近畿日本鉄道は2025年10月31日、名古屋/賢島間を結ぶ新たな観光列車「Les Saveurs志摩(レ・サヴール・しま)」を2026年秋から運行すると発表した。「美食が誘う、優雅な列車旅」をコンセプトにフランス料理を車内で提供する、近鉄初の本格的なレストラン列車となる。サヴールはフランス語で「味」「風味」という意味。
三重県四日市市内で開いた会見で近畿日本鉄道代表取締役社長の原恭氏は、「新たな観光体験の提供で沿線地域の活性化につなげたい。名古屋からが旅の目的地となり、まずは巨大なマーケットである首都圏、そして東海圏からの誘客を意識している。首都圏とともにインバウンドにも、まだ、伊勢志摩の認知度が低く、今後アプローチを進めて定着させていくのが課題だ」などと話した。インバウンドについては、すでに東南アジアのエージェントとも交渉している。
投資額は約7.5億円、首都圏市場をメインターゲットに
投資額は約7.5億円。コロナ禍前から議論を開始し、伊勢志摩への期待度が高い「食」をテーマに構想を進めてきた。メインの客層は50~60代の女性や40~60代の夫婦・カップルをイメージしているという。
「Les Saveurs 志摩」は従来の特急車両12400系を改造した4両1編成で、座席数は50席。4号車(計16席)は本格的なフレンチコース、1・2号車(計34席)では手軽なフレンチ膳を提供する。3両目はキッチンカーとなる。運行は1日1往復の週6日(季節により週7日)で、往路が近鉄名古屋発11:10頃、賢島着13:30頃、復路が賢島発16:30頃、近鉄名古屋着19:30頃。途中、伊勢市、宇治山田、五十鈴川、鳥羽、鵜方に停車する。
4号車のフレンチコースは2016年「G7伊勢志摩サミット」ワーキングディナーを担当した志摩観光ホテル総料理長の樋口宏江氏。メインのビーフシチューのほか、伊勢海老、アワビ、熊野地鶏など三重県の豊かな食材を盛り込む予定で、樋口氏は「G7の経験も活かしたい。一品一品でこの地の物語を表現し、レストランとは異なる環境の車内でも温かいものは温かく、冷たいものは冷たく提供できるよう工夫し、車窓の風景とともに楽しんでいただけるようにする」と意気込んだ。運賃を含めた料金は片道2万円台後半を検討している。1・2号車のフレンチ膳は片道1万円台後半で、近鉄・都ホテルズが料理監修を担当し、彩り豊かなフレンチを木箱に詰め込む。
フレンチコースのイメージ:提供「近鉄」
本格的なフレンチとともに注目が集まるデザインは、エクステリアが志摩の海・白砂・太陽を表演する深みのある青と、光を感じる白で表現。インテリアは4号車が、椅子が革張りの家具調、間接照明で上質な空間を演出する。1・2号車はフレンチ膳を味わいながら車窓を楽しめるよう、窓一つに対して各席を斜め向きに配置する。
4号車テーブル席のイメージ:提供「近鉄」