小田急不動産と多摩大学は、「マチカドこども大学」の「小田急子ども観光学講座in海老名」を開催した。
マチカドこども大学とは、科目にとらわれない、横断的な「探究型講座」。課題解決型の講座を実践してきた大学生など大人たちが、小学生に講座やフィールドワークを通して探究空間を提供し、思考力・判断力・問題解決力の向上をサポートする産学連携の取り組みだ。2023年4月に開校し、通常は、小田急多摩線栗平駅の「CAFE&SPACE L.D.K.」で行われている。
今回は特別回として、小学生を対象に海老名の小田急本社と隣接する「ロマンスカーミュージアム」で実施された。小田急沿線地域の魅力を深掘りし、その伝え方や旅行プランの作り方を学ぶワークショップを実施。玉川大学名誉教授・名桜大学特任教授の寺本潔氏が講師を務め、小田急電鉄と日本観光振興協会が共催した。
主催する多摩大学経営情報学部准教授の樋笠尭士氏は、マチカドこども大学について、「大学で習うことを小学生に提供して、学習の後に友達や家族に話したくなるような内容にしています」と話す。自然科学系、人文科学系、社会科学系、複合領域系の4分野で、2023年度は17講座、2024年度は22講座を開催。多摩大学の学生が運営を担当し、「参加型や双方向型の学習を意識している」という。
「マチカドこども大学」の内容と意義を説明する樋笠准教授
樋笠准教授は、今回初めて観光学を取り上げた背景について、「小学校高学年の社会科の授業では、オーバーツーリズムの話題も取り上げられるようになっています。しかし、しっかりとは理解できていない。また、観光はどれだけお金を落とすビジネスで、それに頼っている人たちも多くいることを知ってもらうこと、さらに観光客は一括りではなく、多様であることを知ってもらうことは大事なことだと思います」と説明した。
また、講師を務めた寺本教授は、観光学講座の目的として「旅や移動を通して地域の活性化に貢献できることに気づいて、多角的な思考力と企画力を身につけること」を挙げた。
小学生にもわかりやすく観光の重要性を伝える寺本教授
参加型ワークショップで観光を学ぶ
ワークショップでは、まず地図帳を使い、小田急沿線の図上旅行を楽しみながら旅を支える観光の仕事を把握する「観光読み」をおこなった。次に、「観光花びら」ワークとして、建物・施設、祭り・イベント、歴史・伝統、生活文化、食べ物、自然の6つの花びらに、子どもたちが思いつく観光スポットなどを記入した。
「観光花びら」に思いついた観光素材を記入
そのうえで、観光客が千差万別であることを理解するために、客層に応じた旅行のタイプを考える「ポジショニング・マップ」を策定した。属性として、ファミリー、ハネムーナー、熟年夫婦、女子大学生3人組、インバウンドを設定。その5種類の属性を「価格が安い」「価格が高い」「温泉旅館やホテル・ビーチでのんびりする滞在(保養型)」「観光地めぐりやスポーツ、祭り、結婚式への参加(目的型)」の4方向に当てはめ、グループでその理由をそれぞれ考えた。
その発表では、「ファミリーは、子どものアクティビティなどにお金を使いたいから、価格が安くて、スポーツをするところにしました」「熟年夫婦は、もう子どもがいないので、ゆっくり贅沢できる価格が高いところにしました」「インバウンドは、飛行機代が高いから観光地ではあまりお金が使えません」「女子大学生3人組は今、物価高であまりお金が貯まらないから、映える感じの旅行にしました」「ハネムーナーは、一生に一度のことなので、価格が高い方にしました」など、世相を反映しながら、それぞれの属性の旅の特徴を考えた。
ポジショニングマップで観光客の属性を理解最後に、ワークショップで学んだことをベースに「顔ハメボード」を使って旅行企画を発表した。顔ハメボードは、地域の観光で知名度の高い「小田急山のホテル」「大涌谷ロープウェイ」「箱根湯本温泉街」「小田原城」「片瀬江ノ島駅舎」「湘南ゴールド」「新宿高層ビルとロマンスカー」の7つを用意。各グループで、その中から二つを選び、小田急観光案内所(架空)を訪れた旅行者に向けて、観光資源やスポットを紹介し、その旅を勧める想定で、それぞれの魅力を体験できる旅行企画をプレゼンテーションした。
大学生のサポートを受けながら「顔ハメボード」で旅行企画をプレゼン
子どもたちや保護者にも好評
寺本教授は、子どもたちに対して、「観光業を営んでいる人は、目の前の観光客が何を望んでいるのかをしっかり観察し気持ちを汲み取ったりする力が大切です。お客さんと一緒によい旅をつくり上げることが仕事のよろこびになります」と呼びかけた。
子どもたちからは、「こういう参加型の学習は初めてで楽しかった」「グループで話し合いをしながら考えるのが楽しかった」などの感想が出され、保護者からは、マチカドこども大学について「いろいろな講座があるので、子どもの視野も広がると思います」との意見が聞かれた。
樋笠准教授は「アカデミックコミュニケーターとして大学生が子どもたちに面白い学問を伝えることで、子どもたちが塾でも学校でもないところで成長してくれるといいなと思います」と話す。
共催した小田急電鉄は「地域価値創造型企業」を打ち出し、沿線の観光資源の活性化を進めることで、沿線の定住人口の定着と獲得を目指している。また、将来の観光人財の育成にも力を入れている日本観光振興協会は、今回の協業をきっかけに、今後もさまざまな産学連携の機会をとらえて、観光教育を発展させていきたい考えだ。