関係人口の創出を促進したい(事業者さま)

関係人口に関わる事業者は、旅行会社や宿泊施設、交通機関などにとどまらず、裾野が大きく広がることが予想されます。関係人口として地域を訪れる人たちに対し、事業者はどのようなサービス提供の可能性があるのでしょうか? これまでの観光とは違う発想や切り口の取り組みもいろいろ生まれています。既に始まっている事例から、共通して見られる傾向と発想のヒントを探ります。

関係人口の類型

関係人口の創出には繰り返し地域を訪れ、一定の期間滞在するきっかけや理由があります。2025年、国土交通省は関係人口に関する調査結果を公表しました。この調査は2023年に行われたもので、全国の18歳以上の2割強に当たる約2263万人が特定の地域に継続的かつ多様な形で関わっている「関係人口」であることが分かりました。

国土交通省はこの調査をもとに、関係人口を「訪問系」「非訪問系」で大きく2つに分類しました。実際に地域に訪問しているのが「訪問系」、地域を訪問せず、ふるさと納税や地場産品の購入などを通じて地域と関わるのが「非訪問系」です。

以下は、国交省が分類する観光との関わりが深い「非訪問系」の類型です。

就労型(テレワーク):145万人(約8%)

訪問地域でテレワークを行うパターンで、二地域居住の多くがこの類型に含まれると考えられます。

2023年の調査で「就労型」の現地就労は6%、テレワークは8%とシェアは少ないですが、年間訪問日数が8日以上が約半数を占め、他の類型に比べ日数が多いのが特徴です。

就労型(現地就労):105万人(6%)

現地の企業や農家などで働きながら滞在するパターンです。短期就労者を関係人口として地域につなげる取り組みとして、「おてつたび」が注目され、流行語大賞にもノミネートされました。

直接寄与型:437万人(23%)

地域のプロジェクトに参画したり産業創出に寄与するなど、仕事を通じて関係人口として地域に関わるケースも多いと考えられます。

参加交流型:485万人(約26%)

地域の人との交流が中心で、ボランティアや山村留学などが含まれます。地域の小さな困りごとに手助けしたい人たちをつなげる取り組みとして、注目されているのが岐阜県飛騨市の「ヒダスケ! – 飛騨市の関係案内所」などがあります。

趣味・消費型:711万人(38%)

5つの類型の中で最も地域とのつながり方がゆるやかで、お祭りの参加や農泊、シェア農園などがあります。特に農業関係は種まき、草取り、収穫など季節ごとに行う工程が異なるので、時期を変えた継続的な訪問につながると言えます。

 

航空・鉄道など交通事業者を核に広がる取り組み

近年、関係人口の創出に対して動きが活発なのが、JALやANA、JRなどの航空・鉄道事業者を軸とした取り組みです。繰り返し地域を訪問する関係人口の促進ためには、交通機関の関わりが重要です。

特に積極的なのがJALで、関係人口の創出を推進する新会社を2026年4月に設立したほか、同年2月にはJR東日本と「東日本エリアの地方創生に向けた連携強化」に関する協定を締結し、航空・鉄道の連携による関係人口の創出を目指しています。

ANAは農業体験とマイレージシステムを結びつけた新しいサービスを模索しています。2025年に千葉県多古町で行った実証実験では、参加者のスタイルに合わせた料金体系の農業体験を用意し、ANAのマイルなどでの支払いや積算に対応しました。

増える異業種間のコラボ

関係人口創出のきっかけとして注目される、「おてつたび」。中でもシニア層の人気が高まっていることに着目し、JR東日本は同社のシニア向け会員ネットワーク「大人の休日俱楽部」との連携を行いました。鉄道の旅と就労、交流を組み合わせた新しい旅行モデル創出を図るとしています。

地域創生事業をおこなうイノベーションパートナーズ、衛星放送のWOWOW、日本旅行はタッグを組み、「観光以上、移住未満」をコンセプトとした「複住旅(ふくじゅうたび)」を商品開発しました。イノベーションパートナーズの持つ地域ネットワークと知見、WOWOWのエンターテインメントプロデュース力、日本旅行のツアー運営のノウハウを掛け合わせ、関係人口の創出を目指しています。

共通するのは「観光」の枠組みを超えた発想

これらの事例に共通するのは、これまでの観光の枠組みを超えた発想です。特に、競合相手とされていた航空会社と鉄道会社が連携したことは、一つの象徴的な事例といえます。関係人口の創出について事業者がサービスを考える場合、既存の発想から脱却し、頭を柔らかくして、ゼロベースから始めることが第一歩かもしれません。