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インバウンドのリピーター化と地方分散で消費は変わるのか? EYが最新の市場分析レポートを発表

EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)は、最新のツーリズムレポート「持続可能なインバウンド市場の構築に向けて~地方分散、リピート化の視点から何をすべきかを考える~」を発表した。このレポートは、観光庁が公表する「インバウンド消費動向調査」の個票データを活用し、訪問回数別の行動や消費実態、地方分散の状況を分析・整理したものだ。

このレポートの発表説明会で、EYSCストラテジック・インパクト・パートナーの平林知高氏は、「リピーターの中身(ポートフォリオ)はどうなっているのか」、「リピーター化によって消費額が本当に高まるかどうか」、「円安でインバウンド消費が伸びているなか、インバウンド旅行者の予算はどうなっているのか」、「リピータ化によって地方分散は本当に進むのか」という4つの問題意識をもとに分析を進めたと説明した。

その分析に加えて、レポートでは消費分析を行う過程ではっきりと見えてきた、日本の統計のあり方について主に整理した。

リピーターのポートフォリオ

まず、レポートではリピーターのポートフォリオに着目している。訪問回数の分布に着目すると、全体では初回訪問者の割合が約35%前後で推移しており、現在の比率が継続すればリピート率は65%となる。国が目標に掲げるリピーター4000万人が視野に入るとする一方、国・地域別に見ると市場構造は大きくなると指摘した。

東アジアでは、韓国の初回訪問者数が減少傾向にあり、台湾、香港はコロナ禍以降、10%程度で推移している。一方、中国は依然として40%超で推移しており、市場構造が大きく異なる点を特徴として挙げた。

東南アジアの初回訪問率は、タイが30%弱、シンガポールが20%強となっている一方、フィリピン、ベトナムは高い水準で推移していることから、リピーター化による成長が期待できるとした。

欧米豪では、東アジアや東南アジアと比較して初回訪問率が高く、米国で約6割、オーストラリアで5割強、英国とフランスは6割を超える。このことから、リピート化推進による市場成長が今後も期待できる構成となっていると説明した。

このほか、レポートでは、各市場の年齢層別のリピーター率も分析している。

リピーターと消費額、円安と旅行予算

インバウンド消費の伸びについては、リピーターと一人当たりの消費額、滞在日数についての相関関係を各主要市場の傾向を考察している。

宿泊数を地域別に見ると、東アジアと東南アジアは、初回と4回目以降では、ほぼ同程度か微増になっている一方、欧米豪ではリピーター化に伴い、滞在日数も消費額も増加傾向にある。そのうえで、オーストラリアは体験消費が他より高く、英国では4回目以降の宿泊費が大幅に増加している点を特徴として挙げた。

円安と旅行予算については、直近3年程度では多くの市場で現地通貨建ての予算感が横ばい、または減少傾向にあり、円建てで見える消費額増を解釈するうえでは、為替評価を踏まえた評価が重要と指摘。そのうえで、国内企業が適正と考える為替相場「中央値135円」(東京商工リサーチ)と、2025年の平均為替レート「約150円」の隔たりに触れ、仮に適正水準に近づく場合、単純計算で9454億円の影響がある可能性に言及した。

リピーターの地方分散化、今後の統計への提言

レポートでは、リピーターの地方分散化についても各主要市場ごとに分析した。

東アジアでは、中国を除き、リピート化するほど地方部への訪問が増加傾向にあり、台湾は初回から地方部への訪問が多い点も特徴的としている。東南アジアも同じ傾向だが、その増加率は高くない。欧米豪のリピーターによる地方訪問は微増。オーストラリア、英国は訪問率が若干高いものの、米国は地方部への訪問がリピート化してもそれほど高まらない傾向にあるという。

レポートの最後には、インバウンド6000万人時代に向けて必要な統計のあり方について提言している。平林氏は「アンケートベースによる定性的なマクロデータが意味を持つ時代から、より細かいエリア単位での動向や周遊状況が把握できるミクロデータが必要な時代になっている」と指摘。その例の一つとして、クレジットカード会社のトランザクションデータの定期的な取得を挙げたうえで、「インバウンド統計も新たなフェーズに入る時代になっている」と強調した。

持続可能なインバウンド市場の構築に向けて ~地方分散、リピート化の視点から何をすべきかを考える~(PDF)