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観光白書2021が閣議決定、2020年7月開始の「GoToトラベル」、12月までの利用人泊数は8781万人泊

政府は2021年6月15日、2021年版観光白書を閣議決定した。新型コロナウイルス感染症が観光にもたらした影響を幅広い観点から分析するとともに、今後の観光再生に向けて課題と具体策を明記した。

第II部では「新型コロナウイルス感染症を踏まえた 観光の新たな展開」として、2020年7月に開始された「GoToトラベル事業」の状況を振り返っている。それによると、全国で一律で一時停止された12月までの利用人泊数は少なくとも約8781万人泊、支給額は少なくとも約5399億円となった。

また、宿泊旅行の平均泊数は1件当たり約1.35泊。1泊での利用が最も多く、約82%となった。宿泊1泊あたりの利用価格については、は「5000円以上1万円未満」の利用者が最も多かった。地域共通クーポンの利用実績が多かった都道府県は東京都、北海道、沖縄県、京都府、静岡県。

第II部では、観光トレンドの変化についても言及。国内旅行では、県内や近隣地域内での、いわゆるマイクロツーリズムの割合が増加。同行者については「夫婦・パートナー」の割合が増加する一方、「友人」の割合が減少し、旅行形態では「個人旅行」の 割合が増加した。

さらに、ワーケーションやアウトドアの需要が高まり、1つの地域に滞在し、文化や暮らしを体感しじっくり楽しむ滞在型観光、時間と場所を分散する分散型旅行も増加。オンラインツアーが普及したことで、訪問意欲向上に加え、地域物産品の販売促進にもつながったとしている。

コロナ収束後の旅行意向については、、2020年7月以降「これまで以上に旅行に行きたい」との割合が増加し、年代別では、10代から30代の若者の旅行意向が強い傾向とする日本交通公社(JTBF)の調査結果も記載した。

宿泊業の課題解決としてDXなどを明記

このほか、第II部では、観光産業の課題を明らかにするとともに、必要な解決策についても明確にしている。

国内旅行の特徴のひとつとして、宿泊日数の短さや月別旅行消費額の偏りがあり、宿泊業では労働生産性(従業員1人当たり付加価値額)が、全産業の平均に比べ低いと指摘。その理由として、宿泊業は建物、客室、浴場、食堂、調理場等、リニューアルや維持管理に多額の投資が必要であり、労働装備率は他のサービス産業に比べ高い水準にある一方で、設備投資効率が低く、生産設備が効率的に活用されず付加価値の向上につながっていないと説明している。

そのうえで、具体的な対策として、観光地の面的再生(廃屋の撤去や泊食分離など)、IT化やDX による省力化や新たなビジネス展開、新しい体験コンテンツの造成、人材育成、サステナブルツーリズムの推進、DMOによる取り組み、アドベンチャーツーリズムの推進などを挙げた。