ。日本屈指のOTAが描く未来図を執行役員旅行領域担当の宮本賢一郎氏に聞いてきた。

じゃらんの新コンセプトとして「総旅行回数増加」を宣言。「需要にこたえる」「需要を創る」「地域を共に創る」という3つの基本方針を踏襲しつつ、宿泊施設に対して、予約をしたものの当日になって現れない客(ノーショー)の一部をじゃらんが無料で補償するほか、リクルートが運営する「リクナビダイレクト」と提携して契約施設の新卒採用特集を無料掲載といった施策を導入する。

宿泊施設の利用料は税抜から税込へアップ

2019年度から実施する施策は主に3つ。まず、宿泊施設向けについては、現地決済で課題となっているノーショーや多重予約を防ぐため、2019年4月からノーショーによる損害の一部を無料補償するプログラムを保険会社と共同で開発した。2年間の設定で、年間支払限度額は1施設あたり5万円。従来も多重予約については予約時に利用者に警告を発していたが、2019年3月までに多重予約者への早期アラートを送付する体制を整え、施設の機会損失への改善にも取り組む。

また、特に宿泊業を中心に深刻化しているのが雇用不足。中小企業特化の新卒採用サイトであるリクナビダイレクトにおける契約施設の特集掲載を無料とし、観光産業の雇用創出をうながす。

その一方で、宿泊施設に対するじゃらんのシステム利用料・ポイントも変更。利用料率は従来の1名6%、2名以上8%から変わらないが、計算基準額は税抜から税込に変更となる。

たとえば、1人当たり税込1万800円のプラン金額の場合、利用料の対象は従来1万円だったが、2018年11月26日以降の予約かつ2019年4月1日以降のチェックアウト分からは1万800円が対象となる計算だ。ポイントプログラムも従来、会員は2%だったが、今後は1%とし、別途販促プログラムとして会員、非会員にかかわらず1%を徴収する。同社によると、契約施設には今年春までに案内を済ませており、「これからも一緒にやっていこうとご理解いただいた」(宮本氏)という。

2019年度めどに会員ランクを導入

こうした宿泊施設向け新サービス展開の背景には、国内旅行市場の停滞がある。じゃらんリサーチセンターの調査によると、2008年度には1人当たり年間63.1%だった宿泊旅行実施率が2016年度は54.8%に低下。2017年度は55.6%と上向いているものの、少子高齢化、趣味嗜好の多様化によって危機感が高まっているのは間違いない。宮本氏は「グループ力を活かしながら雇用サポートなどの経営問題にも踏み込むことで、日本の旅行マーケットの拡大を進めていきたい」と語る。

国内旅行の停滞に危機感、じゃらんリサーチセンター調べ

総旅行回数増加を図るために、前述の宿泊施設向け施策に加え、2019年度からは新しいカスタマープログラムの導入も検討する。じゃらん利用者は高アクティブから中アクティブ、低アクティブ、非アクティブに分かれると分析し、プロモーションを利用頻度によって差別化。高アクティブ層にはじゃらんの各種サービスを通じた特典を提供し予約増加を図る一方で、非アクティブ層にはグルメ、レジャーといったグループ全体の資源を活かして別の特典を用意することで、旅行ユーザー化につなげたい考えだ。

2019年度をめどに会員ランクを導入し、ランクに応じた特典を付与するなど新たなプログラムの発表を予定している。

また、インバウンドを含めたタビナカにおける消費行動に注目が集まるなかで、体験型アクティビティを提供する施設との提携も強化する。ダイナミックパッケージ、レンタカー予約などに続く旅行の一気通貫のサポートとして、じゃらん上で2016年に開始した遊び・体験プログラムは掲載施設数が約6000軒に上り、オンラインでの予約数、施設数、プラン数ともに業界トップを達成。宮本氏は「地域の魅力を共に創るのがじゃらん創業時からの使命。宿泊から体験プランまでトータルでサポートする強みを活かし、観光需要を拡大していきたい」と語っている。

取材・記事 野間麻衣子