訪日インバウンドが拡大を続ける中、一部の人気スポットでは局地的な混雑などによる地域の環境や生活に及ぼす影響への対応(いわゆるオーバーツーリズム対策)が急務になっている。この課題に対し、ナビタイムジャパンは訪日外国人観光客向けナビゲーションアプリ「Japan Travel by NAVITIME」で、新たな一手を投じている。
キーワードは、ユーザーの利便と地域の快適性を両立する「社会最適」なナビゲーションだ。すでに京都市など、一部の地域や事業者での取り組みが進んでいる。旅行者、地域住民、事業者の「三方よし」を追求する同社に、その実現に必要な考え方と、同アプリでできることを聞いた。
情報の力で集中を緩和し、自発的な周遊を促す
「持続的な観光成長には、混雑緩和と訪問先の多様化が不可欠」。そう話すのは、ナビタイムジャパンのトラベル事業部兼メディア事業部事業部長、毛塚大輔氏だ。同社では、現在の日本で「オーバーツーリズム」と呼ばれている現象は「特定の場所や時間での集中的な偏り」と捉えており、その要因は「情報のギャップ」にあると考える。
人が魅力的な場所を訪れること自体は避けられない。しかし、多くの訪日客は有名スポット以外の、日本各地に点在する魅力的な場所を知らない、あるいは、そこへ行く方法が分からないという側面もある。マナー違反についても同様で、そもそもルールを知らない人も多い。このギャップを埋める手段として、月間ユニークユーザー数200万人以上(2025年実績)という圧倒的なリーチ力を持つ、訪日外国人観光客向けナビゲーションアプリ「Japan Travel by NAVITIME」が、役立てられると自信を示す。
「京都市や小樽市、渋谷区などに話を聞くと『特定の場所や時間に混雑が局地化しており、場所や時間帯が少しずれると閑散としているのが現状。周辺エリアへの訪問や別の時間帯への変更といった行動変容を促したい』という声が多い。観光客で混雑するエリアと、もっと来てほしいエリア、両方をセットで考えて対応策を練る必要がある」(毛塚氏)。
トラベル事業部兼メディア事業部事業部長の毛塚大輔氏「Japan Travel by NAVITIME」は2013年のリリース以来、一貫して日本全国を快適に移動・観光できる機能やコンテンツを追求してきた。毛塚氏は「日本にローカライズした圧倒的なデータ力で、主要観光地だけでは飽き足らない、訪日旅行のリピーターからの支持も高い」と自負する。現在13言語に対応し、観光情報の収集や旅行のプランニング、予約手配、ルート検索など、訪日旅行のタビマエからタビナカ、タビアトまで必要な機能をオールインワンで提供している。今や、ユニークユーザー数が訪日外国人旅行者数の半数強となるまで成長した。
一方で、毛塚氏は、訪日インバウンド旅行市場が拡大するなかで「ナビゲーションや情報発信が担う役割も変化している」と指摘する。そして、同アプリを情報の力で自発的な行動変容を促し、地域と事業者との連携で地域課題を解決する共創型プラットフォームへと、進化させようとしている。
ナビタイムジャパンはナビゲーションや情報発信が担う役割も変化していると考え、対策に取り組んでいる
京都市でバス混雑緩和を図るルート案内を開始
では具体的に、どのような取り組みを始めているのか。
ナビタイムジャパンは京都市観光協会と連携し、2025年4月から市内のルート検索で「おすすめルート」案内を開始した。アプリでルートが検索された場合、混雑するバス路線よりも、地下鉄を積極的に利用するルートを上位に表示するものだ。ユーザーの約8割が、ルート検索結果のトップに表示される経路を選ぶことに着目し、自然な形での行動変容を促している。
「外国人旅行者にとって移動が快適で、地域住民のストレス軽減にもなる。所要時間の差が数分以内に収まるなど、現実的な選択肢であることを京都市観光協会と連携して、提示している」(毛塚氏)。
こうした取り組みは、ナビタイムジャパンの事業として直接的な収益につながるものではないが、観光が持続可能な発展をするためには「社会課題や安全性、各地域の事情を考慮したアルゴリズムの追求が必要」と話す。観光地経営で地域との合意形成が重視される今、観光向けナビゲーションも“ユーザーにとって最適”であるだけでは不十分な時代であり、受け入れ地域にも最適なルートを提供することが不可欠という考えだ。
ユーザーの8割はトップ表示の経路検索を選択する。数分以内の差異で、より快適なルートを上位表示する
「マナー啓発」は適時適所での情報発信が有効
「場所」や「時間」を絞った情報発信も効果的だ。京都市観光協会との実証事業では、地域との共生を目的に、祇園の一部エリアに入ったユーザーに、プッシュ通知でマナー啓発を実施。アンケート調査では、通知を開いた人の全員が「行動を改めようと思った」と回答した。必要な時に必要な人へ届けられる情報発信の仕方は、訪日客にとってもわかりやすく、受け入れやすいだろう。
2025年末に同アプリが「日本サービス大賞」の内閣総理大臣賞を受賞した際、その表彰式典でこの成果が取り上げられ、観光客の受け入れと地域環境の両立に資する取り組みとして期待が示されたという。
さらに、同アプリの観光情報では、検索した有名観光地に類似する特性を持つエリアを提示する機能も追加。「自然」「アクティビティ」「グルメ」など6項目で、地域の特徴をチャートで示し、ユーザーにとって知られざる日本の観光地への関心を掻き立てる。
これ以外にも、日本の文化やマナー、ルールを伝えるハウツー記事も掲載した。「神社での参拝方法、道路標識、温泉の楽しみ方などが分かれば、地域との調和はもちろん、訪日旅行での体験の質の向上にも役立つはずだ」(毛塚氏)。
GPS測位データを活用したプッシュ通知で、旅行中のユーザーに直接、行動変容を働きかける
「持続可能な観光」をパートナーとともに創る
「Japan Travel by NAVITIME」は、ユーザーとのタッチポイントをいかしたチケット販売のプラットフォームでもある。2025年のチケット販売額(新幹線、eSIM、レジャー施設等)は前年比で2倍以上に成長。ルート検索や旅行プランニングの結果に、鉄道や航空、ホテルなど旅行予約の動線を用意し、アプリを起点に多様な観光消費を生みだしている。
こうしたルート検索や観光情報の検索時に、地域や観光関連の事業者が持つ魅力的な情報と予約機能を組み合わせて提示できれば、訪日客にとって新しい広域周遊を促す機会となり、目的地の多様化につながる。毛塚氏は、同アプリと連携することが、事業者にとって「持続可能な観光を創る取り組みとなり、販売チャンスにもなる」と話す。
例えば、2025年10月にはグローバルで手荷物預かりを展開するBounce(バウンス)社と連携し、手ぶらで観光できるルート案内を開始。経路上にあるコインロッカーや手荷物預かり所を表示・予約ができるようにした。スーツケースなどの大きな荷物によって生じる地域との摩擦を軽減するとともに、旅行者には快適な観光を、事業者には予約機会を提供する“一石三鳥”の取り組みとなっている。
ナビタイムジャパンでは今後も、手荷物預かり所はもちろん、手ぶら配送サービスなどとの連携を広げていく方針だ。
課題解決の打ち手が、事業者にとって販売機会になることも訪日リピーターが増加する中、同アプリで検索される訪問先のキーワードは年々、細分化している。こうしたニーズに対応していくこと自体が、まだ知られていない地域への観光促進につながる。同社では、GPSデータや検索ワードから、ニーズを発掘することに力を入れている。
最近のキーワードのトレンドは、フルーツ狩りやレトロな喫茶店、釣り堀、駄菓子、よりローカルな温泉などが目立つ。安価で質が良いと眼鏡店を探す声も増えているという。従来、訪日インバウンドや観光とは関連が薄いと考えられていたような、幅広い事業者とも連携し、観光情報としてその魅力を旅行者に伝えることで、新たな体験の提供につなげている。地方のディープな体験ほど、ポテンシャルはある。訪日客の来訪を期待し、オンライン予約を整備している事業者とは「チケット予約までシームレスにつなぎたい」と考えている。
「『Japan Travel by NAVITIME』の最大の強みは、タビマエからタビナカ、タビアトまで、訪日外国人旅行者との接点がしっかりあること。このプラットフォームとデータ、技術を使ってできることを、地域や事業者のみなさまに知っていただきたい」と毛塚氏は話す。
ナビタイムジャパンでは、インバウンド基本戦略の3本柱に「快適な全国観光の実現」「スムーズなチケット購入システム」、そして「オーバーツーリズム対策」を掲げる。同社の技術を通じて訪日客と地域の最適解を追求し、持続可能な観光の実現に貢献していく方針だ。
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記事:トラベルボイス企画部