2026年夏に米国、カナダ、メキシコで共同開催されるFIFAワールドカップの組み合わせ抽選が終了し、試合が行われる16都市は、どの国のチームとファンが訪れるのかを明確に知ることになった。期間中、104試合が行われ、その大半は米国の11都市で開催される。すでに、各試合のスタジアムとキックオフ時間も決まった。
開催都市は、多くの観光客が訪れることが予想されることから、試合の詳細が発表されることを待ち望んでいた。それぞれ、この大会が観光客誘致につながることを期待している。
初戦は6月11日にメキシコシティ・スタジアムで行われるメキシコ対南アフリカ。6月12日にはカナダのトロントでカナダ対欧州プレーオフの勝利チーム、同日にはロサンゼルスで米国対パラグアイが行われる。
試合観戦を目的にした旅行者増に期待高まる
FIFAワールドカップは2026年最大の国際観光イベントの一つだ。ショーン・ダフィー米国運輸長官は、試合観戦のために最大600万人が米国を訪れる可能性があると明らかにした。観光調査会社ツーリズム・エコノミクスは、期間中の米国への海外からの旅行者は124万人になると推計している。
2025年にインバウンド旅行者数が低迷した米国にとって、この大会は大きな追い風となるはずだ。10月時点で海外からの旅行者数は6ヶ月連続で減少。カナダからの旅行者も大幅に減少している。
米国政府は、ワールドカップのチケット所有者がビザ取得の予約を優先的に行えるよう、優先予約システムを導入することを明らかにした。また、ダフィー米国運輸長官は、飛行機、鉄道、道路いずれの移動手段も「可能な限りスムーズにしていく」と述べている。鉄道については、膨大な数のファンの移動のために、線路を整備し、十分な車両を確保していくという。
トランプ政権の政策は正反対、すでに動き出した観光産業
そんな中、スキフトのサラ・コピット編集長が、同社のニュースレターで、トランプ政権の政策が大会と真正面から衝突することになるとの見解を示した。
コピット編集長は、「出場国の全員が米国に入国できるわけではない。ハイチとイランは依然として入国禁止措置の対象国に含まれている。国務省は、選手、その近親者、コーチ、サポートスタッフは主要スポーツイベントで免除されるものの、ファンは対象外と明言している。つまり、何千人もの観客が入国資格を満たさない可能性があるということだ。これは、開催都市のホテルにとっては耳の痛い話だ」と状況を分析している。
さらに、ビザ取得の待ち時間も別のリスクとなりうる。コピット編集長は、「コロンビアやメキシコなど出場国の一部の領事館では、6か月以上も待たされることもある。トランプ政権はワールドカップのチケット保有者向けに優先予約システムを導入することを明らかにし、マルコ・ルビオ国務長官は、参加者は6~8週間以内に面接を受けられる可能性があると述べたものの、できるだけ早く申請すべきだ」と警告した。
一方、観光産業はすでに動き出している。民泊を含む短期宿泊賃貸(STR:short term rental)の需要は急増しており、AirDNAによると、メキシコでは500%~2500%増加。開催都市のホテル宿泊料金は、予約ラッシュが始まっていないにもかかわらず、大会期間中はすでに昨年より55%も上昇している。しかし、不動産情報会社CoStarによると、来年の6月と7月のホテル需要はわずか0.15%程度しか上がらない見込みだという。
最後にコピット編集長は「ワールドカップが近づくなかで、すでに政治は動き始めた。各開催都市は、試合を行う国のファンが無事にビザを取得できるように祈るだけだ」とまとめた。
※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(Skift)」 から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事: World Cup Draw Kicks Off 2026 Tourism Planning
著者:Bailey Schulz氏
