グーグル(Google)が2026年に入ってすぐに発表した小売向けのAIエージェント「ユニバーサル・コマース・プロトコル(UCP)」は、eコマースサイトに終焉をもたらす存在(ウェブサイトキラー)と呼ばれ、あらゆるAIとのやり取りをシームレスな取引きに変えると言われている。
UCPとは、AIエージェントが情報の検索から購入、決済までを一気通貫で実行するためのグーグルの共通規格。いわば「AIが人間の代わりに取引を行うための標準言語」だ。最大の特徴は、AIエージェントによる予約・購買の完全自動化。UCPが普及すれば、例えば、ユーザーがAIに「来週の福岡出張、予算2万円で静かなホテルを予約して」と口頭で指示するだけで、AIは裏側で各社の在庫をリアルタイムに確認し、支払いまでを自律的に完結させると言われている。
しかし、この考えはスニーカーなどモノの購入には当てはまるかもしれないが、旅行についてはまだ現実的ではない。AIが次の旅行を確実に予約できるようになるまでには、長く複雑な道のりがまだある。
現時点では小売業向け、価格変動と責任の所在にギャップ
UCPは、物理的な商品の世界で生まれた。つまり、Googleショッピングフィード向けに設計されたものだ。UCPのドキュメントは、物理的な商品の配送に関する「tracking_number」や「street_address」といったフィールドに焦点を当てており、旅行業界の座席表や客室タイプなどの情報に特化したデータフィールドはまだない。ホテルにとっての「fulfillment」フィールドは荷物の到着ではなく、チェックイン時間、デジタルキー、朝食バウチャーなどを指す。
また、小売業界では、「購入」をクリックするまでの3分間でシャツの価格が変わることはほとんどない。一方、旅行業界では、在庫は非常に不安定だ。AIエージェントがフライトを「発見」してからユーザーが「確認」するまでの時差で、価格や空席状況が秒単位で消えてしまう可能性がある。
また、UCPでは、旅行会社が販売主体(Merchant of Record)として残ることになる。これは、旅行会社が顧客データを保持する一方で、AIが犯すあらゆるミスの責任も負うことになる。UCPが排除しようとしている確認手順やリアルタイム更新こそが、旅行業界においては価格の急騰や決済の失敗を防ぐための安全装置となっている。
メタサーチを活用した予約 2.0:AIエージェントへのシフトか?
この先どうなるかを理解するために10年前を振り返ってみよう。
Kayak(カヤック)やTrivago(トリバゴ)などの大手旅行比較サイト(メタサーチ)は、ユーザーを別のサイトにリダイレクトするだけの単なる検索エンジンから、自社サイトを離れることなく直接予約できるプラットフォームへと移行した。しかし、OTAや航空会社は引き続き販売主体(Merchant of Record)であり続けている。
UCPは本質的には、そのモデルの進化系で、かつてのサイト上の「今すぐ予約」ボタンが、現在は「AIエージェント」に置き換わろうとしているのだ。
今後は?まずは足場を固める戦略を
グーグルは、Googleフライト、ホテル、地上交通、Things to Do(タビナカ)サービスとの緊密な連携のもと、AIエージェントによる「ファーストマイル」、つまり検索部分の課題を解決していくだろう。
そのなかで、旅行関連会社の最善の戦略は、UCPが旅行プロトコルになるのを待つことではなく、既存のGoogle旅行サービスを習得することだ。競争優位性の本質は、高精度な価格と空室状況を維持しながら、秒単位で検索リクエストに応答していくことにある。
UCPがGoogleトラベルに導入されれば、予約ファネルは変化するが、完全に崩壊することはない。正確な価格と空き状況を返すデータフィードを最適化し、API機能を検索から付帯サービスや予約確認まで拡張することで、エージェントによる未来に備えることができると思う。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事: WHY GOOGLE'S UCP IS NOT A GAME CHANGER IN TRAVEL
筆者:Mario Gavira氏(Travelier CMO)
