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航空券予約の最新トレンドと未来は? 航空会社やオンライン旅行会社のキーパーソンが議論した

昨年12月、GDSトラベルポートは、オンライントラベルセミナーを開催した。航空会社とオンライン旅行会社(OTA)らを招き、パネルディスカッションを実施。パネルディスカッションは、先ごろトラベルポートが実施した「グローバル・デジタル・トラベラー・サーベイ2019」の結果に基づいて進められた。

トラベルポートジャパン社長の東海林治氏は「デジタルによってマーケットのモノの流れが変化している中、オンラインでのトラベル領域も成長している。今マーケットでは何が起こっているのか。オンライントラベルビジネスの議論を深めていきたい」とセミナーの意義を説明した。登壇者は以下の通り。

アプリで予約やエンゲージメントは増えるのか

最初のテーマは予約方法。グローバル調査では、PCでの予約が過半数を占め、モバイルは29%、店舗での対面も13%という割合になった。エアトリの田村氏は40%がPCからの予約で60%がモバイルと明かしたうえで、「今後1、2年でモバイルの割合が7割以上になるのではないか」との見通しを示した。

Trip.com(旧Ctrip)の優先順位のトップはアプリ開発。吉原氏は「中国では、WeChatでのコミュニケーションが旅行でも頻繁に使われており、アプリの開発のサイクルも早い」と話し、中国でのスーパーアプリを含むアプリの存在の大きさを指摘する。一方、アプリについて別の見方をするのがベンチャーリパブリックの柴田氏だ。「ネイティブアプリの開発は、消費者一人の旅行の頻度を考えるとリターンと合わない」と話したうえで、LINEとパートナーシップと組んだ背景について、「みんなが使うLINEというスーパーアプリに乗っかることにした」と説明。その結果、圧倒的な低コストで多くのユーザーを獲得できたという。

JALの丸山氏は「アプリのメリットは顧客情報を得るためのエンゲージメント。ブランディングとロイヤルティがあると、逆にアプリの価値は落ちていく」と発言。今後5Gの登場がアプリ以上にニーズに見合った情報提供機会を生み出す可能性にも触れた。

ブランド力がコンバージョンに影響、レビューは「真摯に対応」

グローバル調査では、日本人の3分の1、世界平均では約半数が『オンライン予約において、どの会社が信頼できるかわからない』と答えていることから、ブランディングについても議論が展開された。

エアトリは前年度、テレビCMなどで過去最高の広告宣伝費を投じた。田村氏は「ブランド認知度が上がるについて、選ばれるようになり、コンバージョンレートも上がる」とその効果を強調。メタサーチは自社サイトへの誘導で有益だが、オーガニックの流入でKPIを立てているとしたうえで、「CMコストがすべて回収できているかどうかは、別の視点で見るべき」とした。

柴田氏はメタサーチの観点から、「パートナーであるOTAのコンバージョンレートは、ブランド力によって最大で10倍もの差がある」と明かした。また、ブランディングの効果を高めるために、LINEとの提携ではウェブもモバイルもLINEの冠をつけた。「大きな決断だったが、その結果はついてきている」と自信を示した。

航空券のOTA事業に加えて、販売システムを旅行会社に提供するBtoBプラットフォーム事業も展開しているエアプラスの今井氏は、ブランド力を挙げるのは時間もお金もかかるとしたうえで、「(同社としては)システムを大手会社に使ってもらうことで、そのブランド力を自社ブランドの向上に使わせてもらっている」と説明した。

また、利用しない29%、時々50%、ほぼ毎日30%というレビュー利用の調査結果を共有した議論も展開。ユナイテッド航空の高橋氏は、東京にもデジタル専門チームを配置し、関連部署と共有しながらSNS対応を行っていることを紹介。ネガティブなクチコミに対しては「直接、根気よく対応していくと、ユーザーの多くがユナイテッド側をサポートしてくれるようになる」との経験を披露した。

JALの丸山氏は「(SNSでの発信については)真実をしっかりと伝えていくことしかできない」との原則論に言及。今後は、トリップアドバイザーとの複数年契約がどのように展開していくか注視していると明かした。

ベンチャーリパブリックの柴田氏も「素早く、真摯に対応していくほかない」との意見。一方、「購買意欲のある人の背中を押すのはクチコミでは限界」とも。同社では旅行コンテンツも配信しているが、「観光地やホテルの興味を喚起するような記事を作り、ホジティブ情報を発信している。これはクチコミではできない」との論を展開した。

(左から)ユナイテッド航空高橋氏、JAL丸山氏、ベンチャーリパブリック柴田氏、エアプラス今井氏、エアトリ田村氏、Ctrip吉原氏

旅行者に分かりやすいアンシラリー販売は課題

最後は『予約に不満を感じる点』についての調査。『キャンセル、運賃、変更のルールが複雑すぎる』が48.6%。また、『アンシラリー(付帯運賃)の料金の仕組みがわかりにくい』も47.8%と高い数字となった。

ユナイテッド航空の高橋氏は「アンシラリーをどのように売っていくのかはレガシー航空会社にとってさらに重要な課題になるだろう」と話し、本国アメリカではベーシックエコノミーフェアの導入やバンドルフェアなど分かりやすい料金オプションを提供していると紹介。「今後はNDCが鍵になるのでは」とコメントした。

JALの丸山氏は「運賃が複雑すぎる」というのが旅行者の声としたうえで、「もっとシンプル化しようと議論している。JALはアンシラリーはやりませんと言ってきたが、旅行者の声は変わってきた。そのニーズに応える形で、アンシラリーに舵を切るかもしれない」と明かした。

ベンチャーリパブリックの柴田氏は、現状の複雑さについて「オンラインではいくらでもオプションが掲載できる結果」と分析。しかし、モバイルユーザーが増加している中で、掲載スペースが限られていることから、「運賃のシンプル化の流れとオススメを提案するパーソナライゼーションの流れになるのでは」との見解を示した。

エアプラスの今井氏は、「アンシラリーに関しては、ディバイスもシステムも進化している。課題として認識しているが、ここ1、2年くらいで変わってくるだろう」との考え。キャンセルポリシーについては、「データ化することが大事。サイトにリピートしてもらうためには、キャンセルのやりやすさも大切」とした。

エアトリの田村氏はアンシラリーについて、「必要のない情報を提供するとコンバージョンに関わってくる。GDSと協力として、どのように出し分けをするかは検討しているところ」とした。

Trip.comの吉原氏は「アンシラリーはアップセールの機会」との認識を示したうえで、日本人旅行者向けサイトでは「来年にはその機能をローンチしたい」と意気込みを示した。