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米国の旅行需要の低迷で、LCCは打撃、大手航空会社は利益を維持、カギは富裕層の需要増と会員プログラム

写真:ロイター通信

米トランプ大統領が引き起こしている貿易戦争による米国への旅行需要の落ち込み、その煽りを米国のLCCが受けている。サウスウエスト航空、フロンティア航空、ジェットブルー航空は、いずれも第1四半期の営業利益率が大幅に減少。デルタ航空とユナイテッド航空が、消費者需要の低迷にもかかわらず、利益率を維持したのとは対照的だ。

今後、経済成長の減速とインフレ率の上昇の可能性が高まるにつれて、LCCと大手航空会社の利益率格差はさらに拡大すると予想されている。

ある航空アナリストは、富裕層旅行の需要の急増とロイヤルティ・プログラムの価値向上が、大手航空会社に有利に働いていると分析する。

LCCは、利益率を維持するために、供給席数を削減。一方、ユナイテッド航空やデルタ航空は、増便をおこな、より低い運賃を提供している。大手航空会社は、供給座席不足による顧客流出を防ぎ、競合するLCCから顧客を奪う戦略に取り組んでいるようだ。

富裕層旅行は増えており、デルタ航空、ユナイテッド航空、アラスカ航空は、この機会を捉えるために大規模な投資を実施している。デルタ航空の旅客収入に占める富裕層旅行の収入割合は、2019年の35%から41%に拡大した。

一方、大手航空会社のビジネス旅行需要への依存度は低下。ユナイテッド航空は4月、旅客収入に占める法人旅行の割合がパンデミック前の水準を大きく下回っていると発表した。アラスカ航空のシェーン・タケットCFOは、ロイター通信に対して「プレミアム志向の変化は、今後も持続するだろう」と語った。

新たな収入源確保で戦略を見直すLCCも

LCCも富裕層旅行者の取り込みを試みているが、その投資とサービスは大手航空会社と比べて見劣りする。LCCはそもそも価格に敏感なレジャー客をターゲットとしているが、その客層の支出は低くなっている。

米国の各航空会社は国内線で苦戦しているが、大手航空会社は長距離国際線の旺盛な需要に頼ることで利益率を維持。ユナイテッド航空は、有効座席マイル当たり売上高が、すべての国際市場で第2四半期に増加すると予測している。

そのなかで、ロイヤルティ・プログラムが大きな武器になっている。顧客の支出が増えるほどマイルが貯まり、クレジットカード発行銀行が航空会社に支払う金額も増える。デルタ航空が第3四半期にアメリカン・エキスプレスから受け取った報酬は、旅客収入のほぼ5分の1に相当した。

一方、LCCは、営業費用の増加によって、新たな収入源の確保が迫られ、乗客に優しい独自サービスの一部を放棄せざるを得なくなっている。サウスウエスト航空は、手荷物料金無料サービスを廃止した。

それでも、フロンティア航空のバリー・ビッフルCEOは、大手航空会社がLCCを上回る業績を上げるという見方を一笑する。ビッフル氏によると、景気後退は企業旅行に影響し、法人顧客は乗り換えを迫られ、大手航空会社は打撃を受け、格安航空会社の業績は上昇すると主張している。

※本記事は、ロイター通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。