
ハワイ州では、2026年1月1日から宿泊税が0.75%引き上げるられる見通しだ。これにより、宿泊料金に対する税金は、現在の10.25%から11%に増加。さらに、ハワイ各郡は、それぞれ3%の追加税を課しているほか、客室を含む物品・サービスに対しても合計4.712%の一般物品税を課していることから、1泊あたりの税率は約19%に上昇することになる。
現地時間5月2日に上下両院で採決が予定されている法案(当初は4月30日に予定されていたが変更)の可決は、ほぼ確実視されており、ジョシュ・グリーン州知事も法案に署名する方針を明らかにしている。
新たな歳入は、地球温暖化対策プログラムに充当される。侵食が進む海岸での砂の補充、住宅の屋根に設置されるハリケーン対策への支援、マウイ島の大規模火災の原因の一つとなった雑草の除去などに充てられる見込み。
グリーン知事によると、宿泊税を環境保護対策に充当するのは米国では初めての試み。世界的なホスピタリティコンサルティング会社HVSの2024年のレポートによると、州と地方自治体の宿泊税の累計税率がハワイ州より高い米国の大都市は、ネブラスカ州オマハ(20.5%)とシンシナティ(19.3%)のみ。
増収も環境対策資金は不足
ハワイ州当局によると、この増税によって新たに年間1億ドル(約143億円)の税収を見込めるという。1億ドルの大部分は1~2年で対応可能な対策に充てられ、1000万ドル~1500万ドル(約14.3億円~約21.5億円)は長期的なインフラプロジェクトを支援する債券発行に充当される見通し。
環境支援団体Care for Aina Nowは、ハワイの自然保護に必要な資金は5億6100万ドル(約802億円)不足していると試算。グリーン知事も、増税による歳入がこの不足額に満たないことを認めている。
この税率アップに、ハワイ州のホテル業界は複雑な思いを抱いている。ハワイ・ホテル・アライアンス会長のジェリー・ギブソン氏は、当初提案されていた案よりも増税が小幅になったことを喜びつつも、「観光業界で『さあ、税金をもっと上げよう』と言う人はいない。誰もそんな状況を望んでいない。しかし同時に、ハワイ州は環境保護の資金を必要としているのは確かだ」と話し、税収が環境改善につながれば、その増税の価値は十分にあると理解を示す。
観光客も環境保護の当事者に
ハワイ州では長年、サンゴ礁を保護するための外来植物の除去、観光客によるハワイアンモンクアザラシなどの野生生物への迷惑行為の防止まで、島々の環境保全に必要な資金を調達するのに苦労してきた。また、ハイキングを楽しむ観光客が増えているため、多くの遊歩道網の維持管理も課題となっている。
知事の気候諮問チームメンバーであるカウィカ・ライリー氏は、今回の増税について、ハワイの諺「一日だけの見知らぬ人(A stranger only for a day)」を例に挙げた。訪問者は初日の滞在を終えた後は、その土地の仕事を手伝うべきだという意味だ。
ライリー氏は「文字通り観光客は、ハワイに来てすぐにハワイのために働かなければならないと言っているわけではない。我々が言いたいのは、観光客にも解決策の一部になってほしいということ。愛するものを大切にすることが重要だ」と強調した。
※ドル円換算は1ドル143円でトラベルボイス編集部が算出
※本記事は、AP通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。