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訪日インバウンドの新たな動き2026、地方空港発着による新ルートやスペイン市場の躍進を、ナビタイムのデータで分析 -トラベルボイスLIVEレポート(PR)

訪日客のリピーター化が進むなか、最新トレンドを把握する最適な方法の一つが、イノベーターの動きをつかむことだ。2026年7月に開催したトラベルボイスLIVEでは、人気シリーズ「訪日インバウンドの流行予測」の最新版として、ナビタイムジャパンのトラベル事業地域連携シニアディレクターである藤澤政志氏が、同社の移動データをもとにインバウンド観光の新たな傾向を分析した。

藤澤氏は冒頭で“クレヨンしんちゃんの聖地”として訪日客が増加傾向にある埼玉県春日部市を紹介した。同市では2017年からインバウンド誘致を本格化し、来訪者数が拡大。2026年5月には「春日部しんちゃんパーク(仮称)」の開業計画も発表された。

藤澤氏は「春日部市では、取り組みを始めてから8~9年で成果を生み出している。今は訪日客が少ない地域にも、可能性はある」と話し、講演を開始した。

定番ルートと地方周遊の変化

藤澤氏が以前から、訪日客が広域周遊をする上で重要だと説明してきたのが、交通網だ。5泊6日の旅程の場合、入国日と出国日を除くと、実質的な観光の日数は中4日程度であり、「限られた日数の中での効率的な移動が、周遊観光のカギになる」と説明する。

訪日客の平均泊数は、2019年比で2025年は約1泊伸びた。牽引するのは、長期滞在が多い欧米豪市場で、訪問都市の多様化に期待がかかる。

例えば、東京と大阪を結ぶ訪日観光の定番ゴールデンルート。JR西日本が北陸新幹線を利用する北陸まわりのルートを「新ゴールデンルート」としてPRしてきたが、現在ではこの旅程が海外メディアで紹介されるようになった。ラグジュアリー旅行の国際的ネットワーク「Virtuoso(バーチュオソ)」でも、新ゴールデンルートやその延長線にある富山や京都府北部の“海の京都”などが、次に訪れるべき日本の穴場の目的地として紹介されたという。

では、定番観光地以外の地域では、どのような変化が起きているのか。藤澤氏は2025年に訪日リピーターの割合が、全体の約64%(約2700万人)となり、その数が増加していることを指摘。すでに王道の観光地を経験した訪日客が、地方や穴場へ向かう動きが顕著になっていると説明した。

北海道を同社の訪日客向け観光ナビゲーションアプリ「Japan Travel by NAVITIME」の利用データでみると、2026年1~3月は2023年同期比で「道東や道北に、訪日客が流れている」と藤澤氏は説明。スキー場自体も、人気が集中していた王道リゾートから、同じ道央でも富良野、そして道東のトマムや道北の名寄などへ、行動範囲が広がっている。

こうした動きを後押ししているのが、とかち帯広空港の国際線就航だ。2025年、初の国際定期便となる韓国路線が就航した。藤澤氏は「これにより、北海道のとかち帯広空港を拠点にした観光が生まれつつある」と説明。2026年/2027年の冬季は台湾のチャーター便の運航も予定されており、空港の近隣にある十勝川温泉などの注目が高まるとみている。

同様の動きは、北海道以外でも見られる。Japan Travel by NAVITIMEの利用データで、2024年から2025年に訪日客の滞在数増加率でトップになったのが、仙台空港に近い岩沼市だ。訪日客が空港に到着後、仙台中心部へ向かう途中で同市の金蛇水神社を訪れている。藤澤氏は「到着初日に遠くへ行くのは難しいなか、立ち寄れる場所として外国人観光客が見つけた。金運のパワースポットであるのも、アジアの旅行者に喜ばれている理由だと思う」と説明した。

ナビタイムジャパンのトラベル事業地域連携シニアディレクターである藤澤政志氏

福岡空港を起点に生まれる九州・四国の新ルート

周遊の変化を促している地方空港のなかで、藤澤氏が取り上げたのが福岡空港だ。2026年夏ダイヤの国際定期便数は2019年同時期から約200便増え、中部国際空港を抜いた。これが、九州における訪日客の観光スタイルに変化をもたらしている。

九州は従来、アジアからの観光客が多いイメージがあるが、米国の富裕層向け旅行誌「コンデナストトラベラー」で、「日本の旅程にぜひ加えたい、あまり知られていない魅力的なスポット」として、博多の屋台文化が取り上げられた。「日本で姿を消しつつある、地域に根付いたストリートフード文化を体験するなら博多」と紹介され、注目が高まっている。

さらに、博多を訪れた欧米系の旅行者が、周辺地域へと足を延ばしはじめている。同社データでは、福岡県八女市は2025年9~11月の訪日客の滞在数が、前年同期比で伸び率1位となった。目的は八女茶とみられる。特に抹茶で、訪日客は茶舗での購入や抹茶カフェ、街並み散策をするために博多から訪れている。そして、八女を経由し、熊本方面へと周遊する動きも生まれているという。

また、九州を起点とした広域周遊で、新しい動線も見えはじめている。藤澤氏が注目するのは、大分県別府市や佐賀関、臼杵市から愛媛県へ行くフェリーを利用するルートだ。藤澤氏が現地で話を聞いたところ、九州から四国に入り、しまなみ海道を抜けていく外国人サイクリストが増えている。「サイクリングでしまなみ海道を走るのは周知されてきたが、そこへ行く過程のパターンが変わってきている」と説明した。

この流れを受け、愛媛県佐田岬半島の宿泊施設「アグリトピア」では、サイクリング途中に宿泊する訪日客が増加している。藤澤氏は「しまなみ海道を走ることを目的地とするのではなく、そこへ向かうルートを発掘し、それ自体を楽しむ動きが、一つの新しいトレンド」と指摘した。

福岡空港の国際線定期便の増加と世界的な抹茶の人気で、高品質な産地として知られる八女が、地域に足を延ばすきっかけにも。九州各地への周遊も促進

広域周遊と温泉、欧州市場でユニークなスペイン市場

国別の動向で、藤澤氏が注目している市場としてあげたのがスペインだ。2025年のスペイン人訪日客の増加率は前年比34.7%増と高く、ロシア、中東、インドに次いで成長が著しい市場の一つになった。Japan Travel by NAVITIMEの2025年3月~2026年4月のデータを見ると、岐阜県を中心とする中部エリアとその周辺を広範囲に周遊する様子が見られた。藤澤氏は「下呂温泉や加賀温泉、山中温泉など、温泉を楽しんでいるのが、スペイン市場の特徴。そこに注目している」という。

岐阜県は日本政府観光局(JNTO)がマドリードに事務所を設置した2017年に、スペインで旅行イベントを開催。白川郷の合掌造り集落から下呂温泉や古式日本刀鍛錬などの多様な魅力を発信し、早い時期からスペインでのプロモーションに尽力しており、それが結果に表れている。

また、JNTOがスペインで温泉への関心度調査を実施したところ、約97%の人が「興味がある」と回答した。欧米の人々は素肌で温泉に入ることに抵抗があるイメージがあるが、スペイン人にとっては非常になじみがあり、関心度の高い観光資源であることが分かった。

一方で、電通が2025年に実施した認知度調査「ジャパンブランド調査2025」では、スペイン人のほとんどが温泉の名称を知らないという結果が示された。

藤澤氏は「温泉地が十分に訴求しておらず、情報が届いていない。ミスマッチが起きている」と指摘。「スペイン市場は滞在日数が長く、広域周遊の傾向がある。訪日プロモーションや地域戦略のターゲットに入れてもいいのではないか」と提案した。

Japan Travel by NAVITIMEのデータでも、岐阜県を中心に中部エリアとその周囲へスペイン人観光客が周遊しているのが見える

小さな兆しを捉え、滞在と消費につなげる

このほか藤澤氏は、訪日客の滞在データから、特定の月に集中するエリアを抽出した結果を紹介。すると、そうした地域の特徴として、「唐津くんち」や「岸和田だんじり祭」など、祭りの開催にあわせて訪問する動きが確認された。これまで、特定の祭りやイベントを目的に訪日する観光客は少ないと思われていたが、リピーターの増加によって、地域の祭りを見たり、参加したりすることを目的に訪日する観光客が増えている。

進行を務めたトラベルボイスの鶴本浩司代表は、講演内容を受けて「経済産業省がお祭りを活用したインバウンド戦略に注力すると聞いている」と紹介。また、地域の祭りは神輿の担ぎ手不足などの課題もあり、「見るだけではなく、参加を提案する可能性もある」と話した。

質疑応答では、訪日客が増えた八女の宿泊実態について質問が寄せられた。現状は福岡からの日帰りが中心だ。藤澤氏は「これまで旅行者が少なかった場所に来るようになった。次は、地域での消費をどう高めるかがポイントだと考えている」と話した。

また、関東近県の地域からは「東京からの日帰りが多く、消費額につながらない」という悩みとともに、宿泊周遊の戦略について質問が寄せられた。藤澤氏は「宿を変えるには強いインセンティブが必要。そこまでするなら、初日に東京に滞在させず、横浜や三浦など地域へ誘客する戦略を立てるのが、ブレイクスルーのカギになる」と回答した。

トラベルボイスの鶴本浩司代表広告:ナビタイムジャパン

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記事:トラベルボイス企画部