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インバウンド向け相撲ショー「日楽座」、欧米豪旅行者から人気を集める理由と、その舞台裏を取材した

海外で日本の「相撲」の人気が急速に高まるなか、阪神コンテンツリンクが運営する相撲エンターテインメント施設「日楽座(THE SUMO HALL / THE SUMO LIVE RESTAURANT)」が連日、多くの訪日外国人旅行者で賑わいを見せている。2024年5月に大阪・難波(なんばパークス)に1号店をオープンし、2026年1月には東京・銀座に2号店を開業。単なる観光客向けのショーにとどまらず、相撲を切り口に和食や江戸の歴史といった日本文化を五感で体験できる没入型ショーレストランとして人気を集めている。

同社がインバウンド事業として相撲に注目した理由や、欧米豪の旅行者の心を掴む集客の仕掛け、そして今後の展開について、日楽座の運営責任者である杉本豊氏に聞いた。

阪神タイガースの演出ノウハウも活用

阪神コンテンツリンクが、インバウンド事業として、相撲に注目した理由は、コロナ前に実施した訪日客への直接アンケートの結果からだった。欧米豪の旅行者が日本文化、なかでも相撲に対して極めて高い関心を持っていることが分かった。さらに、彼らは半月から1ヶ月以上の長期滞在をする傾向が高く、体験型コンテンツへの支出意欲も強い。旅行者の目的が「モノ消費」から「コト消費(体験)」へシフトするなか、元力士のセカンドキャリア支援という社会的意義も重ね合わせて、相撲をエンターテイメント化していった。

同社は、国内3店舗で「ビルボードライブ(東京・横浜・大阪)」を運営するほか、グループ会社とともに阪神甲子園球場や阪神タイガースの興行・運営に深く携わっている。杉本氏は、日楽座の開業について、「スポーツやエンターテインメントの現場で培ってきた演出やオペレーションのノウハウを、インバウンド事業で活かしていく考えがあった」と振り返る。

ショーの演出には、プロ野球の選手登場シーンやスタジアムビジョンの演出など、同社がスポーツビジネスで培ってきた技術を活かした。大相撲の伝統的な土俵入りや歴史の重みを尊重しつつ、現代的なデジタル演出を掛け合わせることで、大相撲に詳しくない外国人でも直感的に盛り上がることができるエンターテイメントを創り出した。

演者の「WAKA」が会場を盛り上げながら入場銀座では相撲と江戸文化を

銀座にオープンした「THE SUMO LIVE RESTAURANT 日楽座 GINZA TOKYO」のコンセプトは「EDO Spirit – Sumo & Culture Experience –」だ。相撲エンターテイメントと同時に江戸文化の訴求も強めている。

杉本氏は、銀座を2号店の場所に選んだ理由について、「現在も日本を代表する街として、伝統と先進性、格式と遊び心が共存しており、 『江戸の心』を現代に伝えるのにふさわしい舞台」と説明する。

ショーのプログラムにも工夫を凝らした。日本の美意識である「心(精神)」「技(技術)」「体(身体)」の調和をベースに構成。心として稽古を演出し、技として相撲のルールを実際の演技を交えながら説明。そして体として力士による取組を披露する。元十両のWAKAやMATSU、元幕下のKIKU、元三段目のYAMATOといった本物の元力士たちが演者を務め、全編英語で相撲の魅力を解説。力士が投げ飛ばされると、会場は大いに盛り上がる。

わかりやすくルール説明する銀座での食事は、会席料理を提供。大阪では幕の内弁当を提供しているが、東京では江戸文化を意識したという。

また、ショーの後半には、抽選で当たった観客が実際に土俵に上がって力士に挑戦できる参加型とし、演者との記念撮影も用意。初心者でも深い理解と満足感を得られる仕掛けを設けた。

土俵に上がって、元力士に挑戦。抽選に当たった観客は大喜びさらに、銀座の施設の館内には灘五郷の銘酒を取り揃えた日本酒バー「灘の酒 THE Bar」を併設。銀座で日本酒という日本文化を広める拠点として、誰でも楽しめるように公演時間外もオープンしている。

杉本氏は「銀座で質の高いショーとともに本格的な和食会席や日本酒を提供するとなると、それなりの高価格帯になるが、初心者でも、相撲を文化として理解していただけるような演出にしている」と自信を示す。

チケットを購入しなくても楽しめる日本酒バー「灘の酒 THE Bar」

大半が欧米豪の個人旅行客、クチコミで「人が人を呼ぶ」

日楽座の来場者は、米国とオーストラリアで全体の約半数を占め、次いでイギリス、フランスなど、当初の狙い通り英語圏の欧米豪エリアが圧倒的なシェアを持つ。

杉本氏は「開業当初は認知不足に苦労した」と明かすが、デジタルマーケティングなどで最適化していくことで流れが変わったという。また、「来場者に満足してもらい、レビューを書いてもらうことで、次のお客さんに繋がるところを一番大事にしている」と話す。

年間の繁忙期は、10月とイースター休暇などを含む3月末から5月にかけてだが、「この時期に訪れた旅行者がポジティブなレビューを書き込み、それを見た次の旅行者が予約するという『人が人を呼ぶ好循環』が、難波・銀座の両店で大きな資産になっている」と話す。

予約のタイミングは、訪日後のタビナカが大半。現在、約6割が自社サイトからの直接予約だという。

最後に演者と記念撮影また、インセンティブ旅行など法人団体の施設貸切の需要への期待も大きい。「キャパシティや定期公演との兼ね合いもあるが、少し先の需要を取り込むことで安定した経営にもつながる」との考えだ。さらに、スタッフや演者がホテルやイベントに出向く「出張公演」も積極的に展開していく考えだ。

海外での認知度向上や国内での地域連携も

日楽座は、2026年2月~3月にかけてオーストラリアのアデレードで開催された芸術祭「アデレード・フリンジ(Adelaide Fringe)」に出展。また、8月にはスコットランドで開催された「エディンバラ・フリンジ(Edinburgh Festival Fringe)」でも、相撲エンターテイメントを披露した。過去にはインドへの出張公演の実績もあり、今後は、海外での独自興行や単独公演の拡大も視野に入れる。

一方、国内では地域との連携を強化していく考えだ。大阪では大阪観光局との連携や1号店が入居する「なんばパークス」との協業を進めていく。銀座でも、周辺の百貨店や老舗企業とのコミュニティ連携を深め、「街の一員」としての信頼関係を構築していく方針だ。

さらに、日楽座の公演は、夕方から夜にかけて行われるため(1日2公演の日もある)、杉本氏は「地域のナイトタイムエコノミーの活性化にも貢献できるのでは」と期待する。

相撲に代わるコンテンツも視野に

ショーへの客が盛況の一方で、「この業態はリピーターがなかなか期待できないビジネス」と杉本氏。だからこそ、「1回限りの体験でどれだけ100%以上の満足を提供できるかにすべてが懸かっている。英語をはじめ複数言語に対応できるスタッフの対話力や、レビューから吸い上げた課題の改善を日々積み重ねている」と強調する。

今後については、阪神コンテンツリンクのインバウンド事業として、「相撲エンターテイメントの3店舗目を出すべきか、あるいは相撲に代わる新たな伝統文化のコンテンツを探すのか、日々考えている」と明かす。

いずれにせよ、「訪日旅行者に喜んでもらえるものがあるなら、そこにチャレンジしていきたいと思う」と意欲を示した。