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JTB、2035年を見据えた長期ビジョンを発表、「インテリジェンス」を中核に事業構造を転換、営業利益750億円へ

JTBは、2035年を見据えた長期ビジョン「OPEN FRONTIER 2035」を策定した。社会環境や産業構造が大きく変化するなかで、交流を軸とした価値創造企業としての方向性を明確にし、持続的な成長と企業価値の向上を目指す。このビジョンのもとに、新たな経営計画の策定を進める方針だ。

JTB代表取締役社長執行役員の山北栄二郎氏は、発表の記者会見で、新たなビジョンを策定した背景を「10年後に変わる社会を踏まえ、どんなアクションを取るかをしっかり捉えることが重要」と説明した。気候変動や人口構造の変化、生成AIをはじめとするテクノロジーが急速な発展を遂げている。「移動、情報・データ、意思決定」のプロセス刷新、社会システムの再構築が進む中、これまで社内で2035年にツーリズムがどのようなカタチで価値を提供できるのかを検討してきたという。その中で、「近い未来にAIが多くの業務をおこなうようになる、その上に人の力をどう乗せるかを考えた(山北社長)」。

同ビジョンでは、交流の高度化と多様化を支える基盤、グループの価値の源泉として「交流創造Intelligence(インテリジェンス)」を企業競争力の中核に据えた。インテリジェンスによってマーケットの理解が変わり、顧客へのアプローチが変わってくる。顧客や地域、産業に関する「洞察力」と、ツーリズム分野で培ってきた「専門性」を組み合わせ、データや知見を活用し、交流の設計から実装、運営までを一体で担う体制の構築を進める。

この戦略のひとつとして、2025年8月の観光産業の世界大手BtoBメディアグループ「Northstar Travel Group(ノーススター)」の買収がある。ノーススターのメディアとしての独立性は担保しつつ、グループが蓄積してきた信頼性の高いデータの分析とグローバルネットワークによってAI時代の産業付加価値を加速させる。

組織のあり方については、DEIB(多様性、公平性、包括性、帰属意識)を重視し、「違いを価値に、世界をつなぐ。」というステートメントのもと、多様な人財が能力を発揮できるオープンイノベーティブな文化の醸成を目指す。時間や空間、組織の壁を超えたボーダレスな働き方を推進するとともに、社員一人ひとりの意志を尊重したキャリアデザインの支援や、スキルと経験の可視化によるマッチング機能を強化する。また、サステナビリティを経営の根幹に据え、2035年にはサステナビリティに取り組む事業パートナーとの取引割合を63%まで高める具体的な数値目標を掲げた。

さらに、社会課題の解決に資する具体的な施策として、2026年4月に「JTBソーシャル・コミットメント・プログラム みらい交流創造基金」を設立する。基金は、地域コミュニティが持続可能であるために不可欠な、有形・無形の文化財の保護、自然環境の再生、およびオーバーツーリズム対策といった活動を継続的に支援することを目的としている

2035年に営業利益750億円を目指す、事業戦略区分を4つに整理

また、ビジョンでは新たに事業戦略の区分を4つに整理。事業ポートフォリオの変革とあわせて、従来の旅行取扱に依存しない事業構造への転換を図る。

具体的には、個人旅行を中心としたツーリズム領域(Global Tourist Solution)、法人・教育分野を対象とするビジネスソリューション(Global Business Solution)、自治体やDMOなど地域向けのエリアソリューション(Global Area Solution)、ツーリズム産業全体を支援するインテリジェンス事業(Global Tourism Intelligence)を軸に、グローバルでの価値提供を進める。

事業ポートフォリオの変革では、2035年にグローバル比率を50%(2024年14%)、非人流ビジネスを25%(同20%)、継続的に収益を得るストック型比率を30%(同11%)とすることを目指す。特にストック型比率を上げるうえでは、事業資産、IPライツ権利(MLB契約など)、人材への投資により持続的成長に向けた投資サイクルを確立することで優良資産を形成する方針だ。

こうした変革を進め、財務面で2035年度をターゲットとした目標を設定した。2024年度実績では、取扱額1兆6838億円、売上総利益2937億円、営業利益149億円、売上総営業利益率5.0%。これに対し、2035年度には取扱額を2兆5000億円、売上総利益を5000億円、営業利益を750億円まで拡大し、売上総営業利益率を15.0%に引き上げることを目指す。

こうした収益性の大幅な改善を通じて、成長投資を継続できる財務体質の確立を目指す方針だ。

長期ビジョンの発表当日に開催された事業パートナーとの新年賀詞交歓会。パートナー向けにもビジョンを説明した