ロサンゼルス・ドジャースは、2025年ワールドシリーズを制し、球団初となる2連覇を果たした。大谷翔平選手、山本由伸選手、佐々木朗希選手の日本人3選手の活躍で、日本でも大いに盛り上がり、スポーツツーリズム・デスティネーションとしてのロサンゼルスの魅力が改めて鮮明となっている。そのような中で、ロサンゼルス観光局では「世界のスポーツ首都(The sports capital of the world)」として、スポーツをフックとした観光プロモーションに力を入れている。その内容を取材した。
スポーツツーリズムによる経済波及効果に期待
ロサンゼルスには、MLBのドジャースをはじめ、全米最多となる11ものプロスポーツチームがあり、年間を通じて試合観戦を楽しむことができる。日本人選手は、ドジャース3人のほかにも、NBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)のロサンゼルス・レイカーズの八村塁選手がレギュラーで活躍。MLS(メジャーリーグサッカー)のロサンゼルス・ギャラクシーには、元日本代表主将の吉田麻也選手、女子サッカーリーグ(NWSL)のエンジェルシティFCには、なでしこジャパン常連の遠藤純選手、守屋都弥選手、杉田妃和選手も所属する。
ロサンゼルス観光局では、こうした多くの日本人選手が活躍していることを背景に、日本市場で観光コンテンツとしてのスポーツに注目。その集客力だけでなく、経済波及効果にも期待をかけている。
その特筆すべき例がドジャースの大谷選手だ。2024年シーズン以降、旅行会社のドジャース観戦ツアーの販売は好調に推移。ロサンゼルス観光局の調べによると、ある旅行会社が取り扱うロサンゼルスの商品では、参加者の約8割がロサンゼルス滞在中に1回以上、ドジャー・スタジアムで試合を観戦したという。
試合のない日に実施されるスタジアムツアーの人気も高まり、日本語ツアーガイドの人数は以前の1名から現在では8人に増えている。
また、試合以外でも経済効果は波及している。試合日には、リトルトーキョー地区の飲食、小売、宿泊の売上は大幅に増加したという。さらに、MLBによると、大谷選手のユニフォームの販売数はMLB全体で3年連続でトップとなり、ドジャース公式ストアや周辺商業施設での売上増に大きく貢献した。
プロチームとの連携プロモーションも
ロサンゼルス観光局では、各プロチームと連携したプロモーションを展開する予定だ。海外市場向けに「観戦+滞在」をテーマとしたモデルコースやコンテンツ発信を強化していく。
日本市場では、2025年シーズンの開幕戦ドジャース対シカゴ・カブスの開催に合わせて、MLBやブランドUSAと協力して観光促進のためのセミナーやプロモーションを実施した。今後も、機会をとらえて、プロスポーツリーグや、各チーム、旅行会社、メディアと連動したプロモーション展開を検討していくという。
また、ドジャー・スタジアムだけでなく、レイカーズ、NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)のキングスのホーム「Crypto.comアリーナ」、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のチャージャーズおよびラムズのホーム「SoFiスタジアム」、NBAクリッパーズのホーム「インテュイット・ドーム」などのスタジアムツアーも紹介していく方針だ。
さらに、2024年6月に開業した次世代型スポーツ観戦施設「Cosm Los Angeles」の訴求も強めていく考え。この施設は、ハリウッド・パークのSoFiスタジアムや インテュイット・ドームに隣接。半球状ドームの会場でLED映像を用いた演出によって試合観戦の視覚的没入感を強める設計で注目を集めている。
このほか、ロサンゼルスは大都市でありながら海と山に囲まれた環境にあることから、観戦だけでなく体験するスポーツの訴求にも力を入れる。ベニスビーチやマリブでのサーフィン体験やビーチヨガ、海岸沿いや市街をめぐるバイクツアーなどアウトドアからウェルネスまで幅広いコンテンツが大きな強みとなっている。また、「ラニヨン・キャニオン・パーク」や「グリフィス天文台トレイル」などでのハイキングはハリウッドのセレブの間でも流行しているという。
ビッグイベントが目白押し
ロサンゼルスでは来年以降も、スポーツのビッグイベントが控えている。2026年には米国・メキシコ・カナダ共催の「FIFAワールドカップ」の開催都市となる。SoFiスタジアムで開幕戦を含む計8試合が開催される予定だ。公式プロモーションパートナーに指定されたロサンゼルス観光局は、特設ウェブサイトを開設し、ワールドカップを契機にロサンゼルス旅行を計画する旅行者に向けて情報を提供している。
FIFAワールドカップの会場となる「SoFiスタジアム」((c)Noel Vasquez)
また、2027年には「NFLスーパーボウルLXI(59回)」がSoFiスタジアムで開催。この大会でもロサンゼルス観光局は公式プロモーションパートナーを務める。
さらに、2028年には「LA28オリンピック・パラリンピック」が開催。オリンピックは7月14日~30日、パラリンピックは8月15日~27日におこなわれる。ロサンゼルス観光局では、大会に向けて、市内全体でスポーツをテーマにした観光プログラムの開発とプロモーションを進め、世界有数のスポーツ都市ロサンゼルスとして訴求していく計画だ。
ロサンゼルス観光局は、「旅行会社、航空会社、メディアパートナーと緊密に連携することで、観光情報やモデルコース、現地でのサポートを包括的に提供し、世界中の旅行者がロサンゼルスならではのスポーツカルチャーを体感できるように取り組んでいく」とコメントしている。