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イタリア政府、オーバーツーリズム再発防止に向けて本腰、ベネチアへの大型クルーズ船の入港禁止を発効

写真:AP通信

イタリア政府は、ベネチアの水路を「国定記念物」に指定し、干潟(ラグーン)内への大型クルーズ船の入港禁止を決めた。ダリオ・フランチェスキーニ文化相が、2021年7月13日の閣議でこの禁止措置が緊急採択され、8月1日に発効することを明らかにした。

対象となる地域は、聖マルコ広場近くのラグーン盆地とヴェネツィアの主要な海洋路であるジュデッカ運河。また、排水量2万5000トン以上、船長180メートルを超えるクルーズ船が対象となる。

「ベネチアとその潟」は1987年にユネスコ世界遺産に登録されたが、オーバーツーリズムなどによる環境の悪化や大規模なインフラ整備から危機遺産への登録が勧告され、リストへの登録について今月末の世界遺産委員会で議論される予定になっている。

ベネチア市にとって、クルーズは主要な収入源であるため、ここ何十年にも渡って、環境保護と経済効果の両面で議論が行われてきた。パンデミック発生後、海外からの大型クルーズの寄港は途絶えていたが、6月初旬には、ジュデッカ運河に9万2000トンのクルーズ船が入港。今後、本格的にクルーズ市場が再開していくなかで、パンデミック以前の状態に戻ることが懸念されている。

今回の内閣令では、クルーズ会社などへの補償として、ベネチア中心部の外の海域に適切なドッキングサイトが整備されるまで、アドリア海北西部にあるマルゲーラの工業港の近くに少なくとも4つの暫定ドッキングサイトを造成することを認めている。

この動きに対して、ユネスコ事務局長のオードリー・アズレイ氏は自身のツイッターで「非常に良いニュースであり、このユニークな遺産の保護に大きく貢献する重要な一歩である」と歓迎の姿勢を見せている。