JTBは、「年末年始(2025年12月20日~2026年1月5日)に、1泊以上の旅行に出かける人」の旅行動向見通しを発表した。
家族旅行を中心に旅行意欲は堅調で、総旅行人数は前年同期比2.5%増の3987万人、消費額は同8.4%増の1兆9858億円に上ると推計した。国内は近場・短泊・ドライブが主流で1人あたり平均費用が4万4000円。同社の調査開始以降、過去最高となり、海外は4~6泊が増え、遠方が好調であると分析している。
発表資料より
経済環境と旅行意識の二極化進む
JTBは、日本は円安や物価高騰、実質GDPのマイナス成長(2025年7〜9月期)など不透明な経済状況が続き、実質賃金のマイナスから「家計に余裕がない」人が増加していると分析する。このため、消費抑制の傾向が顕著で、旅行への支出意向も節約志向がみられる。
また、旅行先選びでは、混雑、感染症、治安、自然災害といったリスクを避ける意識が高まっている。旅行を後押しする要素として、費用を抑える「クーポン・セール」が重視される一方で、「限定プラン」や「非公開の場所への招待」といった希少性・独自性のある体験も重視されており、賢い節約と特別な体験の二極化が進んでいるとみている。
発表資料より
国内旅行の平均費用は1人4.4万円で過去最高に
国内旅行は、人数が同2%増の3886万人、消費額が同4.3%増の1兆7099億円に上ると推計。旅行日数は1泊2日が最も多いなど短めだが、1人あたりの平均予定費用は同2.3%増の4万4000円で、経済状況やインバウンド回復、サービス業の人手不足の影響などによる旅行関連費用の高騰から、調査開始以降、過去最高になるとみる。
旅行目的は、「家族と過ごす(45.4%、前年同期比3ポイント増)」が最も多く、「リラックスする、のんびりする(29.9%、同0.5ポイント増)」が続く。利用交通機関は「自家用車(53.1%)」が最多で、家族と自家用車で行ける近場、居住地と同じ地域内での旅行が人気となっている。出発日は12月26~31日に集中し、全体の51.8%を占める。
JTBの予約動向では、7月に開業したテーマパーク「JUNGLIA OKINAWA」をはじめとする沖縄や東京ディズニーリゾートを含む東京、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを含む関西が人気だ。
発表資料より海外旅行はハワイ、欧米が増加し平均費用が上昇
一方、海外旅行は人数が同31.5%増の100万人、消費額が同42.9%増の2758億円になると見通す。12月29~31日が休みとなる人にとって9連休(12月27日~1月4日)の取得が可能なことから、日並びの良さで海外に出かける人が増加する。旅行先は近場の韓国などがやや減少し、ハワイ、欧米など人気が復活しそうだ。
これに伴い、1人あたり平均費用は同8.7%増の27万5000円となり、20万円以上の割合は前年に比べ11.3ポイント増加。日数の伸びと遠方の旅行先の増加に伴い、予算が上昇している。
今後の海外旅行意向では、「すぐに行きたい」という回答は「ハワイ(10.6%)」、「ヨーロッパ(10.5%)」が上位となり、次いで「オーストラリア・ニュージーランド(8.9%)」と比較的遠方が上位となった。続いて、「韓国(8.6%)」、「台湾(8.6%)」となり、遠方が人気となる傾向が明確となっている。
発表資料より
調査は2025年11月11~13日の期間中、全国15~79歳の男女を対象に事前調査1万人、このうち「年末年始に旅行に行く/たぶん行く」と回答した2060人に本調査を実施した。
なお、旅行に行かない理由は、「家でのんびりしたいから(41.9%)」が最も多く前年同期から9.7ポイント増加、次いで「年末年始は混雑するから(37.0%、同11.1ポイント増)」、「年末年始は旅行費用が高いから(28.3%、同7.7ポイント増)」となり、混雑を避けのんびりしたい心境と出費への懸念が上位だった。