ホステルとは、ドミトリー(相部屋)を中心に、共用スペースを備え、旅行者同士の交流を重視する宿泊施設だ。それは、単なる「格安宿泊施設」ではない。主な利用者である18歳から30歳の若者は、旅程の自由度が高く、旅行頻度も高い。彼らが求めているのは、安く泊まれる場所だけでなく、旅先で仲間と出会い、その土地ならではの体験を共有するための場だ。
ホステル専門OTAのホステルワールド(Hostelworld)のゲイリー・モリソンCEOは、旅行業界がこうした旅行者の価値と、市場が持つ可能性を十分に理解していないと指摘する。バルセロナで開催された「フォーカスライト・ヨーロッパ2026」で語った若年旅行市場の収益性と、AI検索時代を見据えた同社の戦略を紹介する。
ホステルを選ぶ旅行者
モリソン氏は、ホステルの利用者層について、18歳から30歳の若年層が中心としたうえで、「彼らには旅行に対して非常に高い柔軟性がある。この層の旅行需要の回復力や底堅さは、驚くべきもの。この特定のセグメントに対して、極めて高い収益性を確保しながらサービスを提供する手段は確かに存在する」と力を込める。
同氏によると、ホステルワールド社の顧客の平均利用回数は年2.7回。その中には非常に頻繁に宿泊する旅行者が含まれているという。その顧客層にアプリなど低コストのチャネルでサービスを提供できれば、極めて収益性の高いビジネスを構築することが可能になると自信を示す。
ホステルに宿泊する旅行者が求めている体験について、「彼らは単にロンドン・アイやトラファルガー広場に行きたいわけではなく、地元の人々が楽しんでいるような体験を求めている」と説明したうえで、「我々は、そうしたコンテンツを収益化できるかどうかを考えることが大切。宿泊事業に隣接する旅行関連のビジネスにアップセルのチャンスがある」と語った。
ホステルの潜在性
また、初めてホステルに宿泊する旅行者は、基本的に初めて親離れをして旅行をする若者が多い。「彼らの記憶に残るのは、そこで出会った人たちや無茶をして楽しんだこと。誰も壁紙の色やベッドの寝心地など覚えていない。若者の人間性を形作るような旅だ」と話し、「そのような旅行者は次々と生まれてくる。それは今後も変わらない」とホステルの潜在性を強調した。
ホステルを単に一覧表示しただけのOTAは、2つ星ホテルに特化したOTAと同じことで、激しい価格競争に陥りやすい。そのなかで、モリソン氏は、「我々がビジネスとして注力したのは、18歳から30歳という層が抱える強力かつ普遍的なニーズに応えること。彼らが求めているのは、一緒に過ごす仲間を見つけたり、その仲間と楽しい体験をしたりするための手段と場所。それこそが我々が提供すべき『商品』だ」と力を込めた。
そのうえで、「筋金入りの一人旅の旅行者もいるが、『仲間と楽しむ旅』のスタイルを、4~6年ほど続ける傾向もある。一緒に過ごす仲間と楽しめる体験を探している旅行者にとって、我々のプラットフォームは最適」と続けた。
AI検索時代に必要なこと
モリソン氏は、AI時代の旅行探しについても言及した。AIは「自分のニーズを説明して探す世界」になるとしたうえで、その例として「バルセロナのプリマヴェーラ・サウンド音楽祭に行く場合、以前は『バルセロナのホステル』と検索していたが、AIでは『メインステージの近くの滞在場所で、一緒に過ごせる仲間を見つけられるホステル』に変わってきている」ことを挙げた。
そして、「重要なのは、その問いに答えられる唯一無二のデータを持っているか。引用されるに足る独自のデータを持っているか」と主張。「『一緒に過ごす仲間や楽しめる体験を見つける』という観点から言えば、その価値はホステルワールドでしか得られない」と自社のサービスに自信を示した。
ホステルワールドのソーシャルネットワーク内には、一緒に過ごす相手を見つけるのを支援するさまざまなレコメンデーションの仕組みが組み込まれているという。モリソン氏は「そのなかから自分に合う旅行者グループを見つけ、参加できるイベントまで企画してくれるAIエージェントがあれば、どうだろうか。それが世界3000都市で稼働するとしたら。我々は、まさにそうした構想を練っているところだ」と明かした。