2028年ロサンゼルスオリンピック(LA28)開幕まで2年を切った。スポーツツーリズムが旅行業界の主要トレンドとなる中、一大イベントであるLA28には日本からも多くの観戦者が訪れると期待されている。こうした中、LA28公式ホスピタリティ・プロバイダーの「On Location(オン・ロケーション)」は、高付加価値なホスピタリティ・パッケージの販売を開始した。単なる観戦チケットにとどまらない「チケット以上の価値」とは何か。同社プレジデントのポール・ケイン氏に、パッケージの詳細と日本市場への戦略を聞いた。
On Locationがオリンピックの公式ホスピタリティを手掛けるのは、2024年パリ、2026年ミラノ・コルティナに続き、LA28が3回目となる。同社は年間760の世界的イベントでホスピタリティ・パッケージの造成・販売をしている。
全48会場、3種類のホスピタリティ・パッケージ
LA28のホスピタリティ・パッケージは2026年4月中旬に販売が開始された。観戦チケットにプレミアムラウンジへのアクセス、飲食などを組み合わせた3種類のパッケージを独占的に提供している。
まず、「LA28 レジャー(Leisure)」。 競技会場の近郊で地元文化を反映した食事やファン向けのイベントを楽しめる、カジュアルなロケーション重視のパッケージだ。
次に、「プレミアム(Premium)」。 競技場内の専用共用ラウンジへのアクセス権、高品質な飲食オプション、世界中から集まるファンとの交流イベントが含まれる。座席は競技を間近で楽しめるプレミアムシートが用意される。
そして、「シグネチャー(Signature)」。 最上位のハイエンドパッケージとして、競技場内ラウンジへのアクセス、トップクラスの飲食に加え、エントランスでの出迎えから座席やホスピタリティスペースまでのエスコートなど、きめ細やかなエンドツーエンドのサービスを提供する。
さらに、これらに加えて「プライベートスイート」も全48の競技会場すべてに用意される。厳選された飲食、プレミアムシート、専属コンシェルジュ、ギフトサービスなどが完備され、希望のシートタイプを指定してチームを間近で応援することが可能だ。大小様々な会場に合わせて、会場内外に最適なホスピタリティ空間が構築される。
LA28には世界206ヵ国・地域が参加すると見込まれている。ケイン氏は「オリンピックのファンやスポーツファンが非常に多いアジアからの観客が多くなるのでは」と話し、日本を含めたアジアでのホスピタリティ・パッケージの販売に期待を寄せた。
熱狂的なファンに応える「Follow My Team」パッケージ
On Locationは2026年7月に、「Follow My Team(フォロー・マイ・チーム)」という新しいコンセプトのパッケージも追加した。ケイン氏は、その背景について、「世界中からスポーツイベントを訪れる人々の動機を『大会の雰囲気を楽しみたい』『特定の競技を見たい』『自国や特定のチームを応援したい』と分析した。Follow My Teamは、この3つ目のニーズに特化したパッケージになる」と説明する。
例えば、日本の体操や柔道、バドミントンなどを応援したい場合、このパッケージを購入することで「予選3試合と準々決勝1試合」の観戦が保証される。万が一、応援するチームが予定通りに勝ち進まなかった場合には、該当試合分の全額返金またはクレジット返金が保証されている。対戦カードの確定前から、自国チームの応援計画を立てられる仕組みだ。
特別感が詰まったホスピタリティ・パッケージ
1兆ドル規模へ成長するスポーツツーリズム、その「経験」へ投資
On Locationは、FIFAワールドカップ2026のホスピタリティ・パッケージも取り扱った。オリンピックのパッケージと同様に、スムーズな会場へのアクセス、多彩な開催都市の食体験、エンターテイメント性、特別感のある体験を柱にパッケージを販売。ケイン氏によると、総販売数は64万件となり、「On Locationがこれまで扱ってきたワールドカップのなかでも記録的な実績となった」という。
ケイン氏は「スポーツツーリズムは、ここ複数年にわたってさらに盛り上がりを見せている」と話す。その背景として、「まず、スポーツをする人自体が増えていること。また、スポーツそのものがグローバル化しているために、世界中でスポーツのファンが増えた」と分析する。
また、コロナ禍を経て、世界の旅行者の価値観が「モノの消費からコト(経験)の消費へと大きくシフトしたことも大きい」と付け加えた。
ケイン氏は、旅行の目的としてのスポーツ観戦は今に始まったことではないという。「松井秀喜選手がニューヨーク・ヤンキースに入団したときは、ニューヨークへの日本人旅行者が増えた」。今は、ドジャースの大谷翔平選手がロサンゼルスに多くの日本人旅行者を呼び寄せている。そのなかで、ケイン氏は「最初は特定のスター選手目当てだったものが、競技全体への関心に広がりを見せている」という。松井ファン、大谷ファンはメジャーリーグ・ベースボール(MLB)のファンとなり、MLBを起点とするスポーツツーリズムに広がりと奥行きが生まれている。
ケイン氏によると、世界のスポーツ目的の旅行消費額は現在の推定6000億ドル(約96兆円)から、数年内には1兆ドル(約158兆円)を超えると予測されているという。
日本市場での信頼構築と旅行会社への期待
ケイン氏は日本市場について「ユニークな市場」と位置付けたうえで、日本市場でのビジネス展開では、「現地に確固たる拠点を置き、地に足の着いたビジネスで信頼関係を築くことが極めて重要」と強調する。現在、VirtuosoやSignature Travel Networkなどのラグジュアリートラベルのコンソーシアムを通じて、日本の旅行会社向けにLA28ホスピタリティ・パッケージの販売を強化している。
日本の旅行会社は、このパッケージを組み込んだ独自のツアーを自由に造成することが可能だ。「LA28の観戦に合わせて、ドジャースタジアムでのMLB観戦、サンフランシスコへの周遊、あるいはアメリカ大自然を巡る旅などしたい日本人旅行者は多いだろう」とケイン氏。旅行会社それぞれの強みを活かしつつ、ホスピタリティ・パッケージを組み込んだツアーの造成に期待を寄せた。
ケイン氏は日本の旅行業界に向けて、「現在提携のあるローカルエージェントはもちろん、直接ネットワークを持たない旅行会社であっても、我々のパッケージを利用したい場合はぜひ直接コンタクトしてほしい。日本の旅行者に最高の体験を提供できるように、最大限のサポートを約束する」とメッセージを送った。
※ドル円換算は1ドル158円でトラベルボイス編集部が算出
取材・文:トラベルジャーナリスト 山田友樹