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日本旅行業協会がハワイへ使節団、今夏のツアー再開へ、ハワイ州議員が日本政府に注文も

日本旅行業協会(JATA)は、2022年4月3日にハワイへ視察団を派遣した。現地ではハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)をはじめハワイの要人と会談。4月1日から日本の感染症危険度レベルが3から2に引き下げられ、募集型企画旅行の造成・販売も可能になることから、両者は、この視察を海外旅行再開に向けた第一歩と位置づけ、今後のハワイ旅行再開に向けて協力していくことを確認した。

JATAの高橋広行会長は、ハワイ上下院議長との会談で、危険度レベルが下がったことを受けて、「暗いトンネルの先に光が見えてきた。会員各社は、今夏に向けてハワイの商品造成を進めていくだろう」との考えを示し、ハワイが海外旅行再開の先陣を切るとの見方を示した。

一方、HTAジョン・デ・フリース局長兼CEOは、アフターコロナの観光政策について説明。「ビジネスの促進には、文化の相互理解も必要。アロハスピリットは、ハワイのアイデンティティとして日本人旅行者に尊重してもらっているが、今後はそれに加えて、相手を思いやる『マラマ』も伝えていく。日本人旅行者にはそのスタンダードになって欲しい」と話し、HATおよびハワイ州観光局(HTJ)が推進するレシポンシブル・ツーリズムをもとに、観光による経済活性化と地域コミュニティの生活の質の向上とのバランスをとっていく姿勢を強調した。

ハワイ州のロナルド・コウチ上院議長は、ハワイの旅行市場の現状について説明。「米国本土からの観光客を中心に旅行者数は回復傾向にあるが、消費額はそれほど多くない。ハワイの経済にとっても、旅行者の質という面でも、日本人旅行者の回復に期待している」とコメント。さらに、ハワイは全米でも最も感染者数、死亡者とも少なく、ワクチン接種率も高いことから、「(感染の危険性について)米国本土とハワイとを一緒にしないでほしい」と日本政府にも注文をつけた。

HTJ日本支局長のミツエ・ヴァーレイ氏によると、米国からメキシコやカリブ海への海外旅行には依然として制限があることから、その需要が国内旅行のハワイへシフト。これまで多かった西海岸だけでなく、東海岸からのファーススタイマーが増えており、旅行者の質がパンデミック前とは変わっているという。また、2021年のハワイへの日本人渡航者数はわずか約2万4000人にとどまったものの、消費額は900万ドル(約11億円)に及んでいることから、現地観光事業の日本市場復活に対する期待は大きいと話す。

一方、ハワイ州のスコット・サイキ下院議長は、ハワイと日本との歴史的な繋がりに触れたうえで、「双方向の観光は外交のひとつ。これまで以上に強い関係を築けるように、できるだけの支援をしていきたい」として、日本重視の姿勢を示した。

(左から)在ホノルル青木豊総領事、コウチ上院議長、サイキ下院議長、HTAフリース局長兼CEO、JATA高橋会長

JATA、2023年に渡航者数はコロナ前に回復か、現地消費額を注視

このほか、JATAはハワイ側にアウトバウンド再開へのロードマップや海外旅行のためのガイドラインなどをハワイ側に説明。そのなかで、ハワイ市場の数値目標について、新型コロナウイルスの感染状況や水際対策の緩和状況を前提としたうえで、2022年の渡航者数は2019年比40%の60万人強、消費額は2019年比50%の11億ドル(約1350億円)強と設定。2023年には、渡航者数が2019年とほぼ同じ150万人強、消費額が2019年を10%上回る24億ドル(約2950億円)に達すると想定している。さらに、1人1日当りの消費額を265ドル(約3万3000円)程度とする目標を掲げた。

そのうえで、コロナ前までは各旅行会社の目標値は旅行者の人数に重点が置かれる傾向があったが、今後はハワイにおける消費額という点を意識していく必要があり、質と価値の高い送客にちからを入れていくことが重要との認識を示した。

※ドル円換算は1ドル123円でトラベルボイス編集部が算出

トラベルジャーナリスト 山田友樹