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宇宙旅行に向けカウントダウン、宇宙開発の偉業が続いた2020年から読み解く

写真:AP通信

世界中が前例のない困難に直面した2020年。そのなかでも、宇宙開発の目覚ましい業績は将来への希望を示してくれた。AP通信が世界の状況を取りまとめてレポートしている。

アメリカから打ち上げられる有人ロケットとしてはほぼ10年ぶりに「スペースX」が宇宙に飛び立ち、アメリカ、中国、UAEの3カ国が生命の痕跡を探しに火星に向けて探査機を打ち上げた。中国は月面着陸に成功し、サンプルを採取。日本の「はやぶさ2」は、小惑星リュウグウから砂粒状のサンプルを地球に持ち帰った。

2021年も偉業は続くだろう。2月にはアメリカの探査ローバー「パーサヴィアランス」が火星に到着し、乾燥した地殻にドリルで穴を開け、サンプルを採取する計画。秋にはハッブル宇宙望遠鏡の後継機「ジェームズ・ウェブ宇宙望遠鏡」が打ち上げられる。

ヨーロッパとロシアは、技術的な問題と新型コロナウイルスの影響によって、火星探査機の打ち上げを2022年まで延期することを決めたが、日本のH2ロケットで打ち上げられたUAEの「HOPE」と、中国が「長征5号』ロケットで打ち上げた「天問1号」の火星探査の冒険は続くだろう。

こうした宇宙開発のマイルストーンが続く中、宇宙旅行もそう遠い話ではなくなってきた。

イーロン・マスクが開発した「スペースX」は、民間企業として初めて、2020年5月に2人のテストパイロットを乗せて初めての打ち上げに成功。11月にも野口聡一氏ら4人を乗せた「スペースXドラゴン」を国際宇宙ステーション(ISS)に送り込んだ。

ボーイングも、2019年12月にソフトウェアのトラブルに見舞われたテスト飛行のあと、再びカプセル型有人宇宙船「スターライナー」の開発を加速。2021年夏にも宇宙飛行士をISSまで運ぶと見込まれている。

スペースXは、ドラゴン・カプセルに搭乗する民間人を増やす計画だ。来年後半には、ヒューストンのAxiom Spaceとの契約で、初めての民間資金による打ち上げを予定している。この打ち上げに搭乗することになっているのは、元NASAの宇宙飛行士でAxiomのマイケル・ロペス・アレグリア氏とイスラエルの実業家アイタン・スティッべ氏。スティッべ氏は、2003年のスペースシャトル「コロンビア」の事故で亡くなったイスラエル初の宇宙飛行士イラン・ラモン氏の親友だ。

民間宇宙船の開発はスペースXがリードしている。Amazon.comの共同創設者でありCEOのジェフ・ベゾス氏の「ブルーオリジン」とヴァージン・グループ会長のリチャード・ブランソンの「ヴァージン・ギャラクティック」は、まだテスト飛行の段階で、実際に顧客を乗せて打ち上げるまでには時間がかかりそうだ。

トランプ大統領は、2024年までに、半世紀前のアプロ計画以来となる有人月面着陸を目指すと表明した。NASAも「オリオン・カプセル」を搭載する新型ロケットを2021年11月に打ち上げる計画を諦めていない。

ジョー・バイデン次期大統領は、月面着陸計画をどのようにするのか、まだ明言していない。