大手市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルは、「世界ラグジュアリー商品市場2025」レポートを発表した。それによると、2025年の富裕層市場は引き続き堅調に推移し、その市場規模は1.5兆ドル(約231兆円)に達する見込みだという。
調査では、個人向けラグジュアリー商品の売上のうち81%が実店舗での販売が占め、対面での接客の重要性が継続していることが明らかになった。富裕層向けの店舗は、そのブランドの独自性とおもてなしを通してアイデンティティを表現。ホテルのコンシェルジュ水準のサービスと、魅力的なブランドストーリーを組み合わせた体験が差別化要素となっている。
一方で、デジタルチャネルではパーソナライズ化が進んでいるものの、多くの富裕層消費者は人による接客を重視。ユーロモニターの「消費者の声:小売業調査2025」によると、店頭でのファッション商品の購入を好む高所得者の割合は2023年の36%から52%に増加した。
Eコマースが急成長するなかでも、デジタルプラットフォームでは完全に再現できない、触覚的な体験を改めて評価している実態がうがえる結果となった。
ユーロモニターは、ラグジュアリーブランド各社がインタラクティブ体験を通じて顧客との繋がりを築き、ロイヤルティを高める文化的な場所として店舗を再構築していると指摘している。
ライフスタイルが市場を牽引
調査結果から、ラグジュアリー支出は、モノから体験重視へとシフトしており、これは消費者の価値観の根本的な変化を反映していることもわかった。例えば、ラグジュアリー旅行・ホスピタリティ市場は2025年に8%増の1030億米ドル(約15.9兆円)に達する見込みだ。
そのなかで、レポートではウェルネス、ライフスタイル、感情的な繋がりが新たなトレンドになっており、消費者の価値観が広範で変化していることを浮き彫りにしていると指摘。一例として、ライフスタイル、小売、社会体験を融合させた空間やウェルネス関連施設が増えており、ブランドは、特別な空間、コミュニティ、個人の充足感を提供する新たな分野に進出していることをあげた。
需要を刺激する高齢者
平均寿命が延び、医療技術の向上、世代交代を背景に、60歳以上の世代は急速に富と影響力を増している。ユーロモニターでは、この世代がラグジュアリーを再定義しつつあり、贅沢と洗練を求める一方で社会進出や簡潔さも求めているとしている。
具体的には、ウェルネス旅行、スパなどのリラクゼーション、年齢に合わせたラグジュアリースキンケア、住宅イノベーション、不動産、「エイジング・イン・プレイス(居心地の良い老後)」を支援する高級住宅など、生活の質を高めるラグジュアリー商品などに対して関心を高めている。
※ドル円換算は1ドル154円でトラベルボイス編集部が算出