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観光庁、てるみくらぶ問題で再発防止案の検討会、弁済制度と旅行業経営の2視点で議論を開始

観光庁は2017年4月28日、てるみくらぶの経営破綻の影響を踏まえ、再発防止を目的とする「第1回新たな時代の旅行業法制に関する検討会 経営ガバナンスワーキンググループ」を開催した。

冒頭挨拶で観光庁長官の田村明比古氏は、「被害の大きさを鑑みて立ち上げた」と発足の理由を説明。「これまでに明らかになった事実や状況から判断すると、複数の問題点が浮かんでいる」として、被害者や債権額の多さや現行の弁済制度の限界に加え、破綻直前まで行なわれていた現金決済キャンペーン、粉飾決算の疑いなどを列挙し、「幅広い論点で、速やかな検討をお願いしたい」と要請した。

座長に選ばれた一橋大学大学院商学研究科教授の山内弘隆氏は、「昨今の観光ブームで旅行業界の環境、業態が変わってきている。大きな躍動感を削いではいけないが、こういう事案をどう防いでいくか、重要な局面にある」と述べ、ワーキンググループのミッションとして、「政府と業界による再発防止策の検討」と、「再発時に消費者を守る措置の検討」の2点を示した。

夏に取りまとめ案、秋に具体的なアクションか

会議終了後の記者ブリーフィングによると、初会合は状況の共有と論点の収集を目的に行なわれた。まずは議論の前提として、観光庁が(1)弁済制度のあり方、(2)企業のガバナンスのあり方の2つの大テーマのもとに論点を提示(記事の最後に記載)。これに対し、各委員からも同様の意見が述べられ、新たな論点は提示されなかった。

また議論では、弁済制度について、債権者数・債権額が過去に比べて格段に多いことから、「今回の事例は特殊」とした上で、「特殊事例にあわせて変えるのは機能を歪めてしまう」との意見が上がった。現行の弁済制度では、これまで8割程度の旅行業倒産などの事案で100%の弁済がされており、「通常のケースでは機能している」という観点での意見だ。

一方で、「これを踏まえながらも弁済制度を変える場合は、事実関係の把握が必要」や、弁済制度に限らず「行政や旅行会社、業界団体のぞれぞれで取り組むべきことを考えるべき」など、制度の見直しに対する意見も述べられたという。

ブリーフィングを担当した観光産業課参事官の黒須卓氏は、「今までの制度がすべて機能しているなら、ワーキンググループを開催する必要がない。委員の知恵をいただき、新たな制度設計や制度の改正が必要かどうか、予断を持たずにやっていきたい」との考えを示した。また、旅行会社の経営状況の把握については、透明性を高めるための制度設計なども検討していく考えだ。

ワーキンググループの委員には、日本旅行業協会(JATA)や全国旅行業協会(ANTA)などの業界団体のほか、保険会社や銀行、クレジット業界団体なども招請。オブザーバーとして、消費者庁も参加する。先ごろ、結成されたてるみくらぶの被害者の会には、同会からの要請があれば意見を聞き、議論に反映する考えがあることも示した。

次回のワーキンググループは5月中を予定。今後4回~6回程度を開催し、夏までに取りまとめ案を出す考え。それを踏まえて秋ごろには、省令や通達、業界に対する呼びかけ、広報などいずれかの形式で、行政側からの発信がなされる見通しだ。

参考記事>>

【検討や議論の前提として観光庁が提示した項目】

1.弁済制度のあり方

2.企業ガバナンスのあり方