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AIが変えるDMOの役割とは? 観光地域情報のサービス基盤へ、その実現に必要な2つの要素【外電】

オンライン上で探しやすい「可視性」のあり方は、AI普及で大きく変わりつつあり、DMOの間でも、模索が続いている。

フォーカスライトのレポートによると、旅行者の56%は旅行計画にAIを利用しており、旅行事業者にとってAIからの可視性は重大問題になっている。

「旅行の情報探しは、あちらこちらのリンクをクリックする形式から、AIに直接回答をもらう形へと移行しており、当然、多くのDMOが不安を感じている」とSimpleViewのデスティネーション体験シニアディレクター、デイブ・コーナー氏は話す。

DMOはその特性上、会話形式のクエリでの引用では、優位な立場だ。AIにおける可視性は、トレンドやアルゴリズム最適化とはあまり関係ないと同氏は指摘する。

「DMOの本来の役割に集中すること、すなわちデスティネーションに関する情報提供で、最も正確かつ信頼できる情報源になることが大切だ」とコーナー氏は話す。

一方でAIが示す回答の中で、引用されるだけでは不十分だ。新しい時代のDMOに求められているのは、自身の役割を再構築すること。すなわちマーケティング組織から、AIエコシステムに適応した構造を持つ旅行プロバイダーへ移行することだ。

DMOが可視性を高める方法

SimpleViewとGranicusは、このほどデスティネーション・サイトを閲覧するChatGPT利用者の動きを調査し、AIがDMOのコンテンツを大いに活用している状況を明らかにした。この分析結果によると、例えば5月初めの8日間、旅行者の質問に答えるために、ChatGPTがDMOサイトへ問い合わせた回数は200万件近くに達したという。

さらに可視性を高めるために、DMOができることもある。    

その第一歩について、ブランドUSAのイノベーション担当シニアバイスプレジデント兼最高AI責任者のジャネット・ラウシュ氏は、まずDMOが自分でコントロールできるデータに注力すべきだと話す。そして、「AIは、システムが正確に地域のことを説明できるかどうかを問う。もし、それができるならば、すでに有利な状況といえる」という。

ラウシュ氏は、まずウェブサイトのスキーマ(データの仕様や扱い方を定義した設計図)を整えることから着手するようDMOに提案している。AIはサイトのデザインではなく、コードを読む。DMOサイトのコンテンツに欠けている部分があれば、AIの回答も不十分になってしまうかもしれない。それからDMOサイトには、他では入手できない情報内容を載せるべきだと同氏は言う。

例えば、「グーグルを見れば、住所や営業時間はすでに掲載されている。でも『ゴーストバスターズ』に所縁のあるニューヨークの特定スポットや、ある地区が、隣の地区とは全く違う雰囲気になった理由までは書かれていない」。

つまり「ベスト10」のリスト作りよりも、まだあまり話題になっていない質問に目を向けるということだ。オンライン上で、誰も取り上げていないインサイトを加えるべきだとラウシュ氏は話す。

デスティネーション・コンテンツ・プラットフォーム「Obvlo」の創業者兼CEO、カラム・マクファーソン氏は、ウェブサイトの構造、コンテンツ管理システム、スキーマ・マークアップなど、情報配信の構造が重要だと考えている。さらに広報やバックリンクなど、検索エンジン最適化(SEO)関連の要素も重要という。

コーナー氏は、AIが旅行プランニングに欠かせない存在になるのに伴い、DMOサイトの役割も変わっていくとの見方に賛成する。同氏は、DMOが「デジタル版のパンフレット」から「生きた知識ベース」へ変身していくと見ている。

「こうした見立ては、AIの実際の動きとも一致している。AIがDMOサイトから取り出す情報のうち、半数近い約45%は、観光アトラクション、レストラン、ホテル、ツアー事業者の個別リスティング・ページからになっている」(コーナー氏)と、SimpleviewとGranicusによる分析結果を紹介した。

DMOのウェブサイトは、もはや単なるコンテンツ集ではなく、旅行者からの問い合わせに答えるAIを支え、正確な事実を提供するための中枢になっている。

ただし、信頼を勝ち得るためには、可視性だけでなく、正確さも欠かせない。

適切な回答を作ろうと、AIはウェブ上で情報を探し回っているが、果たして常にベストな回答なのか、疑問視する声もある。

DMOは、第三者がオンライン上で公開する旅行情報をすべてコントロールすることはできないが、地域情報の権威ある情報源としての立場を確立することで、自らの情報がAIに選ばれる可能性を高められるとマクファーソン氏は話す。

「地域について何が事実かを検証できる、権威ある情報源は私たちDMOだ」とラウシュ氏は断言する。

正しく対処することができれば、DMOは「デスティネーション情報のレイヤー」として、旅行者の質問に対するAIの回答を安定させる存在になるとコーナー氏は指摘する。

「デスティネーション・アズ・ア・サービス(DaaS)」への進化

これからのDMOの役割は、AIが地域について様々なレコメンドをおこなう際に、正確な情報を伝えられるようにすることだとラウシュ氏は話す。

コンテンツ制作の仕事は、今後もなくならないが、「変わるのは我々の役割だ。データにも責任を持ち、AIがどこで取得しても正確さが保たれるよう管理する役割も担う」。

ラウシュ氏は、3月に開催されたフォーカスライトのトラベルマーケティングAIサミットで、「デスティネーション・アズ・ア・サービス(DaaS)」というDMOの運営モデルを紹介し、その目指すところを解説した。

また先ごろ、フォーカスワイヤ取材に対し、「DaaS」に必要な2つの要素について持論を展開した。

同氏の構想によると、まず一つ目は、事実確認を担う検証レイヤーで、AIシステムが情報の真偽を地域の権威ある情報源に照会する。二つ目は、コンテンツの可搬性(ポータビリティ)。つまり、DMOサイト内のコンテンツを、機械が読み取れるフォーマットや構造にして公開し、AIが使いやすく整えることだ。

「この構想は、まだ完成形ではなく、進化の途中にある。まさにリアルタイムで、最適な形へと進めているところだ」とラウシュ氏は語った。

同氏はこのコンセプトについて、グーグルのGeneral Transit Feed Specification(GTFS:一般交通フィード仕様)に似ていると話す。GTFSは現在、交通データを公開するためのオープンな共通仕様として世界中で利用されている。

デスティネーション情報についても、同様に、AIが使える共通スキーマが必要だ。

「つまり、AIモデルの基盤となる学習データだけで旅行計画を立てたり、検索機能を使って信頼できるウェブサイトを探したりするのではなく、LLM(大規模言語モデル)がDMOから直接、検証済みで、構造化されたデスティネーションに関するデータや話題を取得するという仕組みだ」とラウシュ氏は説明。モデル・コンテキスト・プロトコル(MCP)やAPI経由で実現は可能だと付け加えた。

一般的なAIでの検索にとどまらず、需要がさらに拡がっていく可能性もある。

自社独自のLLMを開発している旅行会社にとって、信頼できるデスティネーション情報は不可欠だ。また将来的には、消費者も自分のパーソナルAIプラットフォームから、そうしたコンテンツに接続したいと思うのではないかと、ラウシュ氏は見る。

例えば、旅行者がAIに、ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルやスタテンアイランド・フェリーに行く順番を聞いたらどうなるか。

理論上では、AIがリアルタイムの地下鉄データ、混雑状況、最新の天気予想などを参照して回答すると同時に、NYC観光局の情報をもとに、夕日の絶景ポイントや「ゴーストバスターズ」関連情報にも言及することになる。

「これがDaaSで実現できることだ。リアルタイムの実用データと、DMOならではの一人称視点のストーリー、その両方をたった一回の質問で集められる」とラウシュ氏は話す。

コーナー氏は、これから最も大きく変わっていく点は、DMOのウェブサイトの有無よりも、その役割の再構築になると話す。

「DMOサイトは、(地域情報の)入り口というより、すべての根幹にあるシステムとして機能するようになる。例えばAIの回答、ソーシャル・メディアでのやりとり、地図プラットフォーム、会話型プランニング・ツールなどへの情報提供に適した構造を持つ情報レイヤーになる」と同氏は話した。

マクファーソン氏は、DaaSというコンセプトを念頭に、DMOは今後、大きく変化し、適応していかざるをえないとの見方を示した。

マクファーソン氏は 「もはや誰からも必要とされていないのが、地元事業者のリストを載せただけのDMOサイトだ」とし、それはトリップアドバイザーなどのサイトで代用できると指摘する。DMOは、そのような状況から脱して、厳選した情報を集めた信頼できるガイド役へと進化すべきだと話す。

未来の世界でも、ウェブサイトは必要か?これもまだ分からないが、最終的には、DMOが「情報バンク」として機能する可能性をマクファーソン氏は想定する。

「いずれにしても、AIによってDMOの重要度が下がることはない。むしろ、これまで以上に重要になる。信頼の獲得、構造化、配慮を実践することで、DMOはデスティネーションでどのような体験ができるのか、より鮮明に伝えられるようになる。旅行者が予約を入れるより、ずっと前のタイミングに。」。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:DMOs shift toward destination-as-a-service model in AI era

著者:モーガン・ハインズ氏