JTB総合研究所が「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2025)」の結果を発表した。旅行情報を検索する手段として生成AIの存在感が急速に大きくなる一方、コミュニケーション手段が文字ベースから映像コンテンツにシフトするなど、旅行者の情報収集のスタイルが構造的に変化している実態が明らかになった。
調査は2025年11月、1都3県、名古屋圏、大阪圏に住む18~69歳の男女1万名を対象に実施。そのうち、過去1年以内に国内旅行経験のある1030名から本調査の回答を得た。
「加工ない日常」の人気がじわり
これによると、スマホでよく使う機能は「メッセージ・チャット」、「メール」などのコミュニケーション手段が減少し、「動画や画像投稿サイト」、「テレビ・映画」などの映像コンテンツ系が上昇。情報検索手段は「生成AI」が2024年の9.7%から28.8%へと約3倍に増加した。
利用するニュースの媒体については、インターネットニュースも含め、すべての項目が減少し、「読まない」が上昇傾向。JTB総研は「情報検索の方法は『自分から情報検索しない』が上昇しており、情報は自分から取りに行かなくても自動的に与えられるもの、という流れがより一層強くなっている」と分析している。
旅行における重要なタッチポイントであるSNSの利用動向にも変化がみられる。全体的な利用率で、LINE、YouTubeの2トップは変わらなかったが、InstagramがX(旧Twitter)を抜き、3位に浮上。特に女性層の間で画像・動画をベースにしたInstagramの訴求力が強くなっている。加工のない日常をシェアする「BeReal.」もわずかながら上昇しており、29歳以下女性の利用率が10%を超えた。
JTB発表資料より
eスポーツに商機
生活の中で、3年前と比べて増えたことや減ったことについても聞いている。
「増えた」という回答が「減った」という回答を大きく上回ったのは、「現金以外の買い物」が圧倒的に高く、キャッシュレス化が広く浸透していることを示した。また、コロナ禍で広がったさまざまな項目のうち、「会議・ミーティング(オンライン)」は「増えた」が「減った」を上回ったが、「旅行先でのテレワーク」、「シェアオフィス・コワーキングスペースでの業務」、「在宅勤務」などは減少し、明暗が分かれた。
このほか、eスポーツの存在感が増している。29歳以下の男性では約半数がプレイ・観戦経験を持ち、さらに「現地に行きたい」という強い意向を示した。eスポーツと聞いて具体的にイメージできるものについて、全体では「eスポーツのイベント、大会(18.7%)」が最も高かった。特に男性29歳以下では「eスポーツチームやプロゲーマー(30.2%)」や「eスポーツに力を入れている企業(19.8%)」が支持されており、JTB総研は「eスポーツと企業のイメージが紐づいている場合も多い」とみている。
JTB発表資料より
AIの利用が10ポイント上昇
また、AIサービスの利用経験率は58.7%に達し、前年の49.0%から約10ポイント上昇した。通訳・翻訳や画像検索、ChatGPTなどの利用を通じ、日常生活への浸透が進んでいる。
旅先で利用したいAIサービスは「グルメ情報検索(29.6%)」が最多で、「言語翻訳(25.1%)」、「行程・ルート提案(24.7%)」が続いた。特にグルメ検索は、30〜40代および60代の女性で高い意向を示した。
無人サービスの利用意向では「自動会計(32%)」や「入国審査の自動化(19.0%)」など、手続きを効率化できるサービスへの要望が付加価値サービスを上回った。旅行者は技術に対し、新たな体験よりも「面倒くささの低減」を優先的に求めている実態が浮き彫りになった。