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訪日ビザ手数料の引き上げによるインバウンドへの影響は軽微か? 野村證券が消費額2840億円減と試算

野村證券は、2026年のインバウンド市場動向や訪日ビザ手数料の引き上げによる影響について、試算に基づいた分析を公表した。

野村證券では、2026年にかけて円高が進行すると予想。そのうえで、分析を行った同社経済調査部エコノミストの伊藤勇輝氏は「円高は訪日外客数の押し下げ要因になるが、海外GDPの増加に伴う旅行者の所得水準の上昇や原油価格の低下は追い風になる。そのため、来年も円高進行による下押し圧力を受けつつも、訪日外客数は緩やかに増加していく」と予想した。

一方、1人当たりの旅行支出額(単価)は、円高による押し下げ効果の影響が出やすいことから、低下するとみている。

ビザ手数料引き上げの影響は軽微

日本政府は、中国やフィリピンなどの旅行者に義務づけられる訪日ビザの手数料について「一次ビザ」約3000円、「数次ビザ」約6000円を欧米並みに引き上げる方針を示している。野村證券では、G7のうち日本を除く6ヶ国のビザ手数料を、訪日客数のウェイトで加重平均すると2万3000円程度になるとしたうえで、これが値上げの目安になるとの考えを示す。

その場合、年間の訪日客数は約1.7%(63万人)、単価は2.0%押し下げられると試算。訪日客の減少分のうち、客数の多い中国が大きなインパクトを受けることになる。客数と単価を掛け合わせると、インバウンド消費額は2840億円程度押し下げられることになるが、年間GDPへのインパクトは約0.05%で、日本の潜在成長率(0.5~0.6%、内閣府による試算値)と比較すると軽微にとどまるとした。

2028年度には短期滞在ビザを免除する外国人を対象とする日本版ESTA(JESTA)の導入が検討されていることから、伊藤氏は「訪日客数に対する追加的な下押し要因となるリスクがある」との見解を示している。