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日本人の国内旅行の実態は? 減少傾向も消費単価が上昇、予約は早期化すすみ「2か月以上前」が半数に

JTB総合研究所はこのほど、「進化し領域を拡大する日本人の国内旅行(2019)」の調査研究を発表した。消費者の実態や今後の意向から、人口減少が進むなかでの日本人の国内旅行の活性化へのヒントを探ったもの。2018年の国内旅行市場と旅行スタイルの変化についてまとめた。

2018年は災害影響し人数大幅減少

日本人の人口は2010年をピークに2018年までに200万人以上減少している。2018年は西日本豪雨、北海道胆振東部地震など災害が相次いだことも影響し、観光庁「旅行・観光消費動向調査」によると、日本人の国内延べ旅行者数は前年比13.2%減の5億6178万人、旅行消費額は3.0%減の20兆4834万円と低迷した。

ただ、大きな流れでは延べ旅行者数、消費額ともに微増で、同研究所は「人口減少や消費増税のなかでも旅行意欲は衰えていない」と分析。延べ宿泊者数は2017年から減少しているが、消費額はほぼ横ばいで単価が上昇しており、訪日外国人旅行者数の増加、宿泊施設の稼働率上昇の影響も少なからず受けているという。

JTB総合研究所:発表資料より

2カ月以上前の予約が半数

2018年の具体的な国内旅行の実態については、遠方が回復傾向で33.4%と前年から2.9ポイント伸ばし、近場(31.6%)より高い結果となった。旅行日数も2泊3日、3泊4日が増加傾向で、地域別では北海道、九州、沖縄のシェアが前年を上回った。

予約時期は年々早期化しており、2018年は2カ月以上前の予約が49.9%と約半数を占めた。特に、3~6カ月前が2016年の17.7%から2018年は22.5%と大きく伸びており、理由は「希望の日時で確実に予約したい」が上昇。「訪日客の急伸で、決まった日にちのなかで行きたい場所に確実に予約したい意識が表れている」(同研究所)。

JTB総合研究所:発表資料より

ブランティングに旅行者がかかわる

また、人数、消費額ともに横ばいの一方で、「デジタル化や社会構造の変化、世代交代で徐々に変化し、意味、領域が拡大している」(同研究所)との構造的変化もあるようだ。旅行形態が団体から個人へ変化しただけでなく、誰もがスマートフォンを所有しSNSを通じて情報発信するようになったことで、地域と旅行者との関係性が変わってきており、「ネットワークの中で循環する個人発信の情報も地域のブランドイメージの形成に重要な位置を占めるようになった」と指摘している。

地域と旅行者との関係は「地域の観光地に旅行者を囲い込む」から「地域の生活エリアでの交流」へ。シニア層は従来型の知的好奇心を埋めるような観光の場を求める傾向が続いているが、若い世代中心に「暮らすように過ごす」、「地域の産業に関わる」、「ボランティアやファンディングで支援」といった思考が強まっているといい、今後のブランディングのヒントにもなりそうだ。