トラベル懇話会は2026年1月9日、都内で第48回新春講演会を開催した。旅行会社などの経営者層が多く参加するなか、登壇者からは国際観光旅客税(出国税)の引き上げに伴う海外旅行需要への影響や、インバウンド、アウトバウンド(日本人の海外旅行)、国内旅行の「三位一体」による市場活性化の必要性が示された。
トラベル懇話会は旅行会社や航空会社・ホテル・ランドオペレーター・保険会社などの経営者から構成される旅行業界団体だ。
主催者代表として登壇した百木田康二会長(写真)は、2025年の観光市場を「インバウンドとアウトバウンドの不均衡が拡大した1年だった」と振り返った。国内旅行は堅調に推移しているものの需要の「2極化」が進んでいる点に言及。1年間に一度も旅行をしない層が2014年の47%から2024年には51%へ上昇し、特に60代から70代で増加しているというデータを提示し、市場の変化に警鐘を鳴らした。
一方で、次期観光立国推進基本計画においてアウトバウンド促進が明示される方向であることや、2026年度予算にアウトバウンド促進予算が計上されたことを「画期的」と評価。出国税の引き上げが予定されるなか、業界として需要を減退させないよう、パスポート取得費用の減額予定といった支援策を正確に発信していく重要性を訴えた。
観光立国推進基本計画の3つの柱に「アウトバウンド促進」
来賓として登壇した観光庁の村田茂樹長官は、2025年の振り返りとともに、今後の施策方針を語った。
2025年の状況については、堅調な訪日需要と航空便の回復を背景に、官民一体となって取り組んだ結果、訪日客数・消費額ともに好調に推移したと総括。また、日本人の国内旅行消費額も順調に推移している。
今後の課題としては、一部地域でのオーバーツーリズムによる住民の生活の質の低下が起きていることを挙げ、「観光客の受け入れと住民の生活の向上」の両立が重要であると強調。地方誘客に向けた交通基盤などの整備を進め、観光が地域住民に利益をもたらす姿を可視化していく方針を示した。
観光庁長官 村田茂樹氏
これに基づき、検討中の次期の観光立国推進基本計画では「インバウンドと住民の質の確保」「アウトバウンド・国内交流の促進」「観光産業の強靭化」の3つを柱に据える方向で議論が進んでいることにも言及した。
また、出国税の引き上げによる税収は、出国税を課される日本人出国者にも十分配慮し、海外で安心・安全に過ごすための環境整備やアウトバウンドの促進に資する施策をおこなうと明言した。
最後に、政府目標の達成に向け、観光を通じて日本の魅力や活力が次世代へ継承される姿を国民が実感できるよう、官民一体で進めていく決意を表明。2026年3月に開幕を控える「GREEN EXPO 2027(横浜国際園芸博覧会)」についても触れ、旅行各社に対して集客に向けた旅行商品の造成を呼びかけた。
JATA高橋会長「価格から価値への変革を」
日本旅行業協会(JATA)の髙橋広行会長は、今年も最大の課題として「海外旅行の復活」を挙げた。円安や旅行費用の高騰が続くなかでも、高所得世帯の支出意欲は堅調であるとし、「価格から価値への変革を図る好機」と述べた。検討が進められているパスポート取得費用の減額も「大きな追い風となる」とみている。
また、新たな観光立国推進基本計画の、3つの柱のひとつに「アウトバウンド促進」が含まれる方向性で議論が進んでいることも評価。「アウトバウンド促進による双方向交流の拡大は、インバウンド拡大にも大きな意味を持つ」と力を込めた。
国内旅行会社の多くがインバウンド事業を十分に扱えていない現状については、「訪日インバンドを事業の柱にする気概を持っていくべき」との考え。訪日市場を事業の柱に据えるとともに、アウトバウンドを促進することで、双方向の航空座席数を確保する重要性を強調した。
日本旅行業協会(JATA)会長の髙橋広行氏
講演会には、国際オリンピック委員会(IOC)委員、国際フェンシング連盟理事の太田雄貴氏が登壇。日本フェンシング界における組織改革の実践例をテーマに講演した。フェンシングの人気向上に向けた具体的な施策や、組織運営における失敗から得た知見が共有され、経営者としての組織運営の在り方について示唆を与えた。