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カジノだけでない世界の統合型リゾート(IR)の動向とは? 韓国「パラダイスシティ」がファミリー層を狙う戦略を聞いてきた

パラダイスホテル&リゾート外観

韓国・仁川空港に隣接するIR(統合型リゾート)「パラダイスシティ」に2019年3月31日、室内型エンタテインメント施設、ワンダーボックス(WONDERBOX)がオープンした。パラダイスシティは韓国と日本の合弁企業、パラダイス・セガサミーが手掛けており、ワンダーボックスはセガサミーの手腕が発揮された施設。パラダイス・セガサミーのノンゲーミング施設を統括するライフスタイル事業本部の内島崇事業本部長に、ワンダーボックスの魅力やパラダイスシティの現状、今後について聞いた。

パラダイスシティが開業して約2年。北東アジア初のIRとして韓国でも注目度の高い同施設は、アジアの他のIRと比べてどのような優位性があるのだろうか。「仁川空港からシャトルバスでわずか3分、リニアモノレールで直結というアクセスは他のIRにはない強み」と内島氏。まさに空港に隣接といえる近さで、乗り継ぎ客を包括できる立地は集客に大いに有効だろう。

内島氏は東京ジョイポリスの元館長

“アートテインメント”をテーマに掲げているのもパラダイスシティならでは。内島氏は「アートの感動とエンタテインメントの楽しさが生み出す相乗効果は新しい価値を生み出している」としており、世界に名だたる建築家や芸術家のセンスが随所に感じられるのもパラダイスシティの魅力となっている。

そんなラグジュアリーなリゾートであるパラダイスシティに登場したワンダーボックスは、これまでの洗練されたスパやクラブとは異なり、ある意味異質だ。しかも打ち出したターゲットはミレニアル世代のファミリーという。「感度の高いこの層を動かすことでローカルの他の層も動かす」のが狙いで、世界のIRがファミリー層へ訴求を図っている動きを見据えている。

セガサミーはシーガイアやグループ企業から50名以上の日本人スタッフを派遣しており、これまで培ってきた運営のノウハウやアイデアをワンダーボックスに集約。「夜の遊園地」をコンセプトに、同施設を最先端のメディアアートや初導入のアトラクション、レトロなゲーム、流行りのスイーツショップなどで彩った。ロッテワールドをはじめとする国内のテーマパークとワンダーボックスは「屋外と屋内、規模の大小に違いがあり、それぞれ別物」と位置付けており、「ワンダーボックスでは最新のKカルチャーを感じてほしい」と語っている。

ワンダーボックスをフックに日本人ファミリーにも訴求

エントランスにある鍵穴のメディアアート前で

ワンダーボックスはファミリー向けを謳っているが、「シンプルなゲームで子供と一緒に熱くなったり、フォトジェニックな館内で写真を撮ったりと大人も楽しめるのが特徴」と内島氏。その狙いは日本人のファミリーにも訴求できるとしており、「豪華なホテルやテーマパーク、プール、スパ、ショッピングなど、ワンストップでラグジュアリーに楽しめる施設」としてパラダイスシティの魅力をアピールした。

パラダイスシティの売上規模は2017年が2000億ウォン、2018年が3000億ウォンで、今年は4500億ウォンが目標。順調に推移してはいるが、宿泊に関しては国内客が70%、外国人客が30%というのが現状だ。特に週末はソウルから訪れるファミリーで国内需要が8割になるという。「韓国では週末のバカンスをホテルで過ごす“ホカンス”という動きがあり、その行き先としてパラダイスシティはNo.1のデスティネーションになっている」からだ。

しかしカジノは外国人専用なので、彼らの目的はカジノではない。内島氏によると「韓国の人にとってパラダイスシティはスパリゾートのイメージ」。そこにワンダーボックスが加わったことで、ファミリーにも訴求できるより多様性のあるリゾートになった。今後は国内客と海外客の割合を50%、50%にしていくのが目標としている。

パラダイスシティはこれで第1期工事を終了したが、まだ残っている敷地をどうするかは今後検討していく。これまでは投資に力を入れてきたので、当面はキラーコンテンツであるワンダーボックスの訴求力でパラダイスシティ全体の集客を底上げしていく。

取材・記事 竹内加恵