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旅行業団体が新春講演会、「早期の国際往来再開」へ国への要請を継続 ートラベル懇話会

トラベル懇話会は2022年1月7日、「ウイズコロナ時代の観光を展望」をテーマに44回目の新春講演会を開催した。今回は2年ぶりにリアルでの開催。官民の旅行業界トップが観光産業の現状と展望を語ったほか、日本経済団体連合会(経団連)ソーシャル・コミュニケーション本部長の正木義久氏が「社会経済活動の活性化に向けてーコロナ禍を超えてー」をテーマに講演した(正木氏の講演内容は後日詳報する)。

トラベル懇話会は旅行会社や航空会社・ホテル・ランドオペレーター・保険会社などの経営者から構成される旅行業界団体。

「アメリカやイギリスは経済止めていない」―原会長

冒頭で挨拶に立ったトラベル懇話会会長の原優二氏は、「この2年間、売上が立たずにキャッシュアウトが続き、厳しい状況に置かれた経営者が大半だった」と旅行業界の現状を吐露。雇用調整助成金や他産業への参入を促す事業再構築補助金といった国の施策を評価する一方で、「早期の国際往来再開に向けた私たちの声を届ける努力を継続したい」と強調した。

急拡大するオミクロン株については懸念を示しながらも、米疾病対策センター(CDC)が先月27日の指針決定でコロナ陽性者と接触者の隔離を10日間から5日間に短縮したこと、イギリスが規制を強化せずに学校と企業活動を継続させていることなどに触れ「世界では新規感染者数ではなく、重症者数や死者を減らすことが基準になっているのに対し、日本は再び新規感染者数が話題になっている」と危惧した。

そして、経済活動との両立への強い期待を訴えるとともに、「2022年は私たち観光産業が本当に進んでいけるか、あるいは大きく転換するのか。結論が出る年になる。みなさんとともに、心して前に進んでいきたい」と参加者に呼びかけた。

トラベル懇話会会長・原氏

「新たな交流市場拡大に意欲」―池光観光庁審議官

講演会開催に祝辞を寄せた観光庁審議官の池光崇氏は、「今年1月以降の旅行についてキャンセルが相次いでいると報告を受けている」とコロナ感染再拡大による影響に言及。雇用調整助成金の特例措置等が2022年3月末まで延長が決定したことに触れつつ、「今後についても、状況に応じて関連省庁と連携し、適切に対処していきたい」と述べた。

ただ、水際対策については「オミクロン株の状況を踏まえ、今後も継続する」とし、国内旅行の県民割のさらなるブロック単位への拡大、GoToトラベル再開も「感染状況を見極めたうえで、専門家の意見も踏まえて、安心安全を前提に実施することになる」とした。苦しい状況にあるなか、2022年は「ワーケーション」や「第2のふるさと」事業といった新たな交流市場拡大や、デジタル化、生産性向上への取り組みに意欲を示した。

観光庁審議官・池光氏


「トンネルの出口は目前」髙橋JATA会長

また、日本旅行業界(JATA)会長の髙橋広行氏は、昨年末に旅行業の廃業が1000社を超えたという報道に触れ、「全国の約1割の旅行会社が姿を消すなか、ギリギリのところで踏ん張っている各社の経営魂に心から敬意を表したい」と話した。オミクロン株が感染を拡大させている一方で、ワクチンと経口治療薬の二重体制が進んでいることから、「トンネルの出口は目前。何とか耐え抜いてトンネルの先に広がる景色を見に行きたい」とした。

アフターコロナの観光産業については、「少子高齢化、過疎化が進行する地域社会で必要とされる成長産業」とあらためて強調し、「奇しくもコロナ禍で、旅行業再生を考える機会を得た。新たな時代にふさわしいツーリズムを実現するためには、『協調』『共創』が欠かせないテーマになる。たとえば、システムもこれまでのように各社がそれぞれ投資するのではなく、ともに活用する共通インフラのうえでそれぞれのヒューマンタッチの力を発揮して競い合えばいいのではないか」との考えを示した。

そのうえで、「2022年こそは感染状況に一喜一憂し、ただマーケットの回復を待つのではなく、自ら観光復活の扉をこじ開ける気概を持って取り組んでいきたい」と力を込めた。

JATA会長・髙橋氏

なお、コロナと付き合いながら社会活動をいかに活性化させるのか。さまざまな角度から詳細なデータを用いながらヒントを示した正木氏の講演内容は後日詳報する。