マリオット・インターナショナルは、同社のラグジュアリー戦略の柱であるブランド・レジデンス事業の新たな展開として、同社ブランド「Wホテル」を冠した賃貸アパートメント事業に参入する。その第一弾は、2027年にクリーブランドで開業する予定だ。
ブランド・レジデンスとは、ホテルブランドなどを冠して同水準のサービスや共用施設を備えた高級住宅。同社がこれまで展開してきたのは、主に住戸を分譲するモデルだったが、今回は賃貸入居者を対象とする。これは同社にとって大きな転換点と言える。
2027年後半に開業予定の「Wアパートメンツ・クリーブランド(W Apartments Cleveland)」では、入居者は「エリービュー・タワー(Erieview Tower)」内の住戸を賃貸契約することになる。同タワーは所有者であるカスーフ家が第三者の運営会社を通じて管理・運営をおこなう。
この長期賃貸モデルは、マリオットがすでに展開している短期滞在向けの賃貸プログラムとは異なる。既存のプログラムは、レジデンス所有者が不在時に自身の住戸をホテルスタイルの短期滞在用として貸し出すもので、米国・カナダで約1500戸、世界全体で約2000戸が対象となっている。これに対し、「Wアパートメンツ・クリーブランド」は、所有者による一時貸しではなく、入居者が住戸を長期で借りる賃貸住宅として展開される。つまり、マリオットはブランド・レジデンスの仕組みを、分譲住宅や短期滞在向け貸し出しから、長期賃貸住宅へと広げることになる。
マリオットのグローバル・ブランド・レジデンス事業を統括し、米国・カナダでラグジュアリーホテル開発責任者を務めるダナ・ジェイコブソン氏によると、「Wアパートメンツ・クリーブランド」の賃貸契約には、24時間対応のコンシェルジュ、ドアマン、ベルマンによるサービスや、Wブランドのイベントに参加機会が含まれる。また、スパ、フィットネスセンター、ルーフトップバー&レストランなどホテルのアメニティの利用もできる。
レジデンス販売で記録的な実績
マリオットは現在、153のブランド・レジデンス・プロジェクトを展開している。この事業は成長を続けており、2025年には前年比約50%増となる55件の開発契約を締結した。さらに、世界で183件の開発計画を抱えているという。
このビジネスモデルにおけるマリオットのメリットは、多額の資本を投じることなく手数料収入を得られる点にある。マリオットは各ユニットの販売価格の一部と年間管理費を受け取ることができる。
開発業者にとってのメリットは、マリオットブランドの使用許諾を得て高価格帯での販売をおこなうことができるほか、建設資金の調達負担を抑えやすいところにある。
現在、高級ホテルの開発で、レジデンス(高級住宅)を併設しないケースは稀だ。物件の引き渡し前に販売されたユニットから得られる手付金は、物件価格の最大70%に達することもあり、金融機関からは自己資本としてみなされる。
慎重な開発事業者の選定
リスクとなるのは、ブランド付きレジデンス市場における好不況の波だ。ジェイコブソン氏も、野心的な成長目標を掲げながら、景気が後退しても生き残れる開発業者を選定する難しさを認める。竣工前に開発業者が破綻してしまうと、ブランドにも長期にわたる悪影響が及ぶからだ。
不動産仲介会社Savillsによると、ブランド付きレジデンスは同等のノンブランドのコンドミニアムに比べて通常30%以上高い価格で取引され、再販時にも優位性がある。そのため、マリオットなどブランドホテル運営会社は、提携する開発業者を比較的自由に選ぶことができるという。
需要の傾向
ブランド付きレジデンスの価格は、通常、数百万ドルから始まる。2026年6月、マリオットがライセンスを供与しているものの、同社が所有する物件ではない「ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ヒューストン」のペントハウスが3000万ドル(約48億円)で売買契約に入った。これは、テキサス州におけるコンドミニアムの公開されている取引として最高額になる可能性が指摘されている。
需要は地理的にも拡大している。Savillsの予測によると、今年、新たに25カ国でブランド・レジデンス・プロジェクトが展開される見込みだ。マリオットは、インドを新たな市場と見ており、オーストラリアでの展開も検討している。中東では、戦争の影響で計画が一時中断しているという。
顧客は、これまでの定説だった50歳以上の経営者層に限らない。ロングアイランドの「ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ノース・ヒルズ」を最初に構想した際、ファミリー層による購入の動きが見られたため、開発業者はジャングルジムなどキッズ向け遊具などの設備を追加することを決めたという。
※ドル円換算は1ドル160円でトラベルボイスが算出
※編集部注:この記事は、米·観光専門ニュースメディア「スキフト」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳·編集したものです。
オリジナル記事: Marriott to Enter Branded Apartment Rentals: W Hotels Comes First in 2027
筆者:Sean O'Neill氏
