
カナダ・アルバータ州は、サステナビリティを柱とした観光開発を強化している。同州は昨年、年間を通じた観光開発に向けた新たな「オールシーズン・リゾート法」を可決。現在、その法に基づいた観光施策を進めている。その一環として、先住民観光の開発にも注力。アルバータ州のキーコンテンツとして日本市場でも訴求を強めていく考えだ。
オールシーズン・リゾート法とは、アルバータ州を世界的に有名な観光地にすることを目的に定められたもの。州内のオールシーズンリゾート開発専用に区画された公有地を「オールシーズン・リゾートエリア」という新たな区分で開発を進めている。このほど来日したアルバータ州観光公社CEOのデービッド・ゴールドスティーン氏は、トラベルボイスのインタビューに対して「指定区域では、二酸化炭素排出ゼロ、公共に配慮した水循環などに加えて、先住民の観光への参加も含め持続可能なリゾート開発を進めている」と説明した。
また、アルバータ州はカナディアン・ロッキーへの観光客の集中が見られることから、州内の指定10ゾーンでの観光開発を通じて、観光客の分散化も進めている。過去3年間で計6500万カナダドル(約69億円)を観光開発に投資。さらに、民間との共同投資なども活用し、バンフ、レイク・ルイーズ、ジャスパーなどの定番コースの周辺の開発を進めてきた。ゴールドスティーン氏は「日本人旅行者にも好まれる旅程が組める」と自信を示した。
さらに、ゴールドスティーン氏は「アルバータ州は、カナダで最も先住民観光に投資をしている州」と強調。同州の観光計画の重要な部分として、先住民観光協会や先住民コミュニティとの関係性を重視した施策を展開していることを説明した。
アルバータ州のアンドリュー・ボイチェンコ観光・スポーツ大臣は、先住民関係大臣と連携しているとしたうえで、「州内のさまざまな場所で、先住民の生活スタイルや文化を体験できる。データによると、海外からの旅行者の3人に1人がそうした体験に参加している」と明かし、先住民ストーリーの観光における重要性を指摘した。
こうした取り組みを通じて、同州では観光収入を現在の144億カナダドル(約1.5兆円)から2035年には250億カナダドル(約2.7兆円)に増やす目標を立てている。
このほか、ゴールドスティーン氏は、日本市場では2023年5月に就航したウエストジェット航空によるカルガリー/成田線の存在は大きいと強調。日本からはレジャー旅行者だけでなく、教育旅行の回復にもつながっているとした。
また、エドモントンと熊本を結ぶ直行便開設が模索されていることについても言及。「ウエストジェットの機材計画次第」との考えを示すとともに、「(就航すれば)ビジネスだけでなく、教育旅行の点でも両都市の関係は深まるだろう」と期待感を示した。
アルバータ州観光公社CEOのデービッド・ゴールドスティーン氏(左)とアンドリュー・ボイチェンコ観光・スポーツ大臣
日本では旅行会社の力に期待
日本市場については、共同マーケティング、旅行会社向けのトレーニング、視察ツアー、トレードミッションなどを通じて旅行業界との関係を引き続き強化。新しい商品、サービス、体験の開発を進めていく考え。特に、ウインターシーズンの誘客に向けた取り組みに力を入れていく。
また、新たな観光コンテンツとして、カナディアン・ロッキーの麓に位置する牧場「Thanksgiving Ranch」でのラグジュアリーな滞在とローカル体験を紹介。さらに、カナダ先住民族メティスのオペレーターが運営する「Sky Watching Domes」では、「星空と先住民体験を組み合わせたユニークな体験ができる」と推奨した。
「アルバータ州をカナダで日本人旅行者のナンバーワン旅行先にしていきたい」とボイチェンコ大臣。「すでに日本とアルバータには橋がかけられている。その橋を渡る人たちをさらに増やしていきたい」と話し、日本市場重視の姿勢を示した。
※カナダドル円換算は1カナダドル106円でトラベルボイス編集部が算出