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旅行者が求めるのは柔軟性と付帯サービス、「顧客中心のデジタル化」から考えてみた【外電】

旅行者が欲しいものと必要なものにフォーカスすること。その際、使い勝手が良く、デジタルファースト戦略に合致したソリューションを使うこと。この2点は、世界がパンデミック禍から抜け出し、自由を取り戻していくなかで、旅行経営トップが真っ先にやるべきことだ――。

このほど、オンラインレンタカー予約のカートローラー社が開催した討論会「復興の先を見据えて:旅行変革2022」では、様々なテーマが議題にのぼった。冒頭に挙げた内容は、そのうちの一部だ。

イベント開催と同じタイミングで、同社は「進化する旅行:カートローラーがまとめた消費者トレンド2022」と題するレポートも公開。米国および英国の旅行者2000人を対象に、2021年11月末から12月初めにかけて実施した調査結果を明らかにした。

同レポートによると、旅行者からの要望が高かったのは「フレキシビリティ(柔軟性)の強化」。フライト保険には、パンデミック以前より多く払ってもよいとの回答が全体の73%を占めたほか、回答者の36%が、旅行を検討する際の最も大きな心配として、フライトや予約がキャンセルになるリスクを挙げた。

パネルディスカッションに出演したホッパーの最高経営責任者(CEO)、フレッド・ラロンダ氏は、こうした状況は新しい収益源を開拓するチャンスだとし、消費者のストレス軽減につながる決済関連のアンシラリー商品(付帯商品)を提供するべきだと話す。

「今も昔も消費者というのは、よりよい商品であれば、今までより高くても購入してくれるものだ。求められているのは、確実性と万一の際の補償、予測可能な状況。これを担保できれば、追加で40ドルぐらいの負担は受け入れてくれる」と同氏。「これはパンデミック禍で我々が学んだことのなかで、最も重要なポイントだと思う」。

イージージェットの最高コマーシャル責任者、ソフィー・デッカース氏も同じ意見だ。同社ではフライト変更の手数料を撤廃したが、それでもアンシラリー売上は増えていると言う。

「座席指定など、確実性を担保するサービスは、今の状況だからこそ必要とされている。当社のアンシラリー(付帯)売上は、2019年と比べても大幅に伸びている」(同氏)。

「これが長期的なニーズとして、どこまで定着するのか、注目しているところだ。少なくとも現段階では、この傾向がしばらく続くと見ている」と話した。

ユナイテッド航空のスコット・カービー最高経営責任者(CEO)は、同社のアンシラリー戦略について、利用客を理解し、そのニーズに応えるという大局的な目標に即したものであるべきだとしている。

「顧客が本当に欲しいものにフォーカスできるように変わろうと努力してきたが、充分ではない。私見だが、航空会社のカスタマー・フォーカスは、米国でも世界でもまだ足りない」とカービー氏は話す。

「アンシラリーに関しても、罰則的なものではなく、もっと顧客側の視点から求められているものを考えるように努力してきた。そもそも航空会社のアンシラリーには、罰則的な内容が多すぎる。そうではなく、何かいつもより良いものを、という顧客ニーズに応えたい」(カービー氏)。

直販とロイヤルティ最重視は変わらない

さらにカービー氏は、航空会社がより顧客中心の思考を持つことが、第三者を介するより便利な直販サービス提供につながるとの考えを示した。

「例えば、ユナイテッド便を直接予約すると、特にフライト遅延が発生した場合などに入手できる情報量は格段に充実している。直販の利用客については、航空会社が連絡先などあらゆる情報を持っているので、フライト変更など、さまざまな代替案を提示できる。一方、そうでない旅客については情報がなく、連絡したり、状況を説明する手段がない。エクスペディアにメールを送ることはできるが、エクスペディアは何もしない」(同氏)。

「旅行からストレスをなくすために、当社ができることは全てやりたい。その多くは、流通戦略ではなく、コミュニケーション関連。顧客にとって良いことをするための戦略が中心になる。究極的には、直販を利用した人の方が、良いサービスが受けられるようになる」。

またカートローラーの調査レポートでは、ロイヤルティプログラムは価値あり、と考えている人が多く、回答者の86%は、少なくとも1つのロイヤルティプログラムに入会していた。さらに同20%は、旅行を計画する時はマイル獲得やリワードが利用可能かどうかを最も重視していると答えた。

ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)のショーン・ドイルCEOは、ロイヤルティプログラムの未来について、BAにとって「今まで以上に必須のもの」になると考えている。同氏は、「ロイヤルティを通貨のように使える」商品やサービスが増え、BAのホリデイ・パッケージ商品とロイヤルティプログラムを組み合わせて利用することが可能になるという。

「これまで自社プラットフォームには多くを投資しており、提供する商品内容も増えている」とドイル氏。

「ロイヤルティは、顧客との信頼関係を深めてくれる。だがそれだけではなく、デジタル体験のあらゆる場面でも活用できるようになれば、リピート需要の獲得や利便性アップにも役立つ。将来的には、リワード換算に使うマイルやポイントなどの『ロイヤルティ通貨』が現金のように、様々な消費活動で使えるようになると予想している」(同氏)。

ホッパーのラロンダ氏は、航空各社のロイヤルティプログラムは非常によくできていると話し、「ユナイテッドやBAを常に利用しているような人を、ホッパーに呼び込もうとは考えていない。どんなに時間をかけても無駄だと思うから」。だが、ホッパーや旅行事業者が実効性のあるロイヤルティプログラムを作る方法もあると話し、まずデジタル・ウォレット機能を提供し、これを使ってユーザーが(ロイヤルティ通貨を)獲得・消費したり、各種リワードと交換したりできるスムーズな流れを作るのが得策との考えを示した。

「旅行者が高性能コンピューターをポケットに入れて持ち歩き、様々な予測情報や通知も随時、受け取れる時代になった。ところが、現金もアプリ内に入れて持ち歩き、購入額に応じて獲得したボーナスもそこで受け取れるようにする、といった仕組み作りについては、まだ手付かずの状態、というのが私の見方だ。トラベル分野でも、それ以外でも、こうした便利なアプリが欧米市場にはまだないので、非常に期待できる分野になるはずだ」(ラロンダ氏)。

「当社がこの分野へ参入するのに注目しているのは決済。取引の両側面から価値を提供できること、例えば、利息を支払えないかと考えている。ホッパー利用客の70%はデビットカードを支払いに使っており、銀行には貯蓄用の別口座を作っている。これと同じような仕組みを作り、パートナーであるサプライヤー企業と相互利用できるようにしたら、どんな展開が可能になるだろうか」(同氏)。

ユーザー・フレンドリーで、モバイル・ファーストであることがどれほど重要か、前述の調査結果からも分かる。同レポートでは、「消費者が求めているのは、シームレスなモバイル対応インフラが使えるようになり、旅行体験を管理しやすくなること。旅行はよりシンプルに、リワードはより充実できた企業が、ロイヤルカスタマーからの支持を得ることになる」と結んでいる。

また、今後3~5年間の旅行産業における最大の課題について、サステナビリティの他に何があるか?との予測では、複数のパネリストが、真っ先に投資するべきこととしてモバイルとデジタルソリューションを挙げた。

IATAのウィリー・ウォルシュ事務総長は「デジタル利用に対する許容度や評価は、以前よりも格段に向上している。旅行中、様々な書類を提示しなければならない状況を久しぶりに体験し、大変な思いをした人も多いだろう」と指摘する。

「顧客の立場になって、デジタル体験をよりよいものに改善しようと、すべての航空会社、そしてあらゆる産業が力を入れるようになる。人は顔を見ながら話し、ビジネス交渉を進めたいものだが、これをデジタル活用で手軽に実現できたらよい」(ウォルシュ氏)。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:CUSTOMER-CENTRICITY, DIGITIZATION ARE EXEC PRIORITIES

著者:ミトラ・ソレルズ氏