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米誌「TRAVEL+LEISURE」などが評価する日本の観光、著名旅行誌の編集者にそのポイントを聞いてみた

今年2月下旬に東京で開催された富裕層をターゲットとするトラベルマート「ILTM (International Luxury Travel Mart)」には、海外から15名のメディアが取材に訪れた。日本人にない“外の目”を持つ彼らは、日本の観光マーケットをどう見ているのか。日本で関心あることは? 著名旅行誌のジャーナリスト2人に話を聞いてみた。


「読者は『本物の日本』を知りたがってる」

TRAVEL+LEISURE誌 コリーナ・クイン氏

「とにかく、東京の地下鉄のクリーンさと時間の正確さには驚いた」—そう話すのは世界的な旅行雑誌「TRAVEL+LEISURE」のトラベル・デジタル・エディター、コリーナ・クインさん。今回が初来日だ。「東京なら街中でも簡単な英語も通じるし不便は感じない。サービスやホスピタリティーも評判通り。東京は旅行しやすいところですね。なるほど、日本旅行を楽しむアメリカ人が増えているのも頷けます」。

2015年の訪日市場では、爆発的に増えた中国を含む東アジアのシェアが約70%を占めたが、実はアメリカからの訪日旅行者がはじめて100万人を超えたのもトッピクスのひとつだった。

TRAVEL+LEISUREの読者の中心は北米のリーダー層。クインさんによると、年間の旅行回数は米国内含み平均23回。そのうち10回は個人的なバケーションで海外旅行も多いという。


「TRAVEL+LEISURE」 コリーナ・クイン氏

「私たちの読者は非常に洗練された旅行者ばかり。私たちは、彼らの旅行をインスパイヤーするストーリーを提供することを心がけています。主にディスカバリーや探訪などがテーマ。彼らにとっても日本は大変興味深いデスティネーションになっています。そして、知りたがっているのは『本物の日本』なんです」。

TRAVEL+LEISUREの2015年の読者投票ランキング「ワールドベストアワード」で、観光都市部門第1位になったのが京都。しかも前年に続き2年連続だ。「今年も日本の都市は期待できると思いますよ」とクインさん。「最近も北海道を特集しましたけど、反応はとてもよかった。日本でのスキーも知名度が上がっています。北海道の雪質やスキー場の質の高さに気づきはじめた読者も多いと思います」。

「個人的には日本の何に興味がありますか?」という質問に、クインさんは間髪入れず、「次はぜひ豪華列車の旅を体験してみたい。日本の地方の魅力が楽しめるでしょうね」と答えた。

「これからは、東京や京都から沖縄の島々や北海道などの地方に外国人旅行者は足を伸ばすと思いますよ。食の興味も寿司から懐石に広がっていくでしょう。日本の観光の魅力は奥深く、ラグジュアリートラベルでもいろいろな体験ができる国ですよね」。


「次は夏の北海道でドライブをしてみたい」

Destin Asian誌編集長 クリス・ヒル氏

「Destin Asian」クリス・ヒル氏

カナダ人のクリス・ヒルさんは、インドネシアのラグジュアリー旅行雑誌「Destin Asian」の編集長。今回で4回目の来日だ。

「初来日は2003年のこと。六本木のグランドハイアットに泊まりました。あの頃は、地下鉄も含めて街中の英語表記もまだ少なかったと記憶していますが、今では随分と整備されてきましたね。標識のデザインも外国人にも分かりやすい」と、日本の受け入れ態勢の進歩に訪日市場拡大の勢いを感じている。

「Destin Asian」の主な読者は、インドネシアをはじめとする東南アジアの富裕層。その読者を対象とした調査では、日本はいつも「行きたい国ナンバーワン」だそうだ。「たとえば、シンガポールでは日本の食やアドベンチャー、特にニセコでのスキーが人気。ジャカルタでも日本の自然アトラクションへの関心が高く、やはりハイキングも楽しめる北海道のブランド力は高いですね」と明かす。

しかし、一方で、知日派のヒルさんは、「2年前にニセコに行きましたけど、外国人スキーヤーが多かった。日本らしさがあまり感じられなかったですね」と残念がる。

ヒルさんの東京での楽しみは食と街歩き。「東京に来るといつも、明治神宮などを散策するのが楽しみ。暑いジャカルタではウォーキングは厳しいから」と笑う。次の来日の機会には「ぜひ夏の北海道でドライブを体験してみたい」と日本旅行への興味は尽きない。

ドライブについては、ラグジュアリートラベルのコンテツとして有望だと話し、「日本政府観光局もフライ&ドライブをもっとPRすればいいと思うんですけど」と提案した。

「PRつながりで言うと・・・」とヒルさん。「日本は物価が高い国というイメージが依然としてある。いまはそんなことはないでしょ。海外でそのイメージを払拭する努力も必要かもしれませんね」と、外の目で日本の課題のひとつを指摘した。そのイメージが拭えれば、日本への旅行を考える層の幅がもっと広がるかもしれない。

ILTMの会場となったコンラッド東京でのインタビューを終えると、ヒルさんは「さて、ランチタイムだ。日本のランチは楽しみだね」と笑い、最後にこう付け加えた。「日本の旅行市場にはunlimited potentiality (無限の潜在性)があると思いますよ」。

取材・記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹