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台湾観光協会、日本市場の再成長へ地方誘客を強化、王紹旬所長に戦略を聞いた

台湾観光協会は、日本市場で訪台旅行の回復を図るとともに、台北に集中する旅行需要を台中、高雄など中南部へ広げる取り組みを強化している。その鍵と位置づけるのが、日本各地と台湾を結ぶ航空ネットワーク、旅行会社による地方商品の造成、現地の最新情報を届けるBtoB発信だ。東京事務所の王紹旬(オウ・ショウシュン)所長(写真)に、日本市場の現状と今後の誘客戦略を聞いた。

日台間の旅行者数に開き、路線維持にも双方向交流が課題

2025年に台湾を訪れた日本人は約148万人で、日本は台湾にとって最大の訪台市場となった。一方、台湾から日本を訪れた旅行者は前年比11.9%増の676万3400人に達しており、日台間の旅行者数には依然として大きな開きがある。

台湾から日本への旺盛な需要を支えているのが、航空ネットワークの広がりだ。2011年の日台オープンスカイ以降、日本の地方空港と台湾を結ぶ路線が拡大。王氏によると、チャイナエアラインは台湾と日本の13地点、タイガーエア台湾は20地点以上を結ぶなど、地方への直行便も充実してきた。

一方で、需要が一方向に偏れば、地方路線を持続的に維持するうえで課題となる。王氏は「90%が台湾から、10%が日本からというようなアンバランスでは、路線の持続的な維持が難しい」と懸念を示す。

毎年開催される日台観光サミットでも双方向交流のアンバランスは主要なテーマになっている。日本の地方自治体でも、台湾からの誘客だけでなく、就航路線を維持するために住民の台湾旅行を促す取り組みが進んでいるという。

日本市場で訪台需要を増やすことは、単なる送客拡大だけでなく、地方空港を含む日台間の航空ネットワークを支える意味も持つ。

「台北集中」から中南部へ、次の訪台需要をつくる

そのなかで王氏が特に力を入れるのが、日本人旅行者の訪問先を台北から台中、高雄など中南部へ広げることだ。

「私が日本に来てからの方針は、台湾の中部と南部をもっと日本のお客様に知ってもらうこと。特に台湾に一度行ったことのあるリピーターのお客様に、もう一度声をかけたい」と意欲を示す。

日本人旅行者は台北への集中度が高い一方、台湾高速鉄道や地下鉄など域内交通が整い、日本と高雄、台中を結ぶ直行便も拡大している。地方を訪れるハードルは以前より下がっているという。

王氏が再訪を促したいのは、近年のリピーターだけではない。20年、30年前に台湾を訪れ、その後、足が遠のいている層にも目を向ける。日月潭や阿里山など既存の観光地も変化しており、阿里山では従来の茶に加えてコーヒーが新たな地域資源になるなど、以前とは異なる楽しみ方が生まれている。

高雄では、アートやコンサートを都市観光に結びつける取り組みも活発だ。海外アーティストの公演に合わせて街全体を演出し、外国人旅行者に夜市で使えるクーポンを配布するなど、イベントを街なかの回遊や消費につなげている。

SNSを通じて自ら情報を探し、台南や高雄などへ足を延ばす若い旅行者も増えているといい、従来の定番観光だけではない多様な台湾を発信することで、新たなリピーター需要を取り込みたい考えだ。

台湾観光協会 東京事務所の王紹旬所長

旅行会社を地方誘客のパートナーに、「不便さ」を商品価値へ

中南部や地方への誘客で、王氏が重要な役割を期待するのが日本の旅行会社だ。航空会社などと連携し、旅行会社向けに台中や高雄をはじめとする地方の研修・視察を積極的に実施している。

王氏は、旅行会社の担当者でも台北には詳しい一方、地方については「便利さも、近さも、楽しさも、まだ十分に知られていない」と指摘。まず旅行会社自身に現在の台湾を見てもらい、それを新たな商品造成につなげる狙いだ。

個人旅行が拡大するなかでも、旅行会社の役割はなくならないと見る。むしろ、「交通が便利ではない地方は、旅行会社のチャンス」と強調する。個人では訪れにくい場所だからこそ、ツアーなら移動手段を確保し、食事や茶、コーヒーなどの地域体験を組み合わせることができる。

「台湾には面白いところがたくさんある。それをどう旅行商品にするかは旅行会社の専門分野」と王氏。台湾側が素材を提示し、日本の旅行会社が各社の顧客層や強みに合わせて商品化するという役割分担を重視する。

一方、現地では個人旅行者向けに地方交通の整備を進めている。台中から日月潭、高雄から墾丁など観光地へのバスネットワークを整え、外国人旅行者でも地方を周遊しやすい環境を構築している。旅行会社によるツアー造成と個人旅行者向けのアクセス改善を両輪に、地方への流れを広げる考えだ。

BtoB発信を継続、「知ってもらう」から商品化へ

もう一つの柱が、旅行業界やメディアへの継続的な情報発信だ。王氏は、日本市場で活動するなかで、台湾各地では新たな観光素材やイベントが次々と生まれている一方、その情報が日本まで十分に届いていないことを課題に挙げる。

「新しい台湾の情報を集めて、これから何か話題があればメディアに発信することが非常に大切」と王氏。台湾の地方政府や観光関係者とのネットワークを深め、現地の情報をできるだけ時間差なく日本の旅行業界に届ける考えだ。

情報を届け、旅行会社に現地を見てもらい、商品化につなげる。さらに、その商品や地域の魅力を発信することで旅行者を動かす。王氏が進める日本市場戦略は、訪台客数の回復だけでなく、日台間の航空路線を支えながら、旅行需要を台北から中南部、さらに地方へ広げることを目指している。