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墨田区観光協会が回遊観光の促進へ新たな挑戦、映像技術とガイドのチカラで魅力を可視化できた取り組みを聞いてきた(PR)

墨田区観光協会が、スマートフォンによる観光ガイドサービスの提供を開始した。有料多チャンネル放送「スカパー!」が運営する観光ガイド映像配信サービス「てくてくツアーガイドさん」を活用するもの。ウィズコロナ、アフターコロナを見据え、回遊観光の促進を強化する。

域内での回遊促進は多くの地域が注力するところだが、なぜ墨田区観光協会はその手段の1つとして「てくてくツアーガイドさん」を選んだのか。そこには、多くの地域に共通する課題への対応があった。

東京スカイツリー開業後に回遊観光を強化

「てくてくツアーガイドさん」は、有料多チャンネル放送「スカパー!」を運営するスカパーJSATが、新規事業開発の一環として開始した観光支援事業のひとつ。自治体やDMO向けに観光PR映像の制作と配信をセットで提供するプラットフォームだ。消費者にはスマートフォンで使える無料のガイドツアーサービスを提供。消費者は現地を歩きながらガイドツアーの映像コンテンツを視聴し、観光ガイド機能を受けることもできるし、自宅などの遠隔地からバーチャルでツアーを楽しむことができる。


墨田区は2012年の東京スカイツリーの開業で、観光地としての注目が高まった。しかし、もともとは物づくりの街であり、職人の街。隅田川を挟んだ対岸の浅草が観光で盛り上がる姿を見ながらも、区として観光に取り組むまでには時差があった。墨田区観光協会・理事長の森山育子氏は「東京スカイツリーに観光客が訪れても、大半がそのまま帰ってしまう。私たちが望むのは、スカイツリーに来た観光客に向島や両国など区内の他の地域を訪れてもらうこと。これまでも回遊促進に取り組み、成果も出ているが、全面解決には至っていない」と現状を説明する。


そこで同協会が力を入れてきたのが、まち歩き。区内には「忠臣蔵」ゆかりのスポットや、時代小説でテレビドラマとしても人気を博した「鬼平犯科帳」の舞台となった場所などが点在している。以前から、歴史や文学のコアなファンに親しまれていた墨田区の観光コンテンツだ。

墨田区は有望コンテンツとして育ち始めたまち歩きの魅力を、コロナ禍中も継続的にアピールする方法を検討した結果、まち歩きを映像化してオンラインツアーとして提供していくことに決めた。外出しなくとも自宅に居ながらにして墨田区のまち歩きをバーチャルに楽しんでもらい、アフターコロナのリアルなまち歩き需要につなげようというわけだ。

有形の観光素材がほぼないコースを映像化

ただしオンラインツアー化には大きな問題があった。墨田区にはまち歩きのテーマになり得る魅力的なストーリーは豊富にあるものの、歴史を物語る建築物やストーリーを象徴する遺産が、目に見える形で残っていないのが弱点だった。墨田区を含む東京都心部は、関東大震災や第2次世界大戦中の東京大空襲によって約7割が焼失した上、近代化も影響し、有形の観光素材に乏しいという特徴がある。

これまで、それを補ってきたのが墨田区の優秀な観光ガイドたちだった。

視覚化できる観光素材がほぼ残っていないにもかかわらず、リアルのまち歩きでは優秀な観光ガイドが対面で説明しながら一緒に歩くことで、参加者はガイドの絶妙な語り口や参加者に合わせたアドリブ対応の力によって、まち歩きを体験として楽しむことができていた。とはいえ、それをオンラインに置き換えるのは至難の業だ。無形のストーリーを映像で再現するためには、ストーリーに応じて最適な魅せ方を考案する企画力と、それを実際の映像に落とし込む映像制作技術という高度な専門性が求められ、難易度はかなり高い。そこで同協会が目を付けたのが、「てくてくツアーガイドさん」を運営するスカパーJSATだった。長年の放送事業で鍛えたスカパーJSATの映像制作技術や、番組制作を通じて蓄積された企画力に期待したわけだ。

まちをオンラインツアーのコンテンツ化するに当たって墨田区観光協会が選んだコースは、「忠臣蔵 赤穂浪士~吉良邸より引揚げルートを歩く」。墨田区両国にある吉良邸跡から港区泉岳寺へ、本懐を遂げた四十七士が主君の墓前に報告するために歩いた道程をたどる内容だ。

テーマは忠臣蔵、四十七士の引揚げルート

今回、映像制作のプロデューサーを務めたスカパー・ブロードキャスティングの平田隆蔵氏は、「視覚化できる素材の少なさは、本コースを映像コンテンツにする上でネックだった。特に築地本願寺から泉岳寺までの他区の部分は何もない。ここをどう情緒的に見せるかに苦心した」と、スカパー!の番組や企業のプロモーション映像をはじめ幾多の題材で映像を制作してきたプロを悩ませるほど。


平田氏は何回も下見をして、300年以上前に志士が歩いたルートをどう情緒的に見せるかを念頭に、カメラマンと撮影ポイントを入念に打ち合わせすることから開始。資料を兼ねて浮世絵の画像を挿入したり、BGMの効果を工夫したり、アイデアを凝らした。こうして完成したガイドツアーを視聴すると、現代の日常の風景がたちまち忠臣蔵の舞台に感じられる。

人を楽しませる番組制作のプロと観光ガイドが融合する効果

平田氏は、完成したコンテンツの面白さについて「ガイドさんのタレントによるところが多い」と、ナレーションを担当した「すみだ観光ガイドの会」の人気ガイド・松嵜せつ子さんの存在が、奥行きを持たせたと話す。ガイド歴15年で、常に「時代背景が少しでも感じ取ってもらえるようにと心掛けている」という松嵜さんの語り口は、視聴者の心にすっと沁み入り、コンテンツの臨場感と説得力を増している。

もちろん松嵜さんにとっても、収録でのガイドはまち歩きツアーとは勝手が違い「難しかった」と話す。通常のツアーでは、「お客様との会話を大切にし、お客様の地元の自慢話や名物等を尋ねて対話のきっかけにし、ツアーを楽しんでいるかを確認しながらガイドをしている」というように、お客様と現地の間を取り持つようなガイドを心掛けているからだ。

一方で松嵜さんは今回のコンテンツ作りを体験し、ガイドとして新たな発見もあったようだ。「お客様の顔が見えないからこそお客様の想像力を掻き立てようとする説明ができるし、お客様は好きなタイミングで動画を止めてイメージできる。お客様のペースでまちの楽しみ方を見つけるきっかけになるかも知れない」と話す。

平田氏は「今回はわれわれの映像と松嵜さんのガイドの力量が相互作用することで優れたコンテンツが完成した」と評価する。スカパーJSATの企画力や映像技術と優秀なガイドの存在が一体となって、「赤穂浪士の引揚げルート」が再現されたわけだ。

ただし、地域によってはカリスマ的なガイドがいないケースもある。そういう場合でも、「旅番組系の映像コンテンツは、ガイドの案内を軸に据える以外にも手法がある」(平田氏)と話す。たとえばタレントを起用して観光素材を身近に感じさせ、魅力を際立たせるのも1つの方法だ。地域の実情にあわせ「見せ方次第で魅力的なコンテンツが制作できる」と話し、番組制作で培った工夫やアイデアで地域の魅力を打ち出すサポートをすることを強調した。

まち歩き倍増のため「てくてくツアーガイドさん」の利用も拡大へ

墨田区観光協会は今回制作した映像を活用して2022年2月にオンラインツアーを開催、2022年3月より「てくてくツアーガイドさん」でも配信を開始した。コンテンツ化した「忠臣蔵引揚げルート」について、「正直なところ、想像以上の出来上がりに驚いた」(森山氏)と大満足。もともと放送業界出身の森山氏は映像制作の難しさを理解しているからこそ、「単なるシティプロモーション映像とも違うストーリーが求められる。でもドラマとも違う。その中間的なコンテンツを作るのは本当に難しい。そこはスカパーJSATの技量に助けられている」と喜ぶ。「忠臣蔵引揚げルート」のように映像化が難しいと思われる題材を見応えあるコンテンツに仕上げられたのは、放送事業や番組作りで培ってきたスカパーJSATの映像制作技術と専門人材の力なのだ。


また森山氏は「地域に史実を物語る建築等が残っていないのは東京中心部に共通する悩みで、観光振興の足かせになっている。しかし今回のように番組作りのノウハウを生かせば、映像の力を借りて街の魅力を発掘し発信できることが分かり、心強く感じている」と今後に希望を見出している。

墨田観光協会では今後、町工場巡りや昭和レトロな建築・路地巡りなどのツアー造成を観光ガイドと共に模索している。リアルのツアーが実現すれば新たに「てくてくツアーガイドさん」で映像コンテンツ化することも検討する考えだ。様々な事情でリアルのツアー参加は難しい方々に向けたユニバーサルツアー的な対応としても期待する。

一方、スカパーJSATでは今後も自治体やDMOとの連携を強化し、幅広いエリアでコンテンツの拡充を目指す。ウェブプロモーションを中心に「てくてくツアーガイドさん」の認知向上を図りながら、自治体・DMOとのコラボレーションを進めていく方針だ。

広告:スカパーJSAT

協力:一般社団法人墨田区観光協会

記事:トラベルボイス企画部、REGION