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日本作家協会の「第1回兼高かおる賞」、「テルマエ・ロマエ」のヤマザキマリさんが受賞、若者に「ネガティブな部分も旅の醍醐味」

日本旅行業協会(JATA)が2021年6月21日に開催したツアーグランプリ表彰式で、日本作家協会が創設した「兼高かおる賞」の表彰式が行われた。第1回の受賞者は、漫画「テルマエ・ロマエ」のほか、様々な海外経験をもとにした著作の多い漫画家・随筆家のヤマザキマリ氏が受賞した。

兼高かおる賞は、戦後の日本人の海外旅行自由化以前から30年以上にわたって世界150か国以上を取材し、テレビ番組「兼高かおる世界の旅」で世界の様々な地域の歴史や風土、人々の暮らしをレポートした同氏の業績を称え、意志を受け継ぎ、その名が語り継がれることを願って作られた。兼高かおるさんのイメージに重なる人柄、業績を主眼に選定し、人物のほか団体、番組やイベントなどの企画も選考対象としている。

子供の頃から「兼高かおる世界の旅」を毎週楽しみに視聴し、影響を受けたというヤマザキ氏は受賞者スピーチで、「外に行けば自分の空間はどんどん広がり、地球全体が自分の住処ということを体現された方。私を作ってくださった重要な人物の賞をいただけて本当に光栄に思っています」と述べた。

表彰式後の記者会見ではヤマザキ氏に対し、旅の魅力や価値に関する様々な質問が飛んだ。このなかで、「若い世代が旅行に行かなくなっている」ことに対しヤマザキ氏は、「理由を聞いてみたことがあるが、自分の知らない場所で戸惑ったり、わからないことに向き合うのが嫌だと。自分たちの失敗を恐れている」と言及。「失敗を回避してばかりでは、人として不完全になるというのが私の持論。旅はまさにそこを矯正してくれるもの。ポジティブな部分だけでなく、ネガティブな部分もあわせて旅の醍醐味」との思いを述べた。

その上でヤマザキ氏はメディアの旅の魅力の伝え方について、「ネガティブな体験も旅の面白さ。人として経験すべきことという伝え方をするべき。私も自分の作品で、それが伝わるような努力をしている」と話した。