ホルムズ海峡の事実上の封鎖によって、欧州とアジアはジェット燃料不足の危機に直面している。石油供給がすぐに再開されなければ、夏の旅行シーズンを前に、航空運賃の高騰とフライトの欠航など世界の旅行業界はさらなる混乱に陥る可能性がある。
国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長は、AP通信の独占インタビューに応じ、欧州のジェット燃料備蓄は「おそらく6週間分」しか残っておらず、世界経済は「史上最大のエネルギー危機」に直面していると明らかにした。
国際航空運送協会(IATA)によると、ジェット燃料は航空会社の最大のコストで、総経費の約30%を占めている。そのなかで、ジェット燃料価格は米国/イスラエルによるイラン攻撃の開始以来、ほぼ倍増している。
アーガス・メディアの欧州ジェット燃料価格担当責任者アマール・カーン氏は「欧州のジェット燃料輸入量の約40%がホルムズ海峡を通って供給される。しかし、戦争勃発以降、ジェット燃料は海峡を通過していない」と話す。
燃料不足は航空会社のネットワークに影響
一部の航空会社はすでに、手荷物料金やその他の追加料金の値上げ、航空券価格へのコスト上乗せ、燃油サーチャージの引き上げなどによって、コストを消費者に転嫁している。運航便数を削減する航空会社も現れた。
コーネル大学のクリストファー・アンダーソン教授は、旅行者は航空運賃の値上げだけでなく、それ以上の事態に備えるべきだと警告する。「これはもはや燃料価格だけの問題ではない。航空会社にとっては、ネットワーク計画の問題。燃料費の高騰はもちろん重要だが、それだけでなく、路線の長距離化、スケジュールの柔軟性の低下、数週間先の需要予測の不確実性も大きな問題となる」と話す。
航空会社の対応は?
KLMオランダ航空は、2026年5月に160便(欧州路線全体の約1%)を削減すると発表した。同航空は「原油価格の高騰」を理由に挙げ、一部の便については「運航が採算に合わなくなった」と説明した。
イージージェットは、2026年度上半期の税引前損失が5億4000万ポンドから5億6000万ポンド(約1161億円~約1204億円)になるとの見通しを示した。しかし、ケントン・ジャービスCEOによると、イースター休暇の旅行需要は全体的に堅調で、その期間の旅行客数はイージージェットにとって過去最高を記録した。
ルフトハンザ航空は、労働争議と燃料価格の高騰によって、地域路線を担う系列航空会社のシティラインの運航を予定より早く中止し、燃費の悪い旧型機27機を運航停止にせざるを得なくなったと発表した。
デルタ航空は、欧州におけるジェット燃料供給問題の可能性を認識しており、状況を注視していると明らかにした。2012年に最大の経費削減のためフィラデルフィアの製油所を買収したデルタ航空は、「短期的には運航に影響はない」としている。
現れ始めた価格への影響
一部の航空会社はすでに新たなコストを旅行者に転嫁し始めた。米国のデルタ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空、サウスウエスト航空、ジェットブルー航空は、ここ数週間で受託手荷物料金を値上げした。
ユナイテッド航空のスコット・カービーCEOは近頃、燃料価格が高止まりすれば、年間110億ドル(約1.7兆円)のコスト増につながる可能性があると明らかにした。
キャセイパシフィック航空は最近、全路線で燃油サーチャージを約34%引き上げ、エア・インディアは4月初めに、一部のフライトで最大280ドル(約4万5000円)の追加料金を課した。
エミレーツ航空、ルフトハンザ航空、KLMオランダ航空も、価格変動に対応するため、料金や運賃を調整を進めているところだという。
※ポンド円換算は1ポンド215円でトラベルボイス編集部が算出
※ドル円換算は1ドル159円でトラベルボイス編集部が算出
※本記事は、AP通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。