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エクスペディアとウーバー、トップ対談で語った「AI時代の旅行体験」とは? ホテル連携から自動運転まで、最大の競争軸は「信頼」

エクスペディア・グループCEOのアリアン・ゴリン氏と、ウーバーCEOのダラ・コスロシャヒ氏が、旅行とモビリティの接点、AI時代の経営、そして旅行者との信頼関係について対談した。

コスロシャヒ氏は、かつてエクスペディアを率いた経営者でもある。現在のウーバーのCEOという立場から、インターネット、モバイル、AIへと続く変化のなかで、企業が何を守り、何を変えるべきかを語った。一方、ゴリン氏は、エクスペディア・グループがウーバーとの提携を通じて、ホテル流通とアプリ体験の双方で新たな需要創出を目指す考えを示した。この対談は、エクスペディアのパートナーイベント「explore 2026」でおこなわれた。

コスロシャヒ氏が、まず強調したのは、変化に対する姿勢だ。同氏は、エクスペディアのように成功の歴史を持つ企業ほど、「現在や過去の状態を維持したくなる誘惑がある」としたうえで、「守りに入ろうとする誘惑に屈してはいけない。守りに入った瞬間に負ける」と述べた。モバイル予約が登場した初期には、コンバージョンが悪く、会社にとって逆風になる時期もあった。しかし、その変化に走って向かい、積極的に実験することが重要だったと振り返った。

ゴリン氏も、コスロシャヒ氏から受けた助言として、「頭と心が一致しないなら、その決断を下す準備はできていない」という言葉を紹介した。論理だけでなく、直感にも意味があり、両者が一致したときに前に進むべきだという考え方だ。コスロシャヒ氏はこれについて、「心が違和感を覚えるときは、自分がまだ見落としている論理がある」と説明した。AIによる構造変化が進むなかでも、経営判断にはデータだけでなく、人間の感覚を含めた意思決定が求められるというメッセージである。

2社の提携、ホテル需要を新たな接点に

両氏の対談で大きなテーマとなったのが、エクスペディア・グループとウーバーの新たな提携である。ゴリン氏は、両社が「素晴らしい取引」に合意したとして、その内容を「双方向のパートナーシップ」と説明した。具体的には、エクスペディアがウーバーのホテル機能を支え、同時にウーバーをエクスペディアのアプリ内に取り込む構想である。

ゴリン氏は、ホテル関係者に向けて「ウーバーを通じて、これまで得られなかった需要を届けることになる」と呼びかけた。旅行者は、法人旅行会社、小規模旅行会社、航空会社のロイヤルティポイントなど、さまざまな経路で宿泊を予約する。そうした予約行動の多様化を前提に、少なくともエクスペディアとウーバーという2つの接点で、より良い旅行体験をつくることが提携の狙いだとした。

これに対しコスロシャヒ氏は、ウーバーが「オンデマンド」と同義になっている一方で、戦略的には旅行計画の領域に入れるかどうかを検討してきたと説明。ウーバーのホテル機能は、直前予約だけを想定したものではない。同氏は、予約型サービスの実績を通じて、利用者が次の旅行を計画する場としてウーバーを使う可能性を確認してきたと語った。

同氏はさらに、ウーバーが旅行の現場で大きな接点を持っていることを強調した。「飛行機を降りたとき、最初に開くアプリはたいていウーバーだ」と述べ、世界の空港発着での移動が1億回を超えていること、さらに前年には利用者の居住都市以外で15億件の取引があったことを紹介した。ウーバーのアプリ上には、すでに多数の旅行者との接点が存在している。コスロシャヒ氏は、その接点を活用して旅行業界に追加需要をもたらすことができれば、「ウィンウィンになる」と述べた。

ウーバーCEOのダラ・コスロシャヒ氏(左)とエクスペディア・グループCEOのアリアン・ゴリン氏

AIで旅行予約はどう変わるか、過熱と過小評価の境界線

対談の後半では、AIが旅行とモビリティの体験をどう変えるかを議論した。

ゴリン氏は、エクスペディアにとって今後10年の大きな賭けはAIであるとし、既存事業を守るだけでは不十分だと語った。同社では、大手AI企業との関係構築に特化したチームを設け、技術チームが統合型ソリューションを開発しているという。さらに、アンサーエンジン最適化や新たなプロダクト体験についても早期から検討を進めてきたとした。

ただし、ゴリン氏は現時点でAI経由の流入が全体トラフィックの1.5%未満にとどまっていることも明かした。「小さいが、急速に伸びている。重要なのは、実験し続けることだ」と述べ、AIが旅行者との接点や企業運営を変える可能性を見据え、先頭に立つ必要があると語った。

一方、コスロシャヒ氏は、AIの消費者体験についてはまだ過熱気味に語られている面があると指摘した。チャットGPTやクロードのような基盤モデルを直接使う体験を除けば、旅行予約やウーバーの利用体験がAIによって根本的に変わったとはまだ言えないという。同氏は、ウーバーで音声予約を導入したことや、料理の写真から材料を推定して買い物リストをつくり配送につなげる機能に触れながらも、「まだ大きな利用にはなっていない」と率直に語った。

その一方で、企業内部の業務改革ではAIの力が長期的に過小評価されている可能性があるとした。例として挙げたのがカスタマーサービスである。当初は、既存の複雑な社内ポリシーをAIエージェントに追わせようとしたが、結果は十分ではなかった。そこで発想を変え、AIに対して「顧客をよく扱う」という目的とガイドラインを与え、判断させる形にしたところ、初期結果は非常に有望だったという。コスロシャヒ氏は「これまでやってきたことを一度捨て、ゼロからプロセスを考え直す方がうまくいく」と述べた。

ゴリン氏も、旅行会社、ホテル、航空会社がそれぞれAIエージェントによる顧客対応を検討しているとし、同じ旅行者を相手にする業界内で、どのように連携してより良い旅行者成果につなげるかが重要になると指摘した。まずは各社が自社の仕組みを整え、そのうえで相互に接続することが課題になるという。

信頼がブランドの防衛線に

AIによってオンライン旅行会社が終わるのではないかという見方に対して、ゴリン氏は明確に反論した。旅行は10ドルのTシャツを売る事業とは違う。旅行中に何かがうまくいかなかった場合、その時間は戻ってこない。このため、旅行者が旅行を予約・計画する際には、信頼できる会社を選ぶ基準がより高くなるとした。「この瞬間において、信頼はさらに重要になっている」とみている。

エクスペディア・グループとしては、最新のコンテンツ、料金、空室、品ぞろえ、アプリ内のセルフサービス、電話対応を含むサービス品質に注力しているという。また、ロイヤルティプログラムや、複数の旅行要素を組み合わせて割安に提供するバンドル機能も、当面は大規模言語モデルだけでは代替しにくい価値だとした。

さらにゴリン氏は、旅行者が旅を計画する時間そのものに楽しさを感じている点にも言及。「旅行を計画しているとき、人々は最も幸せである。時には、実際の旅行より計画しているときの方が幸せなこともある」と述べ、AIにすべてを委ねるのではなく、新技術を使って計画をより簡単にしながら、旅行者自身が選ぶ力を支えることが重要だとした。

自動運転にも共通する社会的課題

自動運転について、コスロシャヒ氏は、ロボットドライバーは最終的に人間のドライバーより安全になる可能性があると語った。注意散漫になることもなく、継続的に学習するからである。ただし、自動運転車は計算資源やセンサーを必要とし、車両価格が20万ドルを超えるため、移動全体に占める比率が大きくなるには時間がかかるとした。米国では現在、全移動に占める比率は0.5%未満で、今後5年で10%程度まで進む可能性があるとの見方を示した。

ウーバーとしては、安全で適格な人間のドライバーをすべてプラットフォームに迎えたいのと同じように、安全で適格なロボットドライバーも迎えたいという。Waymoをはじめ複数の企業と連携し、米国のアトランタ、オースティン、さらにドバイ、アブダビなどで自動運転車を利用できる事例にも触れた。

ただし、AIや自動運転をめぐる最大の課題は、社会との信頼関係だ。コスロシャヒ氏は、企業がAIの有用性を語る一方で、一般の人々の生活を本当に良くしているのかという問いがあると指摘した。ゴリン氏も、AIに対する不信やデータセンターへの疑問は、社会的な論点になっていると応じた。

最後にゴリン氏は、自身がCEOとして急速に鍛える必要があるリーダーシップの力について、「問題がどこで詰まっているのかを見つけ、チームがそれを取り除けるようにする能力」と述べた。大きな戦略や企業文化を示すだけでなく、組織や文化のどこに障害があるのかを見極め、日々会社の動きを良くしていくことが重要だと考えている。AIが旅行とモビリティの構造を変える局面でも、両氏が共通して示したのは、変化を防御するのではなく、信頼を軸に攻め続ける経営姿勢である。

取材・文: 鶴本浩司