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グーグルのAI進化で旅行予約の未来に起きる変革、直接予約への好機、「インスピレーションから予約まで」一気通貫【外電】

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先ごろ開催されたGoogle開発者カンファレンス 「I/O」の基調講演は、従来の検索エンジンの検索結果から人工知能(AI)を活用した未来へと世界は急速に移行していることがはっきりと分かるものだった。

グークルのサンダー・ピチャイCEOは、同社のAI「Gemini」の利用が過去1年間で爆発的に増加したことを明らした。Geminiアプリの月間アクティブユーザー数は、現在4億人を超え、700万人の開発者がGeminiを使って開発を行っているという。これは昨年の同時期と比べて5倍に相当する。Geminiエコシステムは現在、月間9.7兆トークンを処理しており、これは2024年の50倍に当たるものだ。

旅行業界も、I/Oでの発表によって起こっている変革を認識し、迅速に行動する必要がある。

基調講演後、GoTo Hubのダン・グラナスCEOは、SNSに「AIの回答によって、どのコンテンツが見られ、どの商品が宣伝され、何が予約されるかが決まるようになってきた」と投稿した。

また、Automate.travelのクリストフ・バロンCEOは、SNSに「旅行業界は、オンライン予約の登場以来、最大の変革期を迎えようとしている」と投稿した。

Google開発者カンファレンス「I/O」では、旅行業界にも劇的な変化をもたらす発表が次々と行われた。

AIモード、検索を根本的に再定義

ピチャイ氏は、検索を根本的に再定義するAIモードを発表。これは、検索結果に追加された機能の一つで、ユーザーの質問に対して検索エンジンではなくAI(Gemini)が1つの答えを生成する。開発者との研究・テスト環境を経て、米国で展開された。

「AIオーバービュー(生成AIによる要約)は、15億人以上のユーザーに利用され、現在200カ国と地域で展開されている。AIオーバービューを利用するにつれて、ユーザーは検索結果に満足し、より頻繁に検索するようになっていることが分かっている」とピチャイ氏は話す。

グーグルの最大市場である米国やインドでは、AIオーバービューが表示される検索の種類が10%以上増加し、この増加率は時間とともにさらに高まっている。

AIモードによって、ユーザーはより長く複雑な検索を行うことができる。検索では「すべて」「画像」「動画」といった通常のタブの横に「AIモード」のタブが表示。このタブをクリックすると、検索を開始するためのチャットウィンドウが表示される。上位10件のリンクは廃止され、グーグルが「真実」と考える一つの情報源に置き換えられる。

ディープサーチ、より個人に最適化した回答

今夏には、「ディープサーチ(Deep Search)」を追加する予定だ。これは、AIモード検索に個人ごとの文脈を追加するもの。具体的には、GmailやGoogleドキュメントなど、ユーザーが利用するグーグルの回答を提示する。

ディープサーチによって、グーグルは、OpenAIなどの他のAIプロバイダーや、広告ネットワークのCookieや検索履歴を活用して既にパーソナライゼーションを導入しているOTAと肩を並べることになる。

エージェントAI、ユーザーの代わりに価格を監視

グーグルがコードネームは「Project Mariner」として開発してきたエージェントモード。ウェブと対話して物事を成し遂げる機能を備え、ユーザーに代わって行動を起こすように設計されている。

現在、開発者向けにGemini APIを通じて提供されており、グーグルは今夏にもGemini、Chrome、Google検索を通じて提供を開始することを明らかにした。

事例としては提示されたのは、ファッションのオンラインショッピングに特化した「エージェント・チェックアウト機能」。例えば、ドレスを探していたが、購入を諦めたとすると、エージェント・チェックアウト機能が価格を監視し、価格が下がればワンタップで購入できるようにユーザーを促す。価格追跡による購入支援だ。

この機能の旅行分野への可能性は明らかだろう。

旅の「インスピレーションから予約まで」一気通貫に

AIモードでは、ディープサーチがユーザーの検索履歴を記憶する。例えば、テキサス州オースティンへの2日間の完璧な旅行プランを検索することから始め、その後、バスツアーや市内のレストランのおすすめを尋ねて、検索内容を絞り込むことができる。対話的に深堀していく旅行の相談相手だ。

検索結果には、Google TravelとGoogle Things to Do(タビナカ検索)の検索結果も組み込まれる。これらのリンクをクリックしても、外部サイトには遷移せず、AIモード内に表示される。右側の列に適時、オーガニックリンクが表示されるが、将来的には有料リンクになることは明白だろう。

今夏、この機能にエージェントモードが組み込まれれば、同じウィンドウから予約まで完結できるようになる。空室状況や価格にアクセスできないという現在の大規模言語モデルの制限がなくなることになる。予約はAIモード内で行われるため、サプライヤーにとっては直接予約を促進する絶好の機会となるはずだ。

また、ディープサーチによって、ユーザーは、信頼できる情報を見つけるためにプロの記事やブログを探す必要がなくなるかもしれない。つまり、サプライヤーやエージェント自身が信頼できる情報源となるチャンスがある。

いち早く対応を

このほか、カンファレンスではGoogle Meetのリアルタイム音声翻訳の多言語対応や、カメラ、マイク、スピーカーを搭載したAI対応メガネを年内に投入するなどのアップデートも発表された。

ピチャイ氏は、今回のプレゼンテーションの中で「AI」という言葉を92回、「Gemini」という言葉を95回使った。そして最後に、「AIの可能性は、まさに最大級のもの」と語った。旅行業界は、このことをいち早く理解し、対応する必要がある。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:THE IMPACT ON TRAVEL FROM GOOGLE I/O 2025 LAUNCHES

筆者:Mark Frary氏