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マカオ政府観光局、「ツーリズム+」で観光の質を向上へ、IR企業は「脱カジノ」「エンタメ重視」の戦略加速

マカオの観光市場は順調に回復している。このほど、マカオ政府観光局が日本で旅行業界向けアップデートセミナーを開催。その状況と、今後の戦略を説明した。

マカオ政府観光局によると、2024年の入国者数は、約3500万人で、コロナ前、2019年の88.7%まで回復した。今年1月~2月も2019年同期比10%増。2025年は2019年の約3900万人を超えると見込んでいる。

日本人入国者数は12万6424人。2019年比では43%と半数以下にとどまっているものの、前年比で68%増となり、国別入国者数でもトップ10に入った。また、直近の2025年1月~2月では、約2万6500人で前年比20%増、2019年同期比では50.6%まで戻した。

2024年の国別入国者数トップは圧倒的に中国で、前年比29%増の2450万人、2019年比では88%まで回復した。

同局のマリア・ヘレナ・デ・セナ・フェルナンデス局長は、日本からのインバウンド市場について、「現状、マカオおよび香港から日本へのアウトバウンド旅行者が多いため、日本からマカオおよび香港への旅行者向けの航空座席が取りにくくなっている」と分析。日本人旅行者の完全回復に向けては、航空環境の改善が必要との考えを示した。

現在のところ、マカオへの直行便は、マカオ航空が成田線および関空線を毎日運航。2018年に香港・珠海・マカオを結ぶ「港珠澳大橋」が開通したことで、香港国際空港/マカオ間のアクセスも向上しており、香港からのマカオ空港直行バスや、マカオでの香港発便のチェックインサービスが提供されている。

また、全体の入国者数が順調に回復している一方で、その伸びに対して現地消費額の回復は追いついていない。その現状について、フェルナンデス局長は「世界的な経済状況から、旅行者は消費に対して慎重になっている」としたうえで、「マカオでは、価格に見合った価値を提供していきたい」と話した。

同局では、「ツーリズム+」戦略を推進していく方針。ツーリズムにプラスアルファの価値を付加することで、マカオの観光地としての魅力を高めていく。プラスするのは、文化・クリエイティビティ、ガストロノミー、テクノロジー、体験、スポーツ、イベント。今後は、教育、健康、MICEなども加える。産業とのつながりを強化し、観光の質を高めていくのが狙いだ。

マカオの観光戦略について説明するフェルナンデス局長脱カジノ、エンタメ重視の戦略を加速

マカオの統合型リゾート・IRを運営する6社は、近年、カジノからエンターテイメントへの投資を強めている。フェルナンデス局長によると、カジノ以外への投資額は10年間で約136億ドル(約1.9兆円)で、カジノへの投資のおよそ10倍になるという。

そのエンターテイメントについては、MGMコタイシアターで、世界的映画監督の張芸謀(チャン・イーモウ)氏の総指揮のもとに制作れさた『MACAU 2049』が新たにスタート。中国の無形文化財に焦点を当て、観劇を通じて中国各地をバーチャルで旅行するショーが人気を集めている。

また、City of Dreamsでは、『ハウス・オブ・ダンシング・ウォーター』が約5年ぶりに上演再開。新しい演出とテクノロジーで、ダイナミックで没入感のあるショーとして蘇った。

日本市場向けのプロモーションでは、BtoC向けにマカオの認知度向上を進めていくとともに、BtoBでは旅行会社との関係を強化。旅先としてのマカオの存在感を高めていく。BtoCプロモーションでは、2025年4月17日~20日かけて、東京・秋葉原でPRイベント「旅するマカオ祭」を開催した。

フェルナンデス局長は、「今後はZ世代の日本人旅行者を増やし、持続的な発展に繋げていきたい」と強調した。

※ドル円換算は1ドル142円でトラベルボイス編集部が算出