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反ツーリズムの抗議活動で、観光客に向けられた「水鉄砲」、その背景と経緯、デモ参加者の本音とは?

写真:AP通信

スペイン・バルセロナで、大量に押し寄せる観光客に対する不満の象徴となった「水鉄砲」。そこには、どのような背景や経緯があったのだろうか。

きっかけは、バルセロナを拠点とする極左活動家グループが2024年7月に観光産業の「脱成長」を訴えた集会だ。夏の暑さをしのぐために水鉄砲を持参してきた参加者が、ふざけて互いに撃ち合いを始めたのだ。主催者の一人アドリアナ・コテン氏は、AP通信に対して、「水鉄砲を持ってきた人のただの悪ふざけだった」と振り返る。

その後、一部の人々が水鉄砲を観光客に向けた。その映像は世界中に広まり、反観光運動の宣伝効果を大いに高めることになった。4月には、同じグループがバルセロナで停止した観光バスに、再び水鉄砲を向けた。

ある日曜日、約1000人の人たちが外国人に人気の高級ショッピング街でデモ行進を始めたが、サグラダ・ファミリア教会に近づこうとしたところで警察に止められた。デモ参加者たちは、道中で何も知らない観光客に水をかけ、スローガンを唱え、抗議のプラカードを掲げていた。プラカードの一つには、「観光客が1人増えれば、住民が1人減る!」と書かれていた。

ホテルのドア、街灯、屋外カフェのテーブルには、水を噴射する水鉄砲のステッカーが貼られ、その周囲には英語で「観光客は家に帰れ!」と書かれていた。

とはいうものの、バルセロナの抗議活動参加者の中で、水鉄砲を持っていたのはごく少数。水鉄砲を持った人の多くは、空に向けて、あるいは互いに撃ち合っているだけだった。ある父親は、赤ちゃんをリュックサックに乗せ、水鉄砲を手にしていた。

抗議活動の現場以外では、バルセロナの住民は水鉄砲を所持したり、観光客を狙ったりしていない。多くの人々は、地域経済の柱である観光産業を依然として支持している。

デモ参加者の本音は

抗議活動に参加したルルデス・サンチェスさんと10代の娘は、それぞれ水鉄砲を手にしながら、「この水鉄砲は誰かを傷つけるためではない」と話し、「観光産業が、われわれの国をテーマパークに変えようとしていることに、私たちがうんざりしていることの象徴なんです」と続けた。

46歳の建築家ローレンス・ショッチャーさんは、水鉄砲を持つことで自分たちの活動にもっと注目が集まることを期待しているとし、「これは当局へのメッセージだと思います」と話した。

デモ参加者が持っていたのは、ポンプ式の水鉄砲ではなく、それほど遠くまでは水が届かない昔ながらの安っぽいものだった。水をかけられた観光客の中には、気温が30度近くまで上がる日には爽快だったと平然と受け止める人もいた。

一方で、デモでスプレーをかけられた1人のノラ・ツァイさんは、「少し怖くて悲しかった」と話した。「観光客は帰れ!」というコールも事態を悪くした。それでも、台湾から来た彼女は、「バルセロナは今でも好きです。親切な人がたくさんいます」と付け加えた。

※本記事は、AP通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。