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日本旅行業協会、「全国DMC」で訪日客と地域をつなぐ流通網を構築へ、旅行会社をハブに地方誘客の新事業

日本旅行業協会(JATA)は、インバウンドの地方誘客を促進する官民連携の複数年プロジェクト「JAPAN, GO BEYOND」を始動した。広域連携DMOや自治体、旅行会社をはじめとする観光事業者と一体となり、特定の広域エリアで商品開発から受入整備、送客・収益化まで、3年かけて取り組む。その成果を、持続可能な観光エコシステムとして地域に定着させる。

第1弾は、東北エリアを選定。毎年1~2地域を選んで並行して事業を進め、取り組み地域を拡大していく計画だ。10年を目安に、全国10の広域連携DMO地域での展開を目指す。

JATA副会長で、訪日旅行推進委員会委員長の山北栄二郎氏は、訪日需要が活況を呈する一方、消費額の低迷や地方分散の遅れ、一部地域への集中など現状の課題を指摘。「数を呼ぶだけでなく、産業として地域振興や高付加価値化へ導く必要がある。旅行会社の集まりであるJATAが旗を振る意味と、果たすべき役割は非常に大きい」と力を込めた。

訪日旅行者と国内地域をつなぐ流通網を構築、旅行会社がハブに

プロジェクトは、定番の観光地を超えて、地方に眠る「未知の宝物」を発見してもらうことをコンセプトに掲げた。官民が一体となって、それぞれの予算や財源などを集約し、3年サイクルで「連携準備」「認知・受入整備」「誘客・刈取(旅行の実現)」を段階的に進める。JATA訪日旅行推進部担当部長の田村晴彦氏は「地域側から海外販売に至るまで、流通の流れを途絶えさせないことがプロジェクトの肝」と強調。単年度事業では難しかった、長期的な市場育成や継続的な販売チャネルの確立といった課題の解決を図る。

東北は日本の国土の18%、全国人口の7.5%を占めるが、2025年の外国人延べ宿泊数は全国の1.7%、観光消費額は1.1%にとどまる。一方で、近年は米ニューヨーク・タイムズ紙や旅行ガイド「ロンリープラネット」で取り上げられるなど、国際的な関心が高まっている。山北氏は「東北は魅力が広域に分散しているからこそ、旅行会社がストーリーを紡ぎ、周遊ルートにつなぐことで真価を発揮できる」と期待する。

主要ターゲットは、滞在日数が長く消費単価の高い欧米豪市場に設定。広域周遊やストーリー性のある体験を求める市場特性があるが、海外の旅行会社からは「日本国内の交通や宿泊、体験を一括して手配できる窓口が分からない」という声が上がっていたという。

そこでJATAは、インバウンドを取り扱うJATA会員などを国内の旅行素材を一括手配できる「全国DMC」とし、海外市場と地域をつなぐサプライチェーンのハブに据えた。海外旅行会社に対して手配窓口を明確化し、通訳案内士や地域資源を組み込んだ高付加価値な周遊ルートを造成・販売しやすくする。同時に、世界の潮流である「デスティネーション・スチュワードシップ(地域住民の生活環境を守り、旅行体験を適切に管理する秩序ある観光)」の確立も目指す。

すでに2026年7月に、福島・宮城での視察商談会を実施。10月下旬には仙台でのセミナーや現地視察、11月には旅行商談会「WTMロンドン」でのプロモーションを予定する。さらに「JATA推奨モデルルート」の策定や、旅行会社の商品造成に向けた支援などを展開する。

旅行会社の役割はDMCへ、ノウハウ共有と品質底上げ

山北氏は、グローバルにおける観光ビジネスの傾向として「世界を見渡すと、旅行会社の役割はよりDMCに寄ってきている」と指摘。日本でインバウンドが急成長するなか「一部の旅行会社だけではDMCの役割を果たしきれない」とし、「地域の細かな特性を捉えるプレーヤーと、海外市場に向けて発信・販売するプレーヤーが連携し、日本全体でDMC機能を強化していくことが将来につながる」と強調した。

観光立国が推進されているなか、インバウンドを扱う日本の旅行会社は一部にとどまっており、ノウハウの獲得が大きな壁となっていた。今回のプロジェクトは各地の旅行会社にとって、インバウンド参入の契機になる。

山北氏は「その狙いもある。より多くの旅行会社に関わっていただくことは、大きな目的の一つ」と話した。一方で「旅行のクオリティを担保した状態で進めていく必要がある」とも指摘。JATAが推進し、現在51社が認証を取得している「ツアーオペレーター品質認証制度(TQJ)」の活性化や「インバウンドマニュアル」の活用を通じ、ノウハウ共有と旅行品質の底上げを両輪で進める方針だ。