帝国データバンクは、このほど中国による日本への渡航自粛の影響について、日本企業を対象にアンケート調査を実施した。調査は2025年12月5~9日、1197社を対象におこなわれた。中国外務省は11月14日、自国民に対して日本への渡航を当面控えるよう注意喚起しており、その影響を把握することが目的となる。
結果によると、「マイナスの影響がある」と回答した企業は42.8%、「影響なし」は40.8%でほぼ拮抗している。しかし、業界別に見ると、観光客減少の影響を受けやすい「運輸・倉庫」業界では、マイナス影響を受ける企業が53.8%と突出。半年程度の先を見据えた場合、マイナス影響と考える企業は36.4%と減少し、「プラスの影響」と回答した企業は5.6%から11.1%に上昇した。観光産業への影響は大きいものの、日本企業全体としては冷静に受け止めている様子がうかがえる。
発表資料より
個別には、飲食店から「日本人などで代替できない部分があり、客数減少の影響がある」、不動産業からは「観光、小売店へのマイナス影響が出る」といった観光関連への懸念が多く寄せられた。精密機械や医療機器製造では、ビジネス渡航への影響や、日本側からの渡航抑制を危惧する声もあった。一方で、情報サービス業からは「オーバーツーリズムの改善や国内ビジネス活動の宿泊・移動にプラス」といった、観光地の混雑緩和による好影響を期待する意見もみられた。
帝国データバンクは総じて「多くの企業は冷静で、企業マインドは堅調」と評価する一方、日中間の緊張が高まる状況も指摘。観光やビジネス渡航、さらにはサプライチェーンへの影響の可能性に言及した。
さらに、同社は「日本の観光や生産面での中国依存の高さが改めて課題として認識されている」と指摘。依存度を下げるための分散化や、国内市場の需要拡大への注力が重要だとしている。