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新たな免税制度改革で、市場規模は1.7兆円に拡大予測、経済効果は推計8300億円、みずほ銀行が分析レポートを発表

みずほ銀行産業調査部は、このほどインバウンド消費の拡大に大きな役割を果たしてきた日本の「消費税免税制度」について効果を分析したレポートを発表した。制度の現状と経済効果とあわせて、2026年11月から導入予定の新たなリファンド方式、さらに海外での事例についても詳細にまとめている。

免税制度はこれまで段階的に拡充されてきたが、不正利用や制度の複雑さが課題とされてきた。これを受け、2026年11月からは「リファンド方式」が導入される。現行の「免税販売」から、いったん税込価格で購入し、出国時に税関で確認を受けた後に返金する方式へと変更される。

新制度では、品目ごとの区分や購入上限額が撤廃され、免税店の立地要件も緩和されるなど、旅行者にとって使いやすさが向上する見通し。一方で、返金手続きの負担や小規模店舗での対応コストといった課題も残されており、制度の実効性を左右する要素になると指摘している。

免税制度がもたらす経済効果

レポートでは、2024年に訪日した外国人旅行者の約3687万人のうち、免税手続きをおこなった旅行者は約2040万人(手続率55.3%)と推定。免税購入額は1人あたり約6.1万円で、総額は約1.2兆円に達し、インバウンド消費全体(約8.1兆円)の15.3%を占めたとしている。

この制度の効果を詳細に見ると、まず「買物単価の上昇」がある。免税によって価格が実質的に約9.8%安くなることで、約3800億円の追加的消費が誘発されたと試算。また「訪日旅行者数の増加」も影響しており、旅行コストの軽減によって約200万人分の来訪を促し、その消費額は約4500億円に上ったと見込む。これらを合計すると、免税制度による追加的な経済効果は約8300億円にのぼり、インバウンド消費全体の約1割を押し上げた計算になる。

さらに、新制度による免税市場規模が現行の1.2兆円から1.7兆円程度まで拡大する可能性も提示。これは、新制度によって旅行者の制度利便性は低下するものの、免税店数割合の拡大による免税制度の訴求力が向上することから分析したもの。そして、制度改革をきっかけに、旅行者の購買データ活用や小売事業者の戦略強化につなげられるかが、観光産業全体の競争力に直結すると見通した。

海外事例との比較、今後の展望

レポートでは、日本の免税制度を他国と比較した事例も紹介している。欧州主要国では、すでにリファンド方式が広く採用され、空港などでキャッシュレス返金が一般的となっている。韓国や台湾でも制度の電子化が進み、旅行者の利便性を高める仕組みが整備されているという。

日本の制度改革はこうした国際的な潮流に沿うものだが、返金に時間を要することで旅行者の満足度を損なうリスクもある。この課題について、同レポートでは空港での手続き迅速化や返金手段の多様化などの必要性を指摘した。

レポートの詳細は以下から確認することができる。

みずほ銀行「Short Industry Focus Vol.255:外国人旅行者向け免税制度の見直し ~インバウンド需要捕捉に向けたマーケティング強化の機会に~」(PDF、20ページ)