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JTBのデータから見える訪日タビナカ最新トレンド、予約の多い体験から今後の課題まで、担当者に聞いた

世界的に人々の旅行スタイルが多様化するなか、タビナカ市場が拡大している。タビナカの国際会議を主催する「Arival(アライバル)」によると、その市場規模は2025年には2710億ドル(約43兆円)に達し、2029年には3420億ドル(約54兆円)に拡大すると予測されている。訪日外国人旅行者が急増する日本でも同様だ。

2026年3月に開催された「インバウンドビジネス展」に出展した体験アクティビティ予約管理システム「JTB BÓKUN」の事業運営センター長の青柳淳氏に最新のトレンドを聞いてみた。

アジアと欧米豪で異なるタビナカ傾向

JTB BÓKUNとは、ツアーや体験アクティビティの予約・在庫・決済を管理できるクラウド型システム。自社サイトでの販売支援だけでなく、主要な海外OTAとも連携しているためインバウンド向けの販路を広げることができる。その流通状況からは、訪日市場でのタビナカトレンドが見えてくる。

青柳氏は「全体的な傾向として、欧米豪の旅行者は依然として東京、大阪、京都での体験が多く、その割合は7~8割。一方、アジア諸国からの旅行者は地方での体験を予約する割合が多いことが、利用者データから明確に出ている」と明かす。

その理由としては、アジアから日本の地方都市への直行便が多いこと、またリピーターが多いことが背景にあると推察する。欧米豪市場からは、初めて訪日する旅行者が大半で、滞在中の当日予約が最多だという。

また、体験コンテンツについて、最近では相撲エンターテイメントショーの予約も増えているという。大相撲の本場所は年6回に限られる。相撲部屋での稽古見学もツアー商品化されているが、その稽古見学ができる日程も限定的なため、来日中に気軽に立ち寄ることができる相撲エンターテイメントショーが日本文化の体験として喜ばれているという。さらに、近年、その事業者も急速に増えてきた。

青柳氏は体験コンテンツとしての相撲について、「本物の相撲とライトな相撲エンタメに二極化している。ライトな相撲エンタメが本物の相撲への入口にもなり得るのではないか」と見ている。

一方、地方に広がるアジアからの旅行者は、自然系のアクティビティへの関心が高いほか、マンガやアニメなどのコンテンツにまつわる体験を求める傾向が強いという。聖地巡礼ツアーも人気で、例えば羽生結弦さんの聖地をめぐるツアーなど、いわゆる「推し活」的なツアーを楽しむ需要も高まっているようだ。

タビナカ市場でのチケット取り扱いはどうか?スポーツツーリズムやライブツーリズムが新たな市場として注目されているが、チケットの取り扱いについて、青柳氏は「旅行者がチケットをOTAに探しに行く動きをするのか、別の場所に探しに行くのかがまだ見えてこない」と明かす。

ただ、タビナカTAのKlook(クルック)が、2025年に開催された大阪関西万博の入場券をインバウンド向けに販売したり、ライブのチケット販売に力を入れ始めた動きがある。それを見ると、「OTAにも、今後、チケット販売のニーズが高まる可能性がある」との見方を示す。

「インバウンドビジネス展」にはJTBグループ3事業が共同出展タビナカ事業者間で価格競争の懸念

日本のタビナカ市場が拡大するなかで、海外OTAとつながるJTB BÓKUNの事業規模も拡大している。青柳氏によると、2025年度にJTB BÓKUN経由で販売をおこなった事業者数は前年度比約1.5倍、JTB BÓKUN経由の販売額は同約2.8倍になる見込みだという。事業者数よりも販売額の伸び率が高いことから、販売を伸ばしている事業者が増えていることがわかる。

一方、青柳氏はタビナカ市場での課題も口にする。観光ビジネスのなかで、最も参入障壁が低いのがタビナカ事業だ。そのため、「体験への参加者の安全を確保する点で課題があるように思える。信頼できるサービスを提供していくことが、今後の日本の観光レベルを保つためにも必要ではないか」と提言する。

また、体験を提供する事業者が増えるなかで、青柳氏は「すでに価格競争が起き始めている」と指摘。「日本で消費してくれるにもかかわらず、それを受け入れ事業者がその消費額を低く抑えることをしてしまうと、日本の経済にとってよくない」と危機感を口にする。そのうえで、「価格競争を招かないように、事業者それぞれが特徴を持ったコンテンツを提供していくことが大事だろう」と続けた。

訪日リピーターが増えるにつれて、訪問する地域の分散が進むことが予想される。一方、東京など都市圏の需要も底堅い。地域での体験コンテンツが多様化する一方で、都市圏では地方に行かずとも地方のコンテンツを体験できる機会も増える可能性がある。いずれにせよ、「新たなビジネスチャンスを見出すさまざまな事業者が出てくるだろう」と青柳氏。今後、日本のタビナカ市場の拡大とともに、その成熟が期待される。

※ドル円換算は1ドル159円でトラベルボイス編集部が算出